21.元密偵は激怒する
空き地の前でしばらく呆然としていたが、やがて状況を把握するにつれて怒りが湧いてきた。
入院中誰からもこんな事は聞いていない。
明らかに誰かに口止めされている。
そこまで考えれば、犯人は1人だ。
「あの野郎―――!!!!」
私は荷物を抱えながらも、王宮に向かった。
王宮にたどり着くと、迷わず謁見の間に向かう。
突撃するとそこには待っていたかのように(実際待っていたのだろう)、オタク王と宰相親子がいた。
「死ね―――!!」
私はありったけのナイフを、元凶に向けて投げつけた。
「うわぁぁっ!!」
元凶のオタク王は慌ててしゃがみこみ回避するが、構わず続けざまにナイフを投げつける。
「待てアイリス、落ち着け」
「死ね」
「イヤだから」
「死ね」
「ちょっと待て、話を…」
「死ね」
会話をしながらもナイフを投げつける。
相手もさるもので、紙一重で避けまくる。
「チッ!」
キリがないと舌打ちすると、一気に距離を詰めて殴りかかった。
「あ、アイリス待てってば。これには事情が…」
「何が事情だ!アンタが元凶でしょう!組織が解散した事知らない筈ないし、ケイジュに口止めできるのはアンタくらいでしょう!!」
ケイジュもこの男も、知っている筈なのに私に伝えなかった…どちらかが口止めしているという事だ。そしてこの男がケイジュに口止めすることはできても、逆は出来ない。間違いなく犯人はコイツだ。
「いやだから、これには事情があるんだ。話を…」
「死んだら聞くわ」
「いや死んだら聞けないだろう」
そんなツッコミがどこからか聞こえてきたが、無視した
数時間後、原形をとどめないほどボコボコ顔になったオタク王がいた。
「はぁはぁ…」
「ふぁ、ふぁいりふ。おふぃふいふぁふぁ?(あ、アイリス。落ち着いたか?)」
疲れて息を切らす私に、オタク王が話しかける。
「まだ怒りが収まらないけど、とりあえずはいいわ。話次第ではまた後で殴ればいいし」
「ふぃ~~~~~!!(ひぃ~~~~~!!)
私の言葉にオタク王が悲鳴(多分)を上げて震え上がる。
「ほらサッサと話してよ、あんまり遅いとまた殴るわよ」
「ふぁ、ふぁはっは(わ、わかった)」
早いところ今夜の宿と、今後の仕事を探したいのでせかすと、オタク王がチラリとケイジュを見た。
するとケイジュが手に何かを持ったまま、こちらにやって来た。
私の前で片膝をつくと、私の左手を取ってそっと指輪をはめる。
何かと思えば、以前約束してたスノークリスタルだった。
(そう言えば加工してくれるって約束だったわね…これを売って生活費の足しにしようかしら)
そんな事をつらつらと考えてると、とんでもない事を言われた。
「アイリス、結婚してくれ」
「……………………はぁ!?」
元密偵は青天の霹靂中です。
~裏話・アイリスが城に乗りこんだ日の夜~
オタク王「それにしても2人とも酷いじゃないか、アイリスを止めてくれないなんて~~イタタ」
腫れは引いたものの、口を動かすと傷に響くのか痛がる王。そんな王に2人が冷静にツッコむ。
宰相「止めてもムダだと思ったので」
ケイジュ「気が済むまで殴らせないと、収まらないと思ったので」
オタク王「そ、そうか?それなら仕方ないか…」
宰相親子「「まぁ1番の理由は、いい気味(自業自得)だとおもったからですが!!」」
オタク王「止めろよ!!!!」




