19.王国上層部は帝王の恐ろしさを知る
王国に到着すると、縛り上げた帝王を連れて3人で謁見の間へ行く。
「入れ」
「失礼します」
中に入ると、オタク王と宰相、それに王妃とケイジュも揃っていた。
「帝王を連れてまいりました」
「おい、起きろ」
代表でジョーンズさんが帝王を宰相に引き渡すと、宰相が帝王を起こした。
「う、う~ん…ハッ、ここは!」
気がついた帝王が辺りを見回し、状況を把握したようだ。
ちなみに手の縄は宰相が解いたが、足はまだ縛られてるので逃げられない。
もっとも解いたとしても、これだけ大勢の前で逃げられないだろうが…
「ここはショークブツ王国だ。お前には人質として兵を引かせた後、敗北宣言してもらう」
宰相がニヤリと笑いながら言う。
(おぉまるで悪役みたいだ)
普段温厚なだけに、ビックリだ。
さすがは宰相と言ったところか。
すると帝王はフンと鼻を鳴らすと、居直った。
「殺すならば殺せ!王座や命を失っても誇りは失わぬ!それが王というものだ!」
帝王の言葉に、周囲は困ったように顔を見合わせる。
(困ったな…本当に殺すわけにはいかないし、帝王に敗北宣言してもらわないと、終わりだ)
籠城で時間を稼ぐにも限界がある…戦力ではどうあがいても勝ち目はない。人質作戦が失敗なら万事休すだ。
どうしたものかと皆が考えてる中、1人だけ違う反応をする人がいた。
「そ、そのセリフは!」
「陛下、危険です」
王が宰相を押しのけて、前に出た。
「王の誇りとは国や民を守る事!民を置いて一人で逃げようとする者に、王の資格はない!」
王が意味不明なセリフを吐くと、今度は帝王が目を瞠った。
「そ、そのセリフは!」
「フフフ…」
驚く帝王に王は懐から何かを取り出し、天高く掲げた。
『覇王伝④~骨肉の争い~』
すると帝王も無言で懐から何かを出した。
『覇王伝⑧~天下統一の道~』
「「「「「「……………」」」」」」
(何だか嫌な予感がしてきた)
内心恐々とする全員を尻目に、王と帝王は盛り上がっていた。
「さっきの台詞、カッコよかっただろう~?いやぁ~一度言ってみたくてなぁ~」
「あぁ、〇〇のシーンだろ?いやぁ儂もあのシーンは大好きでなぁ~。やっぱり王者はああでなくてはな~」
「だろう?儂も憧れててなぁ~。即位の数日前にこの本を見つけてな、天命を受けたのじゃ。やはり王なら…いや、男なら天下統一を目指すものじゃろう~」
「おぉ同志よ!」
感極まったオタク王が、帝王と抱きしめあう。
(何が「同志よ!」だ)
こっちは「どうしよう!」だ。
頭を抱えながら周囲を見ると、ケイジュやジョーンズさん達も頭を抱えていた。
宰相に至っては床に座りこんだまま、両手で顔を覆って泣いていた。
「もう嫌だ、こんなオタク共…宰相辞めて、田舎に引っこみたい」
気持ちはよくわかる…私も泣きたい。
つまり数十年に渡る帝国の侵略は、領土拡大でも、食糧不足を補う為でもなく、1人のオタクがオタク気分の赴くまま、行われたものだったのだ。
どうにも気持ちのやり場がつかないので、愚痴をこぼせそうな相手のところに行く。
「知りたくなかったわね…」
「あぁ…こんな恐ろしい相手は初めてだ」
「そうね…」
はぁ~~とケイジュと2人深くため息をついた。
視線の先ではバカ2人が、まだ盛り上がっていた。
オタクは今日も元気です。




