20.密偵見習いは〇〇になる②
ブックマーク減っちゃった( ノД`)シクシク…
虫、残酷な表現ありますので、不快な方は引き返して下さい。
~宰相視点です~
謁見の間で国王やケイジュ達と共にアイリス様を待っていると、アイリス様があの女に刺されたという知らせが、飛びこんできた。
「「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
いち早く飛び出したのは、ケイジュだった。
その後に私達も続く。
私も日頃から鍛えているつもりだが、ケイジュに追いつけない。見失わないようにするのが精一杯だった…歳の差もあるとはいえ、もう少し運動量を増やすべきか?
そんなのんきな事を考えていられたのは、現場にたどり着くまでだった。
状況は思った以上に悪かった。
アイリス様は運悪く急所を襲われたらしく、意識はなく出血も酷い。国王とケイジュが慌てて駆け寄り「アイリス!」「アイリスしっかりしろ!」と必死に声をかけている。
そこに元凶の女が取り押さえられながらも「この女が勝手に家探しするから悪いのよ、天罰よ!」と叫ぶ。
そこにヒモト国の王女一行も駆けつけた。
彼女達もこの事態は想定外だったのか、顔色が悪い。
女は王女を見ると、ニヤリと笑った。
「あ~ら残念ねぇお姉様。私知ってるのよ、この国の法律で死刑はないんでしょ?これでもう私を連れ帰って、コッソリ始末することはできないわね」
(なるほど。連れ帰られて秘密裏に処刑されるよりは、この国で罪人として、生きながらえた方がいいという事か…バカだな。確かに死刑はないが…)
そこまで考えて隣に立っていた国王が、動くのに気づいた。
国王は無言で喚く元王女の前に立った。
「………」
「な、何よ」
国王は普段の感情の起伏が激しい様子と違い、瞬きすらせず無表情で元王女を見下ろしていた。
あまりの迫力に誰も口を開くどころか、身じろぎすらできず緊張感に包まれた。
私は恐怖と共に、かつて一度あのような状態になった国王を思い出した。
学生時代、国王は犬好きだったが城で飼う事を許されず、こっそり学園に住み着いたノラ犬を可愛がっていた。こっそりエサをやったり、放課後は一緒に遊んだりしていた。
「私が国王になったら、すぐ城に引き取ってやるから待っていろよ~」とまで言っていた。
ちなみにそれまでは「それまではコイツ(私)に面倒見てもらうからな~、いい子にしてろよ~」と、勝手に決めて迷惑だった。
ある日いつものように2人で放課後犬の元へ行くと、犬は首と後足を斬られた姿で横たわっていた。
あとでわかった事だが、学園でも評判の素行の悪い男子生徒3人が、遊びでやったらしい。
国王は何も言わず黙って犬を埋葬した。そして墓の前で一言「許さない」とだけ、呟いた。
件の3人はそれから一か月以内に、犬にしたのと同じ姿で発見された。
犯人は今も見つからずじまいである。
「ちょっと、何なのよクソジジイ!ジッと見てないで、言いたい事があるなら言いなさいよ!」
元王女は空気を読んでいるのかいないのか、迫力に押されつつも国王に食って掛かる。
その時国王が口を開いた。
「…せ」
「はい?」
小声過ぎてよく聞こえなかったので聞き返すと、今度は周囲にもはっきりと聞こえた。
「この女の顔に焼き印の刑を執行しろ、虫の方だ」
「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
その言葉に、周りはそれまでの緊張も忘れて騒然とする。
隣にいる相手と興奮した様子で、言葉を交わし合っている・
「な、何?何の話よ?」
元王女もさすがに不安になったのか、周囲を見回すが誰も答えない。
我が国には死刑はないが、代わりの最高刑はある。
それが「焼き印の刑」だ。
言葉通り罪人に焼き印を押して、放逐する刑だ。
死刑より楽な刑に思えるが、実はそうではない。
この焼き印はネズミ型と虫型(夏の厨房に出没するアレである)の2種類あり、「そこにいるだけで周囲に害悪を振りまく奴」という意味がある。
通常罪人になったとしても、娼館や犯罪組織に拾われてまっとうな最期を迎えられないが、とりあえず食べていくくらいはできる。
だが焼き印を押された者はそういった者達ですら、嫌悪して近づかない…娼館にしろ組織にしろ集団で活動する以上、いるだけで周囲に害悪をもたらす者など迷惑なだけだ。
またこの焼き印が良くできていて、近くでよく見ない限り虫やネズミが体に集っているように見える。
当然誰もが悲鳴を上げて逃げ出したり、罪人を殴り飛ばして罵る。
隠して働こうとしても大概は顔など目立つ部分に押される為、不審に思われて追い払われるか、無理やり暴かれて追い出されるかだ。
結果として焼き印の生き物のように、物乞いやゴミを漁りながら緩やかに飢え死にするのを待つしかない。
ある意味死刑より酷いと、言われる刑である。
「お待ち下さい陛下」
そこにケイジュが声をかける。
「止める気か?」
陛下が抑揚のない声で、返事をする。
顔も無表情のままだ。
そんな陛下に対して、ケイジュはいつものように話す。
「顔に押すぐらいでは隠せてしまうし、あまり意味はないでしょう?王女様を傷つけ、王国の乗っ取りを企て、殺人未遂まで犯したのですから、やはりここは全身焼き印が妥当でしょう」
(ケイジュ~~~~!!止めてくれるんじゃなかったのか!?)
心の中で叫ぶ。
「そうだな、そうしよう」
ケイジュの提案に、王が頷く。
チラッと姉王女を見ると、扇で口元を隠したままニッコリと微笑んだ。
(もう止める手立てはない、か)
諦めてため息をつくと、元王女が「勝手に決めるんじゃないわよ!何も悪いことしてないのに酷い!」と、喚くので兵士に命じて、殴って気絶したところを連れて行かせた。
翌日刑を執行した後、二度と王都に戻ってこれないよう、国境ギリギリに放り出した。




