7.学園は祭りを行う③
(ケイジュ視点です)
おかしい。どうしてこうなった。
「うわぁん!おかあさーん!」
「おなかすいたー!」
「あそべー!あそべー!」
「「………」」
俺とアイリスは現在進行形で、子供達に取り囲まれている。
学園祭当日アイリスの手が空いた頃を見計らって、デートに誘う…ここまでは予定通りだった。
普通に誘っても断られるので「見回り」と言って連れ出した、完璧な計画だった…筈だった。
しかし行く先々で、迷子を見つけたり押し付けられたりして、あっという間に子供の山になってしまった。
もはやデートどころではない。
仕方なく空き教室に連れて行ったが、とにかくうるさくて仕方ない。
(全く誰だ!平民の子供を連れてきた奴は!)
「困ったわね…」
「とりあえず親を探さなくてはいけないんだが…」
俺達は途方に暮れた。
子供を連れ歩きながら、大声で親を探すしかないのだが…とにかく子供はじっとしてない。
興味のあるものを見つけると、手を放してそちらに行こうとする…ご丁寧に複数同時にだ。
あいにくこちらの身体は1つなので、四方八方に走っていこうとする子供を、全員捕まえるのは無理だ。
そんな訳で探し回れない。
他の臨時役員を探して手伝わせるしかないが、そうすると残った1人で全員の面倒を見なければならない。
正直言って俺もアイリスも動物は好きだが、子供はそんなに好きじゃない…特にうるさく泣きわめく子供は。
「こうしていても仕方ない…私が子供を引き受けるから、アンタが誰か探してきて頂戴…」
凄く嫌そうな顔で、アイリスが切り出す。
「いいのか?」
「このままこうしても状況が進まないでしょう…かといってアンタに子供を任せると、絶対トラウマ植え付けて、自分に逆らわないようにするでしょう」
「まぁあるかもな」
アイリスが甘い空気が耐えられないように、俺もうるさい子供に我慢できない。
アイリスは優しいから最低限面倒を見るが、俺だったら物理で黙らせるかもしれない、いや確実に黙らせる。
今回初めて間近でうるさい子供を見て、確信した。
「じゃあ行ってらっしゃい」
「あぁ行ってくる、なるべく早く戻るよ」
早くもウンザリした顔のアイリスに見送られながら、教室を後にした。
助っ人は思いもかけず、向こうからやって来た。
「あ、いたいた会長~」
「やっと見つけました」
「探したんですよ~」
3馬鹿がこちらを見るなり、笑顔で駆け寄ってくる。
俺の元まで来ると、一斉に喋りだした。
「会長!俺達も店を出したいです」
「皆楽しそうだし、結構儲かるみたいだし」
「今からでも会長権限で、どうにかなりませんか?」
向こうから志願してくるとは…ますます都合が良い。
「今から店は無理だけど、個人的にアルバイトしてみないかい?」
「アルバイト?」
「どんなですか?」
「給金はいくらですか?」
「人助けだよ。給金ははずむよ」
「「「喜んで!!」」」
嬉しそうな3馬鹿と一緒に俺も笑う。
(まだ仕事内容を言ってないのに…何て扱いやすい)
ここまでくると、表彰ものだ。ぜひこのままでいてほしい。
「ただいまアイリス、助っ人が…」
言いかけて絶句した。
アイリスは予想以上にボロボロになっていた。
ポニーテールはリボンが解けてるし、制服もボタンが外れたり破れたりして、何より顔や手にあちこちひっかき傷がある。
「お帰りケイジュ…」
さすがのアイリスもちょっと涙目だった。
後ろの3馬鹿も絶句している。
ちなみに髪のリボンは子供の1人が「魔法少女ごっこ」と称して、振り回していた。
「何で30分も経ってないのに、こんなにボロボロになるんだ」
「子供は小さな悪魔よ…」
虚ろな目でアイリスが呟く。
悪魔どもの相手に1人立ち向かったアイリスの奮闘に、心の中で拍手を送った。
「喜べアイリス。代わりに犠牲になってくれる連中を連れて来た」
そう言って背後の3人に目を向けると、アイリスも3馬鹿に気付いた。
「え」
「もしかして…」
「俺達が子守をするって事ですか?」
アイリスの惨状を見て呆然としてた3人だが、注目されて我に返る。
「他に誰がいるんだい?人助けと思って頑張ってくれ、ちゃんと報酬ははずむから」
「「「いやいやいや!!」」」
慌てて3人が首を横に振る。
「無理でしょう、こんな暴れん坊」
「俺達の身が持ちませんよ」
「せめて会長達も手伝って下さい!」
3人が嫌がるが、俺もアイリスも許さなかった。
「大丈夫!女の私1人でもできたんだから、アンタ達3人いるしきっと何とかなるわよ!」
アイリスがグッと親指を立てながら、笑顔でごまかす。
「「「無責任な事言うな!!!!」」」
が、3馬鹿は騙されなかった。
3馬鹿の1人の肩に、ポンっと手を置く。
「君達に拒否権はないんだよ、おもらし君?」
「漏らしてない!!!!」
言われた当人は真っ赤になって否定するが、思いっきり動揺してる。
「あぁゴメンネ。そうだね、まだだったね―――でも」
そのまま周りに聞こえないよう、小声で囁く。
「今からでも「未遂」じゃなく「事実」にしても、構わないんだよ―――」
その言葉に赤くなっていた顔が、一瞬で蒼白になりそのまま硬直してしまった。
残りの2人も何となく雰囲気を察して、黙りこむ。
その横を俺とアイリスが、素通りする。
「それじゃあ後はよろしくね。30分くらいで戻る予定だから」
「…どうしても耐えられないなら、子供達を連れて親探しして下さい。親が見つかれば子守から解放されます」
教室のドアのところで、一度振り返ってアドバイスする。
3人が聞いていたかわからないが、返事を待たずにドアを閉める。
「それじゃあ改めて、校内を回ろうか」
手を差し出すと、アイリスも解放感からか嬉しそうに手をつないだ。
背後で何やら悲鳴が聞こえたが、そのまま無視した。
あかいしゅーちょーのみのしろきん。




