12.ホラーハウスへようこそ③
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チューリさんの悲鳴を聞いて慌てて駆けつけると、そこには今までのゾンビや幽霊もどきとは比べ物にならない、怖い光景が広がっていた。
部屋は燭台2つだけで薄暗く、何よりも壁という壁、天井にまで不気味な紙人形がぶら下がっていた。
部屋の中央の床には、猪男が座りこんでブツブツ呟きながら、紙人形を作っていた。
「王女様がひと~り、王女様がふた~り…」
「ひぃっ!」
「うわ…」
驚いた。
斬ったり斬られたりの修羅場は慣れているが、こういうホラー系は免疫が無い。
さすがに悲鳴がでた。ケイジュも驚きすぎて、言葉が出ないようだ。
「あ、あ、あ…」
チューリさんは腰が抜けたようで、立てずに部屋の入り口で座りこんでいる。
後から来た他の連中も、絶句していた。
「ちょ、ちょっと猪男!アンタ何やってるのよ!?」
すると猪男がゆっくりとこちらを振り返った。
「何とは…?」
声も抑揚が無く、目も見開いたままだ…かなり怖い。
「いくら王女にフラれたからって、呪ってんじゃないわよ!」
部屋を見回す。
よく見ると紙人形は、顔は潰れてるが髪の色は王女と同じだ。
「失礼な事を言うな、俺が王女様を呪う筈ないだろう…これは王女様を想いながら作ったものだ…」
そう言って顔を手元の人形に戻すと、再び人形を作り始めた。
「王女様がさんに~ん、王女様が…」
いのししおとこはのろいのじゅもんをとなえた!
あいりすはうごけなくなった!
「くっ、ケイジュ様のためよ…ううっ」
しばらく経ってショックから立ち直ったチューリさんが、中に入り目を瞑ったまま、猪男に突撃した…側にいた私もろとも。
「目を覚ましなさ―――い!!!!」
ド―――ン!!
「うわあっ!」
「きゃあっ!」
ちゅーりはとっこうした!
いのししおとこに80のだめーじをあたえた!
あいりすに20のだめーじをあたえた!
あいりすのかなしばりがとけた!
ちゅーりに40のだめーじ!
猪男は部屋の端まで吹っ飛び、私も衝撃でしりもちをついた。
「はぁはぁ…」
突撃したチューリさんは、息を切らしながら仁王立ちして、猪男を怒鳴りつけた。
「王女のピンチにこんなところでウジウジしてて、何になるっていうのよ!王女を想うなら、行動に移しなさい!!」
するとその言葉に反応して、猪男が立ちあがった。
ぐるりとこちらを向く。
「「ひぃっ!」」
チューリさんと2人、悲鳴を上げる。
先ほどと違い腐乱死体の容貌に、目だけが爛々と光っているのだ……怖い。
(ゾンビに見つかって襲われそうになる人間って、きっとこんな気持ちなんだろうな)
現実逃避で、意味もない事をちょっと思った。
「…王女様のピンチとは、どういう事だ…」
「「ぎゃああああああ!!」」
詰め寄ってくる猪男に、限界に達した私とチューリさんは逃げ出した。
入り口で傍観していた、ケイジュを盾にする。
「ケイジュ様、お願いします!浄化して下さい!」
「アンタさっきから見てただけなんだから、何とかしてよ!!」
盾にした私達に苦笑いすると、ケイジュは猪男に向き直った。
猪男は音もなく、ケイジュの目の前まで来ていた。
「会長…?教えて下さい、王女様に何があったんですか…」
「うん実はね…」
ケイジュが事情を説明すると、猪男はみるみる生気を取り戻していった。
「何てことだ!俺が騙されて部屋にこもっている間に、王女様がそんな目にあわされてるだなんて!!」
説明し終えると、猪男は拳を握り締めて憤慨した。
「騙された?」
「あぁ!俺が王女様に遠ざけられたのは『強引に既成事実で迫って本当は嫌がられている、王女を大切に想うなら身を引け』と、あの女に言われたからだ。王女様も否定しなかったから、真に受けてしまった!だが今思えば王女様は顔色も悪く、終始うつむいてばかりだった!あぁ何てことだ、王女様をお守りすべきこの俺が!俺の馬鹿、俺の馬鹿、俺の馬鹿!!!!」
叫ぶなり猪男は、近くの柱に頭をぶつけ続けた。
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
5分後、猪男は気絶した。
「よし、王女様を救出しに行くぞ!」
10分後目が覚めた猪男は、張り切って飛び出していこうとした…が、
ぐぅ~~~っ
猪男の腹が鳴った。
「腹が減っては戦は出来ぬだ!まずは腹ごしらえだな!」
方向転換して、食堂に向かった。
「とりあえず僕達も行こうか…」
「何だか疲れたわね…」
「とりあえずゾンビで無くなったから、良かった…のよね?」
「多分…」
「これでこの屋敷も浄化されるだろう…」
「何しに来たのかしらね…」
生徒会一行は疲れを感じながら、後を追いました。
王女救出はまだ先のようです。
猪ゾンビは「ムンクの叫び」をイメージしています('ω')ノ
「他のゾンビとどこが違うの?」と思われた方は、あの顔が絵から抜け出て襲ってくるのを、想像して下さい('ω')ノ




