閑話㉖.元王女の末路
元王女視点です。残酷な表現あるので、不快な方は引き返して下さい<(_ _)>
「寄るな化け物!」
「気持ち悪い!」
「虫女!!」
今日も日課となったゴミ漁りをしようとしたら、運悪く通行人に姿を見られた。
初対面で何もしていないというのに、皆顔を顰めて私を罵る…中には嘲笑しながら、石を投げてくる者もいた。
(どうして私が、こんな目に合わなきゃいけないの)
傷だらけになった体を引きずりながら、必死に建物の陰に隠れる。そうすると連中もしつこく追ってこない。
何とか隠れると予想通り、誰も追ってこなかった。
「ふぅ」
一息つくと胸に浮かんできたのは、後悔と怒りだった。
王女には悪いことをしたと思う。自分がこうなって初めて、他人に暴力を振るわれる苦痛を知った…あの頃軽い気持ちで(殴るのが楽しかったのもある)王女に暴力をふるったが、今は反省している。
だが、あの護衛女は許さない。
あの女が証拠など見つけてこなければ、私のした事が露見する事もなく、今頃は王家に養子に入って王女として不自由なく暮らせた筈なのに、あの女が台無しにしたのだ。
「やっぱり私には、ヒモト国があってるって事ね」
犯罪行為で人の秘密を暴いてを破滅させる女も、そんな行いを認めるようなイカレた国も、まともな常識と神経を持った私には、元より合わなかったのだ。
ロクに食べるものもなく、すっかり落ちぶれた私だが、希望は捨てていなかった。
少し休んだ後、今日の稼ぎに出かけた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
身なりの良い通行人を狙って、突然建物の陰から目の前に現れる。
そうするとたいていの人間は、驚いて逃げていく…財布や持ち物を落としながら。
今日は財布だった。
戻ってこない内にその場を離れる。
ねぐらにしている建物の陰で中を確認すると、札束がぎっしり入っていた。
予想外の収穫に、ニンマリと笑う。
「これでヒモト国行きの切符が買える」
今まで貯めた分と合わせれば、十分おつりがくる。
国に帰りさえすれば、こっちのものだ。
あとは姉が視察で街に出てる時を狙って、大声で助けを求めればいい。
ある事ない事言って周囲の同情を買えば、体裁の為姉も折れざるを得ないだろう…その時に姉に命を狙われるという事をそれとなく触れ回れば、城に戻った後も私を殺すことが出来ないだろう。
また王族に返り咲ける…そんな事を考えてほくそ笑んでいた私は、背後から近づく影に気づかなかった…。
気が付くと私はどこかの小屋の中に、縛られて転がされていた。
「あれ…?」
周りを見渡すが、ずいぶん前に廃墟になった小屋らしく、人の気配どころか、物すら置かれていなかった。
「何で私こんなところに…?」
覚えているのは、背後からいきなり殴られた事だけだ。
そう考えていると扉が開いて、人が入って来た。
「あら、気がついたのね」
「お姉様!」
入って来たのは、姉とその護衛達だった。
「さてはアンタね、私を殴ってこんなところに連れて来たのは!早くほどきなさいよ!あと慰謝料として私をヒモト国に戻して、王女として扱いなさいよ!」
(ちょっと早まったけど、ここで騒いで人目を引けば、姉も要求を呑まざるを得ないだろう)
しかし姉は返事をせず、嫌そうに顔を顰めるだけだった。
「あら嫌だ。これだけの目に合ってまだ反省していないなんて、本当に害虫並みの根性ね」
侮蔑の言葉にカッとなる。
「早くしないと国に戻った時、酷い目に合わせるわよ!!」
すると姉も護衛達も、おかしそうに笑いだした。
「ふっ…くくくく」
「何がおかしいのよ!」
激高する私に、姉が笑いを止めて言った。
「だって貴方、国に戻る気でいるんですもの…これが笑わずにいられる?生きて戻れると…私が貴方を生かして見逃すと本気で思ってるんですもの」
「え」
姉の言葉に、思考も何もかも一切の動きが止まる。
「何の為にわざわざ気絶させて、動けないよう縛り上げて、人里離れた空き家に連れて来たと思ってるの?」
不思議そうに姉が小首を傾げる。
けれど私は恐怖で、言葉を返せなかった。
そこに姉が、今日1番の笑顔で言った。
「害虫はしぶといしね…ちゃんと死ぬところを見ないと、安心できないわ。貴方はこれから火事にあって死ぬのよ」
そう言って姉が背後の護衛達をチラリと見ると、護衛達は頷いて小屋中に油を撒き始めた。
「待ってお姉様やめて!たった1人の実の妹でしょう!?」
私の必死の言葉に姉が笑顔で答える。
「そうね妹。姉を見下して奴隷のように扱う妹。人に寄生して甘い汁を吸う妹。周囲の人間を不幸にするだけの害虫のような妹。お似合いの姿になって良かったわね」
それだけ言うと姉はもう見向きもせず、護衛の騎士達を連れて出て行った。
すぐに小屋から煙が充満してきた。
意識を失う寸前まで必死で姉を呼び続けたが、姉も誰も助けに来ることなく、私は暑さと苦しみの中で息絶えた。




