12.密偵見習いは聞きこみ調査する
猪男1人では、参考にするにはまだ足りない。
放課後になるのを待って、聞きこみを開始した。
証言①天然王女
「王女、愛って何だと思いますか?」
「う~ん、愛かぁ…」
5分経過
「う~ん」
「……」
10分経過
「う~~ん」
「………」
15分経過
「あの王女、そろそろ…」
「う~~んそうねぇ………愛って何なのかしら?」
首をかしげる王女。
アイリスは苛立ちを覚えた!
アイリスの忍耐力が200上がった!
「何やってるのよ、アンタ達」
振り返ると、毎度おなじみチューリ嬢たちがいた。
「「こんにちはチューリさん達」」
「「「こんにちは2人とも」」」
挨拶をすますと、早速チューリさんが聞いてくる。
「それで?何やってたのよ」
「愛について聞いてました」
「「「愛!!!!」」」
何故か3人ともビックリする。
「愛の何を聞くっていうのよ」
「う~ん何と言えばいいか…どんな気持ちが愛なのかなぁって」
改めて言うと、変な感じだ。
良い機会だ、3人にも聞いてみよう
改めて3人に向き直る。
「3人にとって『愛』ってどんな気持ちですか?」
証言②チューリさん
「そうねぇ…相手に尽くしたくなる気持ちかしら?」
「尽くしたくなる?」
「そうよ、相手に喜んでもらいたくなるの」
何故かふんぞり返って鼻を鳴らしてくるが、これは参考になりそうだ。
少なくとも王女よりマシだ。
次に後ろの2人に目を向ける。
証言③リージアさん
「私は…そうですねぇ。相手を見つめていたくなる気持ちでしょうか?」
「見つめていたくなる?」
「はい。目が合うとドキドキして平静でいられなくなるけど、目が離せなくて遠くから見ていたいと思うんです」
「う~ん」
やけに具体的だ。経験があるのだろうか?
考えながら、最後の1人に目を向ける。
証言④ミーレさん
「うーんと、私はですねぇ…反射的な気持ちかな?」
「反射的…ですか?」
「うんそう。笑いかけてくれるとこちらも笑い返したくなるし、優しくして貰えたら、更に嬉しくてこちらもお返しをしたくなる、そんな気持ち」
「なるほど」
一通り意見を聞いたので、考えてみる。
…と思ったら、今度はチューリさん達が聞いてくる。
「何でそんなこと聞いてくるのよ」
「いや…愛ってどんな気持ちなのかなぁって」
改めて言うと、ちょっと恥ずかしい。
手をモジモジさせると、3人が何故か驚いた顔で見てくる。
「アンタ恋してるの?」
「相手は誰?」
「もう付き合ってるんですか?」
「い、いえ恋してるとか、付き合ってるとかじゃなくて…ちょっと気になって…恋とかよくわからないから…」
何だか恥ずかしすぎて、顔を合わせられない。
赤面しながらそっぽを向くと、嫌な視線を感じた。
顔を戻すと3人がニヤニヤ顔で見ていた。
「つまり気になる相手がいて、自分の気持ちが良くわからないと」
「初めての経験で、気持ちに判断がつかないと」
「甘酸っぱいですねぇ~」
3人が更にニヤニヤしている。
聞く相手を間違えたかもしれない。こうなったら早く会話を打ち切るしかない。
「そう言う事なら私に任せなさい。こう見えても恋愛のエキスパートよ」
自信満々にチューリさんが、胸を叩く。
仕方ない。ここまで来たら、乗りかかった舟だ。
「それで?アンタは相手に対して、どんな気持ちになるの?」
(私がケイジュに対して…)
頭の中で想像してみる。
「私は…」
「「「私は?」」」
「殴りたくなります」
「「「はぁ?」」」
私の言葉に3人の眼が点になる。
「笑顔を向けられたり、優しくされると…殴りたくなります」
「「「何で!?」」」
驚愕の目を向けられる。
(そんなに変な事言ったかな?)
「こう…背筋がぞわぞわして…居ても立っても居られないというか…」
そう言うと3人が顔を突き合わせて内緒話を始めた。
「これってどう思います?」
「ツンデレかしら」
「それともS?」
「う~ん」
少し離れた場所でコソコソしてる3人を眺めていたが、話し合いが済んだのかこちらに戻ってくる。
「まぁ…それも愛情表現の一種だと思うわ」
「変ですけどね」
「気の迷いかもしれませんしね」
「結局どっちなんですか」
曖昧な状態というのは落ち着かない、白黒はっきりさせたい。
「『好き』と思うなら好き、何とも思わないなら恋じゃないわよ」
そう言うと3人は、教室を飛び出していった。
何とも言えない気持ちのまま見送ってると、背中をつつかれた。
振り向くと王女が立っていた。
「あのねアイリス、恋する気持ちって人それぞれだと思うの~。だからアイリスがその人と接して、恋だと思うならそうだと思うわ」
「………」
言うだけ言うと王女は、そのまま帰り支度を始めた。
その夜、自室にて昼間の出来事を思い返す。
(王女にしてはまともな意見だったな)
確かに3人とも答えが違っていた。
なら私は私の答えを出そうと決意した。




