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密偵見習いに指令「ざまぁを阻止せよ!」  作者: 一発ウサギ
第2章.密偵見習いは進級する
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4.密偵見習いは欲求不満になる

始業式から1か月たった。

あれから変態は放課後毎日待ち伏せては王女を口説いている。

「君の瞳はダイヤモンド~」

「………」

(あぁ殴りたい)

護衛の立場上王女と行動しなければならないから、毎日鳥肌が立つ台詞を聞かされて勘弁してほしい。耳栓が切実に欲しいところだが、それでは不審な物音に気付きにくくなる。

今日も今日とて変態が花束抱えて王女の後をついてくる。

「可憐な君にこの花束を捧げよう」

そう言って花束を差し出す。

「あら~ありがとう~」

そう言って王女が受け取ろうとするのを止めると、そのまま間に割って入る。

「ダメです王女、知らない人から物を貰っちゃダメだと教わったでしょう?」

「いけない、そうだったわね」

「む、何だ君は。私は知らない仲じゃないぞ!?教師で未来の夫だ」

「夫になるとは限りません、最低でも婚約者になってから言って下さい」

「だから今口説いてるんだ。何の権利があって邪魔するんだ」

「護衛ですから。不審な人や物を近づけるわけにはいきませんので」

「私は不審じゃないぞ、教師で未来の夫だ」

「………」

この1か月ずっとこの堂々巡りである。

が、今日は違った。


「待て待て待て~~い」

砂埃を上げて誰かがこちらに向かって来た。

「王女様ご無事ですか?」

やって来たのは猪男だった。そのまま私と変態の間に割って入る。

「ケイトさんこんにちは~」

「久しぶりね猪男、何してたの」

「こんにちは王女様。あと平民女は猪言うな!生徒会は人手が足りなくて大忙しなんだ、お陰で王女様に中々会えなかった」

「なるほど」

猪男は挨拶するとすぐ変態に向き直る。

「何だ君は」

「俺はケイト=アグリモニー!王女様の……ええと何て言えばいいんだ?」

猪男がこちらに問いかける。

「知らないわよ」

護衛ではないし、もちろん恋人でも婚約者でも身内でもない。王女に片想い中なので自分から友人とは言いたくないだろう。

「ケイトさんは私の友人よ~~」

だがそんな事は空気読まない王女には関係ない。あっさり友人と言い切った。

「そ、そうですよね……ハァ」

とりあえず猪男も同意した……ため息ついてうなだれたけど。

「とりあえず友人というのは分かった、ならば友人の恋路を邪魔するな」

変態が口をはさんでくる。

「王女様はお前なんか何とも思ってないんだから、友人の恋路の邪魔にはならないだろう!」

「何を言うか!もう一か月も毎日口説いてたんだぞ、これで好意を持たれない筈がない!」

「それを言うなら俺は1年前から口説いてたぞ!」

猪男が反論する。

「アンタがいつ口説いたってのよ」

つい思った事を言ってしまった。どうも我慢が出来なくなってるらしい。

しかしそれが間違いだった。

「何だと!?いつも誠心誠意好意を伝えているだろう!」

猪男が振り向いて憤慨すると変態が追い打ちをかけてくる。

「ハッ!心にも残らない口説き文句だという事だろう。その点私は参考書があるからな」

そう言って古びた本を掲げる。

そこにはこう書かれていた。


『女性の口説き方100選~これで貴方も今日からモテモテ~』


「「…………」」


(誰だよこんなの書いたの)

つまりあの鳥肌ものの台詞はすべてこの本のせいだという事だ。

頭が痛くなってきた。思わず頭に手をやる。

知りたくないが、もし作者を見つけたらそいつも殴ろうと心に決める。


「フン!つまり本に書かれたのをそのまま言ってるだけか。オリジナリティーのない奴だ、こういうのは自分で考えて言うものだ」

猪男がバカにした顔で言うと変態がムキになった。

「何を!?そういうんなら勝負だ!どっちの口説き文句が彼女の心に届くか」

「受けて立つぞ!」

猪男もムキになる。


「君の瞳はきらめく宝石~」

「君の瞳に乾杯~」

「…………」

結局2人は寮につくまで王女にくっつきながら、ひたすらクサイ台詞を言い続けた。

(こいつらまとめてふっ飛ばしたい)

ここに爆薬が無いのがとても残念だった。



学園は今日も賑やかです。



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