17.密偵見習いは疲労する
「「遅いわよ(ぞ)」」
「すみません」
国を出て数日後、先に潜入していた密偵仲間と合流する。
そのまま王宮に潜入した。
作戦は2割の兵が囮として王宮に潜入して、騒ぎを起こす。当然王宮の人間はそちらに向かい、王は逃げ出そうとするだろう。そこに変装して近づき、攫って囮の兵と合流する手筈だ。
今回共同で任務に当たるのは、ジョーンズさんと、アザレアさんだ。
2人ともすでに一人前の密偵なので、心強い。
役割としてはアザレアさんが囮の兵を指揮し、ジョーンズさんが変装して王に近づき攫う。私は王を捕らえた後、アザレアさん達に退却の合図を出すのと、兵達と合流するまで追っ手を追い払う役だ。
「時間もない、急ぐぞ」
「はい」
「それじゃあまた後で」
アザレアさんと別れ、ジョーンズさんの合図で、城の奥へと進む。
進みながら説明を受けた。
帝国の王は「帝王」を名乗り、臣下含む民には「閣下」と呼ばせているので、もし聞かれたら閣下と言うようにしろと言われた。
途中食事を運ぶらしい甲冑を着た兵士とメイドがいたので、服と甲冑を拝借し、そのまま成りすまして進むと、帝王の私室に通じる扉の前にたどり着いた。
扉の左右に見張りの兵がいて、進もうとすると止められた。
「「合言葉は?」」
「「え」」
私とジョーンズさんの動きが止まる。
(そんなの聞いてない)
「どうした?」
「あの…合言葉とは?」
私の言葉に兵達が顔を見合わせると、説明してくる。
「何だ聞いてないのか?」
「まぁ閣下が今朝いきなり決められたからな…前回城内に王国のスパイが入りこんで、大混乱だっただろう?」
「だからその教訓を生かして、閣下の私室に入る時は合言葉を言わないと、入れないようになったんだ」
「あぁちなみに会議場もそうだからな。気をつけろよ?」
((マズイ))
合言葉なんか知るはずない。
今さら引き返すこともできない。
嫌な汗が流れる。
「じゃあ言うぞ…」
心臓の音がやたら大きく聞こえる。
(こうなったイチかバチかあてずっぽうで言うしか…)
外れる可能性が高いが、部屋の前まで来たのだ。後は強行突破しかない。
ジョーンズさんに顔を向けると、小さく頷いた。
「「王弟殿下と言えば!!!!」」
「…………変態」
一気に力が抜けて、思わず呟いた。
私の答えにまたも、兵士が顔を見合わせる。
「あれ?答え『ロリコン』じゃなかったっけ?」
「え?『幼女趣味』だろ?」
「『変態』も『ロリコン』も『幼女趣味』もおんなじ意味だろ?あってるんじゃないか?」
「でも微妙に違うと言えば、違うしなぁ…これってどうなんだ?」
兵士たちは首をかしげて、悩み始める。
(どうしよう)
すんなり通してくれるのが1番だが、強行突破するなら今だ。
待った挙句「やっぱり違う、敵だ」と襲いかかってこられたらマズイ。
でもこちらから手を出して、すんなり通れるチャンスをフイにするのも悪手だ。
困っているとジョーンズさんが、助け舟を出してくれた。
「どれも同じ意味だし、あってるって事でいいんじゃないか?」
「「それもそうだな」」
兵士たちは悩んでたのが嘘のように、あっさりと受け入れた。
「それじゃ入れ」
「「………」」
そのままジョーンズさんと一緒に、部屋に入る。
扉が閉まり、ある程度進んだところで言った。
「…どんな答えでも通すなら、合言葉の意味ないんじゃないですか?」
「…脳筋って恐ろしいな」
まだ潜入しただけなのに、2人はひどく疲れました。
脳筋は今日も脅威です。
数時間前の帝国会議場&王国宰相
帝国兵「「ショークブツ王国宰相と言えば!」」
会議に来た貴族達「「ハ〇!!」」
帝国兵「「お通り下さい」」
宰相「うっ!」
オタク王「どうした?」
宰相「何だかすごく帝国が憎らしく思えてきました…」
オタク王「何だそりゃ」




