15.姉妹喧嘩①
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします<(_ _)>
証拠を持って戻ると、皆が退屈そうに待っていた。
「遅かったわね」
待ちくたびれたとばかりに、チューリさんが言う。
「それはすみません」
証拠探しそっちのけで、持ち物チェックをしたのだから仕方ない。素直に謝っておく。
「それでどうだった?」
ケイジュが尋ねてくるが、顔は笑っていた。
わかっているのだろう。
「ケ…会長の予想通りでした。とりあえずこれが証拠です」
言いながら、持ってきた2冊をケイジュに渡す。
「やっぱりね」
予想していた…というより、確信していた感じでケイジュが受け取る。
他の皆はわからないようで、「?」という顔をしていた。
「あのぉ…ケイジュ様、予想していたというのは…」
聞いて良いものかどうか迷いながら好奇心に勝てず、恐る恐るチューリさんが聞いてくる。
「あぁ。あの留学生の事だから、暴力だけじゃなく、王女の持ち物もいくつかは奪ってるんじゃないか、と思ってね」
言いながら、手元の2冊を見る。
「いくつかどころじゃないわ、全部王女の持ち物だったわ」
思い出しても腹が立つ。
するとケイジュがちょっと驚いたように、顔を上げた。
「ちょっと待った、全部だって?」
「えぇそうよ、ドレスもアクセサリーも、化粧品や身の回りの物まで全部王女の物だったわ」
思い出しても、腹が立つ。
1番腹立つのは留学生だが、奪われて何もしない王女にも腹が立つ。
「………」
するとケイジュは先ほどまでの笑顔が嘘のように、黙りこんだ。
「ケイジュ?」
「ケイジュ様?」
「どうしたんですか?」
声をかけると、気づいたかのように顔を上げる。
「あぁごめんね、ちょっと考え事をしてた…アイリス」
「何?」
「本当に王女の物だけだったのか?留学生の物は、何かあったか?」
「ないわ。王女の物以外は寮に備え付けの家具と、壁紙だけよ」
「わかった。僕は用ができたから、ちょっと外れるよ。あとはよろしくね」
そう言ってケイジュは、引き留める間もなく足早に去っていった。
(あっちって、王宮の方向よね…)
オタク王に、報告に言ったのだろうか?いやまさか、ケイジュに限って…
疑問は猪男の声で、霧散した。
「これで後は陛下に報告して、処罰してもらうだけだな」
鼻息荒く、仁王立ちしている。
このままだと、王宮に特攻してオタクにすべて報告しそうだ。
(それはマズイ)
オタク王がこの事態を知ったら、怒り狂って留学生を殺しかねない。そうなったらまた戦争だ。
皆も同じ危機を感じたらしく、口々に宥めにかかる。
「まぁまぁ、落ち着け」
「相手は交流ある国の王女だし、冷静に対処しよう」
「そうだそうだ」
しかし荒ぶるイノシシは、収まらなかった。
「何言ってるんだ!証拠も揃ったし、後はざまぁするだけだろう!」
握り拳で、力説する。
「それよりもまずは証拠が本物か、確かめましょう。いざ証拠としてあげたら、ただの日記だった、では話にならないわ」
とりあえず話を逸らすと、猪男が食いついてきた。
「そうだな、相手は狡猾だ。優秀で用心深い俺が騙されるくらいだから、かなり頭も切れるしな…ここは慎重に行こう」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
猪の寝言はさておき、先ほどの2冊に視線を下ろすと、猪男も手元を覗きこんできた。
そして顔を顰める。
「…『上手な洗脳の仕方~これで貴方も今日から女王様~』だと!?」
猪の発言に、皆も顔を顰める。
しかも著者は、留学生だ…つまりは自分の経験を書いて、広めようというのだ。
「あからさまね」
「これも証拠になりますね」
「何て恐ろしい女だ」
「こんな怖い女、見たことない」
最後の3馬鹿の台詞には、皆が大きく頷いた。




