閑話㉔.臨時役員達の井戸端会議④
長めです。
暴力シーンありご注意。R15くらいで。
~フラン(馬鹿女)の回想~
その日も私は木の上から、双眼鏡で中等部を覗いていた。
「あ~ぁ、やっぱり年下は好みじゃないわねぇ。でも高等部には、すっかり私の悪評が定着しちゃってるし…」
葛藤しながらも目ぼしい物件を探してると、下の方から何やら声がした。
「ん?誰か来たのかしら…こんな森の奥なんて、誰も来ないと思ってたのに…」
上から見下ろすと、留学生と天然王女だった。
「……」
下りて行ってもいいが、何だか異様な雰囲気なので、そのまま気配を殺して見ていた。
するといきなり留学生が、王女を拳で殴り始めた。
「!」
とっさに声が出そうになったが、慌てて口を押さえる。
すると今度は、殴りながら罵声も浴びせて来た。
「何やってのよ、この愚図!役立たず!さっさとアンタの父親に私を養女にするよう、推薦しろといったでしょう!」
「い、言ったわ!言ったけど『必要性を感じない』って…」
半泣きになりながらも、王女も言い返す。しかしそれが、相手の気に障ったようだ。
「それを何とかするのが、アンタの役目でしょう!このダメ女!」
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
殴るだけじゃ飽き足らないと言わんばかりに、今度は蹴ってくる。王女は頭をかばいながら縮こまって、ひたすらされ放題だ。
やがて一通りやりつくして気が晴れたのかと思いきや、今度は泣いてる王女の髪を引っ張ってムリヤリ顔を持ち上げる。
「い、痛い…」
王女が顔を顰めるが、留学生は一切無視して続ける。
「いい?アンタみたいな、何のとりえもないゴミクズの友達になってやってるんだから、感謝して早く恩を返しなさい。一生私に尽くして恩を返す事、それだけがアンタの存在理由よ」
そう言って掴んでいた手を離すと、王女は無言でその場に頽れた。
そのまま無言で泣き続ける。
それを見て、また留学生が気分を害する。
「何泣いてんのよ。私が虐めたとでもいう気?酷い言いがかりね。何のとりえもなくて、周りから嫌わてるアンタに、友達になってあげて役目まであげたっていうのに、恩を仇で返すつもり?」
睨みつけると、王女が怯えて否定する。
「そ、そんなつもりじゃ…」
「だったら泣き止みなさいよ、あてつけがましい。本当に感謝してるなら『私は生きる価値もないゴミクズで、役目を与えて下さったユーリス様に感謝して、喜んで一生お仕えします』って笑って言いなさいよ」
ニヤニヤ笑いながら王女を見下して、とんでもない事を言う留学生。
それに対して王女は、ひたすら怯えるしかできなかった。
「そ、そんな…」
「何よ言わない気?私の機嫌を損ねていいと思ってるの?父親からも『王女同士仲良くなって、国同士の懸け橋になればいい』って、言われてるんでしょう?ホラ早く!」
「………」
無言で俯いてしまった王女に、いよいよユーリスの怒りが爆発する。
「言え!!!!」
「わ、私は…生きる価値もないゴミクズで…役目を下さったユーリス様に、感謝して…喜んで、一生お仕えします…あは、あははははは…」
壊れたように泣きながら笑い始めた王女に、ユーリスは一転して胡散臭い物を見る目で見た。
「何泣きながら笑ってるのよ、気持ち悪いわね。何かしらけちゃったし、もう行くわ。アンタ気持ち悪いから、収まるまでついてこないで。ここで好きなだけ笑ってればいいわ」
そう言って王女を置いてサッサと歩き出したが、数歩進んだところで思い出したかのように、振り返って言った。
「あと今回下らないやり取りで時間と手間取らせた慰謝料は、後で貰いに行くからちゃんと用意しておきなさい。後分かってるでしょうけど、バラしたりバレるようなヘマしたら、その分慰謝料10倍にして貰うからね、いいわね」
王女が無言で頷くのを見ると、今度こそ用は済んだとばかりにサッサと立ち去った。
「あは、あははははは…あははははははははははははは…」
その後も王女はしばらくの間泣きながら笑い続けたが、やがて笑い声がすすり泣きに代わっていった。
「もうやだ…死にたい」
その後も「死にたい、死にたい」と、呟きながら泣き続けていた。
話が終わると、生徒会室は沈黙に包まれた。
話し終えたバカ女は、お茶を飲んて一息ついている。
やがて3馬鹿の1人が、口を開いた。
「色々ツッコみたいが…ヤバいな」
それを皮切りに、他の面々も口を開いた。
「そうだな…想像以上だ」
「やっぱり女は怖いな…」
「一緒にしないで欲しいけど、怖いというのは賛成だわ」
「王女様かなり、壊れかけてますね…」
「早めに手を打たないと、ヤバいわね…」
全員冷静さを装っているが、実際は真っ青な顔で内心動揺しまくりだった。「怖い、ヤバイ」と言いつつ、何も案が思いつかない。
馬鹿女さえも、カップを持つ手が震えていた。
(当然だけど、皆動揺している…ここは私が何とかしないと)
素早く周囲に目をやりながら、深呼吸して自分を落ち着かせる。
「もう私達の手に負える状態じゃないわ…下手すれば国際問題になってしまう。ここはケイジュ様から宰相と国王陛下にお伝えして、解決していただくしかないわ」
「「「「「「はい」」」」」」
一同頷く。
「とりあえず言葉だけじゃ足りないわ。王女の周辺を調査して、報告書という形でケイジュ様に、バカ女の証言と一緒にお伝えしましょう。バカ女、付き合ってくれるわね」
するとバカ女が、ムッとした顔をした。
「バカ女じゃないわ、フランよ。証言はするわ、私の進退がかかってるもの」
バカ女が呼び方についてクレームをつけたが、無視した。
(『バカ女』の方が分かりやすいし、今はそれどころじゃない)
「リージアとミーレは、王女付きのメイドから普段の王女の様子を、聞き出して頂戴。日常的に殴られてるなら痣とかある筈だし、着替えや入浴時に気づいてる筈よ。3馬鹿は王女と留学生が2人きりになったら、尾行して暴力シーンを目撃して、証言者になって頂戴。音声をとるとか第3者を連れてってくれたら、なおいいわ」
「チューリ様は、どうするんですか?」
リージアが、聞いてくる。
「私はイチかバチか、王女にあたってみるわ。王女の口から『虐められてる』という証言が取れれば、陛下も確実に動くし、最悪でも壊れかけの王女を何とかしないと…」
「今夜にも、自殺しそうですしね…」
ミーレが深刻な顔で言う。
縁起でもないが、その通りだ。
「よし行くわよ皆!」
「「「「「「おう!」」」」」」




