5.密偵見習いは限界を迎える
何とか間に合ったε-(´∀`*)ホッ
「おはようアイリス~…ってどうしたのその顔?」
朝、いつものように王女を迎えに行くと驚かれた。
「最近寝不足なので…すみません」
自分でも酷い顔だと思うが、どうしようもない。
「どこか具合が悪いの?それとも悩みが?」
王女が心配そうに顔を覗きこんでくる。
「夢見が悪くて…」
毎晩夢の中で馬鹿2人のクサイ台詞がリピートされて飛び起きている。しかも何故か言っているのがケイジュになっているのだ、ケイジュがいなくて良かったと本当に思う。
「何かあったら言ってね。お父様達にもよく眠れる方法を聞いてみるわ」
「ありがとうございます」
そのまま連れ立って校門をくぐると、近くを歩いていた男子生徒達が噂していた。
「おい聞いたか?最近ざまぁ族が断罪イベントしようとすると、どこからともなくボールや物が飛んできて酷い目に合うらしい」
「あぁ聞いた。それ以外にも計画してた奴が闇討ちされて、病院送りになったそうだ」
「それは初めて聞いたな。そうなのか?」
「あぁ。それでざまぁ族の実家で事が発覚して大騒ぎするらしい」
「そりゃぁ息子が襲われればなぁ。それで実家が怒って騒いでるのか」
「いや逆にバカやらかして婚約破棄にならずに済んで良かったと喜んでるらしい」
「あぁ~ケガでうやむやにしたのか」
「あぁ。それで逆に断罪される側の令嬢が怒ってるそうだ」
「え、何で令嬢が怒るんだ?冤罪着せられなくて済んだんだろ?」
「それが『バカと穏便に婚約破棄できるチャンスだったのに!』と悔しがってるらしい」
「なるほど~」
「まぁ結局双方話し合いで婚約破棄してるらしいが、すんなりとはいかなくて令嬢が憤慨してるそうだ」
「そっかぁ~、まぁ確かに向こうに非がある形で破棄できるのが1番だからな」
「ゴメン令嬢達」
「どうしたのアイリス、いきなり謝って」
呟くと隣にいた王女が聞こえたようで聞いてくる。
「いえちょっと、正当な行動の結果と第三者への影響を考えて」
「よくわからないわ~」
「バカによって受けた被害はバカで晴らすのが1番だと思ったのですが、予想外に第三者にまで影響がでているのでちょっと反省してました」
「よくわからないけど、受けた被害は加害者に責任を取ってもらった方がいいと思うの~」
「そうですね」
もっともだがそれが1番難しい。
猪男はともかく、変態はスパイとはいえ一応客人だ。殴ったら国際問題になる…というかすぐさまそれを口実に攻めこんでくるだろう、片方を殴らない以上もう一方も殴るわけにはいかない。
(仕方ない)
非常に気が進まないが、説得もしくは話を逸らすよう頑張ってみよう
下駄箱で靴を履き替えながら決意する。
「おぉ俺の女神様!」
「おぉ我が愛しの妖精よ!」
「………」
放課後どこからともなく現れ、口説きにかかるバカ2人。
早くも気が遠くなるが、何とか気力を奮い立たせる。
「あ、あの二人とも…口説くのも良いのですが、それよりも王女様の好みに合わせるのが大事なのではありませんか?」
2人が動きを止めてこちらを見る。
「フム…それもそうだな」
「王女様の好みの男性か…」
それぞれ考えこむ。
「そうそう。クサ…じゃなくて、言葉をかけて気を惹こうとするより、王女様の好みのタイプを聞いた方がいいんじゃないですか?」
「それもそうだな」
「王女様はどんな男性が好みなんですか?」
2人が王女に向き直る。
すると王女が少し考えこんだ後、口を開く。
「う~んそうねぇ…一緒にいて楽しい人かな」
「「なるほど~~」」
2人が納得したように何度も頷く。
これでクサイ台詞はやめて、好みの男性になるようにするだろう。
(良かった、これで解放される)
内心ホッとしてると、2人で腕組みしながらウンウンと頷いている。
「つまり王女様を楽しませる男という事か」
「私の妖精を笑わせられればいいんだな」
次の瞬間2人は互いにババッと距離を取ると、睨み合った。
「この勝負俺の勝ちだな!父上から伝授された必殺のギャグがある!」
「それを言うならこちらも代々王家に伝わる、伝統のギャグがある!」
「はぁ?」
口説き文句は止んだが、何故かギャグ勝負になった。
嫌な予感がする。
「ちょっと待…」
しかし止めるのは間に合わなかった。
「「ふとんが吹っ飛んだ!!!!」」
その瞬間、時間が止まり周囲が石化した。
春なのに冷たい一陣の風が吹き抜けていった。
(もうダメだ殺そう)
その晩男子寮と職員寮に謎の襲撃がありました。
学園はちょっと寒いです。
未遂に終わりました(・д・)チッ




