20.世界一〇〇な戦争の終わり(後)
あけましておめでとうございます。
キリがいいので、1日繰り上げ+年の変わり目の投稿です。
長めです。流血表現もあります。
今年もよろしくお願いします<(_ _)>
「王妃様、失礼します」
「どうぞ~」
数時間後、3人がいる部屋に向かう。
宰相がノックすると、すぐ返事が返って来た。
宰相が扉を開けた…が、すぐに閉められた。
「父上?」
後ろにいたケイジュが、不思議そうに宰相に問いかける。
すると宰相は真っ青な顔で、振り向いた。
「すまんケイジュ。私は急に気分が悪くなったので、後は任せる」
そう言って返事も聞かぬまま、走り去っていった。
「「「「?」」」」
全員不思議に思いながら、ノブに手をかける。
扉を開けると、そこは地獄絵図でした。
床一面に血が広がり、その中央で帝王らしきものが、うつぶせで倒れていた。
壁や天井にまで、血が飛び散り、オタク王は部屋の隅で腰を抜かしている。
そんな中何事もなかったように、王妃が口を開く。
「てへ☆やり過ぎちゃった」
「帝王は全治三か月だそうです」
あの後メイドや兵士に、部屋の片づけと医者を呼ばせて別室に移動した。
「三か月か…」
「困ったことになりましたね」
皆で頭を悩ませる。
帝王が臥せってる状態では、敗北宣言をさせることが出来ない。
とりあえず帝王の身柄を拘束してる事を伝えて現在停戦中だが、いつまでもこのままではいられない。
脳筋が我慢できずにいずれ攻めこんでくるだろうし、その前に帝王が目覚めたとしても、ノウキ―ン兵達の前で、敗北宣言をさせなければいけない。
「「「「「「「う~~~~ん」」」」」」」
その時ちょうどタイミングよく、メイド長がやって来た。
「帝王が目覚めたそうです」
「「「「「!」」」」」
本当にいいタイミングだった。
それからはトントン拍子に進んだ。
目覚めた帝王はすっかり心が折れたのか、腐王妃に謝罪と服従を誓い、言われた通りに敗北宣言した。
初めは帝国兵も納得がいかなかったようだが、帝王自ら説得して収まった。
その後帝国から賠償金を貰い、友好条約を結んだ。
帝王は譲位して王国で監視されながら、生涯幽閉となった。
幽閉といっても外部とやり取りはできるので(検閲はされるが)、オタク王と文通友達になっている。
そのうえオタク王のはからいで帝国にあった帝王の身の回り品―――言うまでもなく傍迷惑なアレを始めとする趣味の書物―――も届けられた。
事情を知る関係者は思いっきりムカついたが、国王に文句を言えず帝王はただの楽隠居になった。
帝国は王太子が即位して統治することになったが、前王が人質になってるうえ、新王自身も監視付きなので、もう戦争を仕掛ける事も出来ないだろう。
こうして長年にわたる、世界一アホらしい戦争は幕を閉じた。
言うまでもなく、帝王が戦争を起こした理由は闇に葬られ、後の歴史家たちの論争の種となったのである。
~アイリスの知らない結末~
(ケイジュ視点です)
戦争の終結から数日後、俺は1人で王宮を訪れた。
1つ気になる事があったので、それを確かめに来たのだ。
「失礼します」
「あらケイジュ君いらっしゃい。私を訪ねてくるなんて珍しいわね」
王妃の部屋を訪ねると、王妃は珍しく部屋でくつろいでいた。
ちょうどお茶の時間だったらしい。
「ええちょっと、お聞きしたい事があったので」
席を勧められて座ると、控えていたメイドがお茶を用意してくれた。
「あらなぁに?」
王妃が笑顔を向けてくる。
「どうして帝王を助けたのですか?」
王妃の動きが止まる。
一瞬で空気が張り詰めた。
「何の事かしら?」
そう言うと王妃がティーカップを持ち上げる。
その反応で確信した。
「本来なら帝王は、処刑される筈でした…それは陛下が庇っても、免れません。いくら被害がほとんどないとはいえ、処刑しなければ貴族も民も納得しないでしょう」
「……」
王妃は無言だったので、そのまま続ける。
「けれど貴方に半殺しの状態にされたせいで、誰もそれ以上文句を言えなくなった…結果として処刑はなくなり、王位の譲渡と生涯離宮に幽閉で済まされた」
「……」
「もう一度聞きます。どうして帝王を助けたのですか?」
王妃はため息をつくと、持っていたティーカップに口をつけることなくソーサーに戻した。
「大した理由じゃないのよ…昔の事にこだわるより、帝王と陛下に貸しを作った方がいいかと思ったのが1つ」
俺はちょっと驚いた。
貸し云々はすぐに思い至ったが、もう1つというのは予想外だった。
(他にどんなメリットがあるというんだ?)
「もう1つは?」
「もしあのまま帝王を処刑してたら、どうなったと思う?」
「………」
帝王に敗北宣言をさせた後に処刑する…負けた以上は受け入れるかもしれないが、間違いなく帝国は不満を募らせるだろう。
それはやがて数年、あるいは数十年後に戦争の火種になる。
その頃には王も王妃も父上もおらず、対処するのは俺やアイリス、天然王女や幼い王子達だろう。
「それが答えよ」
そう言って王妃はニッコリと笑った。
「分かりました」
(もう済んだ話だし、これ以上続けてもしょうがないか)
一息つくと、今度は王妃が切り出してきた。
「ところでどうして、気づいたの?あの二人がバラすとは、思えないんだけど」
王妃の疑問にフッと笑う。
「部屋中に血が飛び散ってたわりに、怪我が軽かったので。あれだけ出血してたら、即死間違いなしです。ところでどこから、あれだけの血液を調達したんですか?」
ちゃんと血の匂いがしていたので、ケチャップやペンキというオチはない。
俺が気づいたくらいなので、アイリス達密偵も気づいただろう。何も言わないのは、自分達が口を出す立場ではないと、心得ているからだ…父上は気分の悪さが先だって、気づいてないようだが。
俺の疑問に、今度は王妃がどこか遠い目でフッと笑う。
「うちの城の料理人たちは鳥でも牛でも豚でも解体できて、とっても優秀なの…でも当分お肉は食べたくないわ」
「なるほど」
王妃の部屋でこっそり解体ショーを開かなきゃいけないなんて、コックたちも大変だな。
きっと今頃は、余りまくった肉の山に頭を抱えている頃だろう。
カップを傾けながら、とばっちりを受けた城のコック達にほんの少し同情した。
下っ端は今日も大変です。
お正月企画として、もう一つの連載の方も投稿してます。
読んで下さると嬉しいです('ω')ノ感想いただけるともっと嬉しいです




