最終話.宰相夫妻の愉快な日々
途中で視点替わります。
(ケイジュ視点です)
アイリスと結婚して数年後、仕事を終えて帰宅する。
「お帰りなさい」
いつも通りアイリスと使用人達が出迎えてくる。
「ただいま」
言いながら頬にキスをすると、すかさず拳が飛んできたのでサッと避ける。
「チッ」
舌打ちが聞こえて来た。アイリスのツンは今日も健在だ。
恒例のやり取りに当初は戸惑っていた使用人達も、今では微笑ましい顔で見守ってくる。
日常のささやかなやり取りに、幸せを感じる…たとえ先ほどからアイリスが、後ろ足を蹴り続けてきても。
「体の調子はどうだ?」
「順調よ。お医者様が問題ないって言ってた」
居間に移動しながら、会話をする。
「そうか。出産の時は、休みを貰えるようにしておくよ」
「そうして頂戴」
「今夜のメニューは何かな?」
「あ、それが…」
言いながら扉を開けると…
「おかえり~~」
フリルのエプロンをつけたオタクがいた。
慌てて扉を閉める。
「おいコラ!何で閉めるんだよ!?不敬罪だぞ!」
扉を開けようとするオタクに、慌てて扉を押さえる。
「何で屋敷にいるんですか!?しかもピンクのフリルなんて…公害ですよ!!」
「何だと!?いつも仕事で疲れているお前をいたわってやりたいと、アイリスに相談を受けたんだ!だから手料理でいたわってやろうと、頑張って作ったんじゃないか!さぁ大人しくこの扉を開けて、愛妻の手料理を味わうがいい!」
「いたわってるんじゃなくて、いたぶってるんでしょう!大体俺の愛妻はアイリスで、貴方じゃないです!」
「そんな事はわかっとる!だからアイリスが作った気分になれるよう、アイリスのエプロンを借りたんじゃないか!ハッ貴様、身重のアイリスに料理を作らせる気か!」
「そんなわけないでしょう、アイリスは俺の大事な妻です!だからと言って貴方の手料理を食べる必要はない!!」
「何だと貴様!儂のせっかくの手料理を!!」
「いいから早く帰って下さい!せっかくお腹の子に障るからと城から屋敷に移ったのに、貴方か来たんじゃ胎教に良くないです!」
「何だと!一度承諾した癖に反故にする気か!?勝者の権利だぞ!!」
「承諾したのは城に住む事で、屋敷まで押しかけられる事じゃない!!」
ギャーギャーと騒ぎ続ける2人を眺める。
幼少の頃には考えもしなかった光景だ。
ずっと密偵として育てられ、このまま密偵として1人死んでいくのだと思ってた。
だが今は家族が出来て、日々周りからの愛情を感じながら、毎日騒がしくもどこか暖かい日々を送っている。
「貴方は生まれてきたら、どんな子になってどういう人生を送るのかしらね」
願わくば家族に囲まれ愛される人生であればいいと思う―――心配無用かもしれないが。
お腹の子に向かって呼びかけながら、そっとお腹を撫でた。
ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました<(_ _)>




