20.密偵見習いは〇〇になる⑤
次に目覚めたのは、翌日だった。
「はぁ~~」
(気が重い…そして退屈だ)
退院したら『オタクの娘』として、見られるのだろう。
想像して頭を抱える。
「嫌だ~~、一生外に出たくない」
「何馬鹿な事言ってるんですか」
突然の声に顔を上げると、王女とレナさんが入って来た。
「お見舞いに来たわ、お姉様」
「お久しぶりです」
「あ、どうも…。王女、『お姉様』は、止めて下さい」
来客に驚きつつも伝えると、王女が不満そうに言う。
「だってアイリスは私の姉なんでしょう?だったら『お姉様』じゃない」
「でも嫌なんです、止めて下さい」
「アイリスが嫌でも私が言いたいわ~。私今度の事で悟ったの、周りに気を遣って我慢をするのは良くない、言いたい事はハッキリ言うべきだって」
王女が握りこぶしで力説する。
私は頭を抱えた。
「余計な事言うんじゃなかった~~」
落ちこむ私に、レナさんが助け舟を出してくれた。
「王女様、アイリスさんは恥ずかしがり屋なんです。その気になるまで見守りましょう」
「分かったわ~~」
とりあえず不毛な言い合いが止んだのはありがたいが、ホッとしていいのか墓穴を掘ったと落ちこむべきか、微妙な気分になった。
そんな微妙な気分を払拭する為、前から気になっていた事を聞いてみた。
「そういえばレナさんのポケットって、どうなってるんですか?」
私の疑問にレナさんが、カップを傾けながらチラリとこちらを見る。
「メイドの秘密です」
「私も気になってたの~。良ければ教えて?」
王女が会話に割り込んでくる。
するとレナさんの態度が軟化した。
「仕方がないですね。『一度きり、他言無用』を、守れるなら教えましょう」
私と王女は、口を裂かれても必ず守ると誓った。
「じゃあよく見て下さい」
レナさんの許可の元、2人で問題のポケットを覗きこむ。
「あ、ポケットの中のスカート部分に切れ目が!」
「しかも切れ目の中は…隠しポケット!?しかも大きい」
これは予想外だった。
私達の驚きをよそに、レナさんは平然と答える。
「ご覧の通り隠しポケットです。スカートは黒で目立たないし、傍目には表のポケットから出したように見える筈です」
私と王女は気が済むまで、ポケットをペタペタと触りまくった。
その後も生徒会メンバーが入れ代わり立ち代わりで、見舞いにやって来て退屈する暇も無くなった。
そしてついに退院の時がやって来た。




