18.留学生は追い詰められる
追放される日、見送りに来たのは父だけだった。
「もう会えないだろうが、隣国で心を入れかえて今度こそまっとうに生きろ」
「フン!」
(身一つで追い出される可哀想な娘に、言う事はそれだけ?どうせなら金目のもの位よこしなさいよ!)
心の中で悪態をついてると、背後から私を押さえつけている兵士2人に地面に引き倒された。
「痛っ!」
「この無礼者め!」
「反逆者の癖に、その態度は何だ!」
「うう…」
痛みをこらえてると、父が近寄ってくる気配がした。
父はため息をつくと、押さえつけている力がなくなった。
顔を上げると、兵士達がいなくなっていた…どうやら人払いしたらしい。
立ち上がると、父が1枚の紙を渡してきた。
「ユーリス、身1つで隣国へ行っても生きていくのは大変だろう…これを使え」
受け取って確認すると、隣国の王へ向けて「娘の面倒を見てほしい」と書かれた書状だった。
「詳しい事情は書いてない。国と王家の恥だしな。少なくともこれで、仕事や最低限の衣食住は世話してくれるだろう」
父の言い方にムカついたが(私が国と王家の恥だなんて、失礼ね!)、先立つものは必要なので貰っておいた。
「あ~ぁ。結局持ち出せたのは、これだけね」
コッソリ服の下から、ネックレスを取り出す。
この前姉から奪ったものだ。
他の物は全て没収されたが、国外追放と身分剥奪の処理で慌ただしかったせいで、これだけ忘れたようだ。
「とりあえず向こうについたら、どこかに売ろうっと」
故郷の島国を離れて数日後、ショークブツ王国についた。
私の国とは別な意味で、活気にあふれた国だった。
王宮に向かうと門番に止められたが、書状を見せるとすぐに王と謁見が叶った。
国王に書状を見せると、客人扱いで王宮に留まることになった。
「思ったより役に立つわね、もう少し持ってよっと」
姉のネックレスを取り出す。
中央の石に王家の紋章が刻まれていた。これを見た国王が書状もあり、私が王族のままだと勘違いしたのだ。
こうして私は、王宮に潜り込めた。
王宮で暮らし始めて数日。
快適に過ごしながらも、目的は忘れていない。
(次の獲物を探さなきゃ)
姉に替わる新しい相手を見つけて、面倒を見させる。
ゆくゆくは姉たちに復讐できる権力者がいい。
目星はすでにつけてある。
先日引き合わされた王女は大人しくて、こちらの言う事を良く聞きそうだ。
「まずは足元を固めないと」
国王に頼みこんで、留学生として学園に通い始めた。
王女と同じ学年だからと、いつも一緒にいるようにした。
最初は真面目に授業を受け、他の生徒達にも笑顔で優しく接した。
結果他の生徒達は私を全面的に信用し、王女も私と一緒にいるのが日常になった。
それからも順調だった。
少しずつ王女を孤立させ、躾をして私に従うようにした。
調教もほとんど完了し、もう少しでこの国での地位を確立し姉達に復讐できるはずだったのに…。
「どうしよう…」
もし持ち去られたとしたら、危険だ。
しかも王女は、ここしばらく体調がすぐれないとどこか遠方で療養中だ。
他の国へ行くか…でも、せっかくここまで順調だったのに、ただの紛失だったら大損だ。
迷った末、少し様子を見ることにした。
万一日記を見られたとしても、惚ければそれで終わりだ。
他国の王族(と思われている)私に、強く追及することはできない。
王女に命じて否定させれば、済む話だ。
気持ちを落ち着かせると、日記の入っていた引き出しを閉めて気持ちを切り替えた。
しかしこの時逃げなかった事を、後悔することになる。
1ヶ月後、私が王女を虐めているという噂が流れ、私は参加した卒業パーティで告発された。




