13.密偵見習いは丸めこまれる
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週末ケイジュを誘って、出かけることにした…いわゆるデートだ。
「お前から誘ってくるなんて、珍しいな。」
「まぁたまにはね」
実際ケイジュと一緒に行動すれば、この気持ちが何なのかハッキリするだろう。
ケイジュは機嫌が良い…珍しいからだろうか。
適当に街を歩いた後、少し早めだが昼食を取ることになった。
いつもならお店で買った後ベンチで食べるのだが、暑いので中に入ることにした。
近くの店に入り、注文する。店員が去るとケイジュが切り出した。
「それで?今日は何の用なんだ?」
「…何の事?」
「とぼけるな。お前が呼び出す時は何か聞きたい事があるからだろう…学園で言いにくい事が」
「……」
当たらずとも遠からずだ。
(さすが幼馴染)
「う~ん言いにくいというか…何と言えばいいか、わからなくて…」
「?とりあえず思った事を言ってみたらどうだ」
ケイジュが不思議そうな顔をしながらも、促してくる。
そこに店員が注文したものを運んできた。
私はオレンジジュースとミックスサンド、ケイジュはアイスコーヒーとホットサンドだ。
とりあえずオレンジジュースを一口飲むと、切り出した。
「じゃあ言うけど…ケイジュは好きな人いる?」
ブッ!
瞬間ケイジュが吹きだした。
「ちょっと!何やってるのよ」
「ゲホッゴホッ!お、お前こそいきなり何を聞いてくるんだ!」
ケイジュが咳きこむ。
貴族として食べ物を飛ばすわけにもいかず、ムリヤリ飲みこんだせいで涙目になっている。
「とりあえず落ち着いて。ホラ深呼吸」
向かいから手を伸ばして、背中をさする。
「誰のせいだと思ってるんだ…」
ケイジュは不満そうにしながらも、深呼吸した。
「はぁ…それで?何でそんなことを聞いてきたんだ」
一息ついてから聞いてくる。
「う~んちょっと相談事に関係があって…」
「どんな関係だ?」
「ちょっと待って、先に聞いたのはこっち。好きな人がいるかどうか、答えてからにして」
はぐらかされそうな気配を感じたので、話を戻す。
するとケイジュが嫌そうな顔をした後、ようやく口を開く。
「…………いる」
小声で普通の人なら聞こえるかどうかだが、訓練で鍛えた耳にはハッキリ聞こえた。
「…そう」
またモヤっとした。
ジュースを一口飲んで、気持ちを切り替える。
「実は私も…ちょっと気になる人がいて…」
「何だと!?」
ケイジュが、身を乗り出してくる。
(そんなに怒る事かしら?)
「正直よくわからないのよ。気になりはするけど…他の人が言うような恋する症状は出ないし…」
「じゃあ違うんだろう」
ケイジュはまだ不機嫌そうにしながらも、少しは落ち着いたのか元の位置に戻る。
「そうなのかしら?ねぇ経験者としてどう思う?」
「俺に聞くなよ、そんなの人それぞれだろう……あえて言うなら『ずっと一緒にいたい』と思うならそうなんじゃないか?」
「そうなの?」
「だから聞くなって……正直俺も自分の気持ちが良くわからない」
「え?」
「一緒にいたいとは思うが、相手の事を始終考えるとか、相手を最優先させるとか到底思えないからな」
「……」
「ただ一緒にいたいし、他の誰かに渡したくない。こんな風に思うのもそいつだけだからな…それで充分だと思う」
「なるほど…」
言われてみればそうだ。
症状が人それぞれだったように、気持ち自体、人それぞれなのかもしれない。
「ありがとケイジュ。何となくわかった気がするわ」
「それは良かったな。こっちも自覚が出てきたようでよかったよ」
「?」
台詞の後半部分が分からなくて、首をかしげる。
「何でもない。ところで外で会うのもいいが、たまには屋敷に来るといい。父上も歓迎するだろう」
子供の頃はケイジュと一緒に訓練してたせいもあり、互いの家を行き来してたが…
「…やめておくわ。一平民が公爵家に出入りするなんて、身の程知らずだもの」
「…そう言ってお前を虐めてたメイド達なら、もう全員クビにしたよ」
「!?」
驚いてケイジュの顔を見る。
まさかバレているとは思わなかった。
「当然だ。主が自分の家の事を把握してないわけないだろ」
「それもそうね」
ため息をついて、背もたれに寄りかかる。
行くたびに宰相や執事など一部の使用人は、私が王の私生児だと知っていた為歓迎してくれてたが、大半の使用人はその事を知らないので、『母親同士が友人なのをいいことに、貴族子息に取り入ろうとしている平民の子供』と見られており、陰で散々中傷や嫌がらせを受けた…そのうちケイジュの訓練も終了し、疎遠になって行った。
「まぁ気が向いたらでいい。いつでも歓迎するよ」
「まぁそのうちにね」
使用人たちに良い印象はないが、子供の頃はケイジュと一緒に遊びまわった場所だ…懐かしい思いはある。
その後は特に何事もなく、いつも通り他愛無い話をした後互いに別れた。
しかし私は気づいていなかった。
当初の目的だった『ケイジュに対する気持ちが恋かどうか確かめる事』に対して、ケイジュの回答は『恋と思えば恋だ(要約)』であり、結局は恋かどうかは分からないという事を…
腹黒は今日も外堀を埋めてます。




