20.世界一〇〇な戦争の終わり(前)
「とりあえず、これどうしよう」
皆で2人に気づかれないよう、取り囲む。
オタク2人は周りに気づかないまま、傍迷惑な本の話題で盛り上がっている。
「やっぱり1番は主人公が、断腸の思いで弟を切るところだろう~」
「いやそれもいいが、裏切りかけた臣下が主人公の度量に心を打たれて、改めて忠誠を誓うシーンも…」
帝王に敗北宣言をさせた後、責任を取らせて処罰しなければならないが、この様子ではオタク王が止めに入るだろう。無罪や軽い処罰では民が納得しない…相応の理由が必要だが、開戦理由が「愛読書の主人公の真似をしたかったから」なんて、暴動まっしぐらだ。
「もういっそ、2人まとめて処刑でいいんじゃないですか?ケッ」
宰相が物騒な提案をする…落ち着いたと思ったが、すっかりやさぐれてるようだ。
「落ち着いて下さい父上、とりあえず…」
ケイジュが何か言いかけた言葉を遮って、後ろから何かが飛んできた。
咄嗟に避けると、何かが帝王に命中した。
「ぶべぇっ!」
「な、何だ!?」
帝王はフッ飛ばされて、壁にめりこんだ。
オタク王も驚いている。
振り向くと王妃が怒りの形相で立っていた。
手に鎖鎌のような武器を持っていた。
(何だろあれ?)
鎖鎌のように見えるが、先端は鎌でなく棘のついた鉄球がついていた。
どうやらあの鉄球を投げたようだ。
「あれはモーニングスターだな」
いつのまにかジョーンズさんとアザレアさんが来ていた。
「ご存じなんですか?」
「あぁ前に見たことある。異国の武器で、棘付きの鉄球に王妃様の持ってるような鎖付きで投げつけるタイプと、棍棒で殴るタイプがある」
「何だか王妃様、怒ってますね」
アザレアさんの台詞にケイジュも口を開く
「そういえば王妃様は、帝国に滅ぼされたゲージツ国の出身でした」
「あぁそういえば」
実は帝国に滅ぼされた国は、ゲージツ国のみである。
というか元々この大陸に国は帝国、ショークブツ王国、ゲージツ国の3つしかない。
この大陸には何故か個人主義者が多く、気の合う者同士が集団でまとまって適当に暮らしてるので、3つの国以外は町や村レベルの領土である。そのせいか帝国が攻め入って来た時、すぐに白旗をあげて降伏した。
そのため領土は帝国領になったものの、住民はほとんど被害が無かった。
しかしゲージツ国は景観の破壊を拒んだ一部の芸術家たちが反抗した為、攻めこまれて国は焼かれ、反抗した者たちは捕虜とされた。残った者たちは「国の運営も面倒だから」と、全員夜逃げして帝国に占領された。
結果としてゲージツ国は消滅し、帝国に滅ぼされた唯一の国となった。
話してる間にも異様なオーラを漂わせながら、王妃が一歩ずつオタク達に近づいていく。
すぐ後ろに武器のいっぱい入った箱を、手押し車で引きながらメイド長が付き従っていた。
あまりの迫力に、誰も声をかけられなかった。
「そう。そんな事で私の国は滅ぼされたわけね…ふふふふふ」
「「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ」」
復活した帝王と、オタク王が腰を抜かして震えている。
(無理もない)
そんなくだらない理由で故国が滅ぼされたとあっては、どんな人間だって激怒するに決まって…
「そんな理由で私が子供の頃から書き溜めた、夢と涙と苦労の結晶が灰にされたわけね…」
王妃が怒りのあまりダンと足を踏み鳴らす。
前言撤回。
やはり腐王妃は腐王妃だった。
というか子供の頃から腐ってたのか。
そうこうしてる間にも腐王妃は2人に迫り、オタク2人は壁際まで追い詰められた。
パンパン。
突然ケイジュが手の平を打つ。
「じゃあ皆さん、ここは王妃様に任せて、今後の事を別室で話し合いましょう」
「そうね」
「ここにいても出来る事ないし」
「ごゆっくり~」
「え、え、ちょっと待って。助けて…」
「王妃様、後はお任せします」
「そのままハゲてしまえ」
オタクが助けを求めるが、皆無視して次々に退出する。
最後に宰相が悪態をつきながら、ドアを閉めた。
数秒後部屋から絶叫が聞こえたが、皆聞こえないふりをした。
オタクは今日も自業自得です。
大陸の名前は「マイペース大陸」です('ω')ノ




