19.留学生は断罪される(後)
「そもそも私は虐めてなんかいないもの。ケンカのせいで勘違いさせてしまったみたいだけど、王女が否定すれば収まるでしょう?…ねぇ王女、私虐めてなんかいないわよね?」
口元を扇で隠しながら、王女を睨みつける。
王女は震えて一歩下がる。私は扇の下でにんまりと笑った。
が、隣にいた男子生徒が、無言で王女を支えて視線を交わし合う。
すると王女は私の視線を真っ向から受けながら、前に進み出て大声で言った。
「私は彼女にずっと虐められてました。親しい人達から引き離されて、物を奪われたり奴隷のように扱われたり…。正直ずっとつらかったです。でもこのままじゃダメだと思いました。私は貴方を告発します!」
真剣な王女の叫びに、周囲の人間も私に疑いの目を向けて来た。
「まさか…」
「でもあんなに真剣に王女が告発してるし、やっぱり本当なんじゃ…」
疑われているが、決定的な証拠もない。
膠着状態に終止符を打ったのは、会長だった。
「あいにく証拠は他にもあるよ、アイリス」
「はい。こちらの調査によると、王女と留学生は良く二人で買い物に行ってましたが、支払いは毎回王女だったそうです。パーティでも、王女のアクセサリーを留学生が身に着けているという証言が、いくつもあります。さらに留学生と王女の部屋を調べたところ、王女の部屋の物が、ほとんど留学生の部屋にありました」
「な!勝手に人の部屋に入りこんだの!?不法侵入よ。そんなので見つけた証拠なんて、無効だわ!」
慌ててうやむやにしようとしたが、ダメだった。
「あいにく犯罪捜査の為の調査は、不法侵入には当たらないよ…それに君の罪はそれだけじゃないだろう」
「何の事よ」
内心ギクリとしながら、平静を装う。
「君、身分詐称したね。反逆罪でとっくに身分剥奪されているのに、王女を騙って客人として王宮に留まっていたね…これは詐欺罪に該当する。あぁ言い訳はいいよ。国に問い合わせて、姉君から全部聞いたから」
「何ですって!」
(バレた!)
周囲もざわついている。
どうしよう。
この様子では証拠もつかんでいるんだろう…逃げ場がない。
そこでさらに追い詰める相手が来た。
「全く…お前と来たら、どこへ行っても面倒を起こすしかできないのね」
ウンザリした顔で、国にいる筈の姉が、護衛やメイド達を引き連れて現れた。
「な!何でお姉様がここにいるの!?」
「ショークブツ王国から問い合わせがあったのよ。お前が王女を名乗って客人として王宮に留まり、この国の王女を虐待して奴隷化してるって。慌てて調べさせたら、お父様がひそかに、この国に口利きを頼んだというじゃない。全くどこまでお前に甘いんだか…それにどさくさに紛れて、私の首飾りまで持ち出したというじゃない」
そう言って傍らのメイドに目を向けると、メイドが無言で姉に首飾りを差し出した。
「あ、私の首飾り!」
「お前のじゃないわ、私の物よ。これ以上悪用できないよう、返してもらったわ。」
「酷いわ、人に断りもなく勝手に!」
私の反論を、姉が鼻で嗤う。
「王女時代に、私の物を無断で持ち出した人間の言う台詞じゃないわね…どちらにしろ、もう身に着ける事もないのだから、必要ないでしょう」
「え?」
思いがけない言葉に、動きが止まる。
「お前を野放しにしても、面倒しか起こさない事が良く分かったわ。もう二度と騒ぎを起こせないように、幽閉する事が満場一致で決まったわ」
姉の宣告に、血の気が引く。
姉が私を恨んでいない筈がない。幽閉とは名ばかりで、きっと酷い目にあわされる…いや秘密裏に処刑すらありうる。
「わ、私を幽閉なんて…お父様が許すはずないわ」
最後の希望でお父様の名を出してみる。
姉はニッコリ笑ってとどめをさして来た。
「お父様の事なら心配いらないわ。今回お前の身分詐称に手を貸して、他国に多大な迷惑をかけた責任を取って、譲位する事が決まったわ。良かったわね、これからは2人仲良く暮らせるわよ」
もう返す言葉もなく、崩れ落ちた。
そんな私を護衛の騎士達が、連行していく。
「残念だったわね。お前が愚かな真似をしなければ…せめて、証拠など残さなければよかったのに。全て自業自得で、お前が悪いのよ」
嘲笑する姉の顔を、睨みつける。
言い返そうとしたが、その前に騎士達に猿轡をかまされる。
(私は悪くない!悪いのは、余計な事したあの女よ)
そうだ、あの女が余計な事をしなければ良かったのだ。
姉の向こう、笑顔で生徒会メンバーと笑いあう女を睨み続けた。




