2.密偵見習いはツッコむ
「おはようアイリス~」
「おはようございます王女」
冬休みが終わり、今日から新学期だ。
部屋まで王女を迎えに行き、そのまま連れ立って学園へ向かう。
「お休みあっという間だったわね。ちょっとだるい気もするけど、皆と会えるのは嬉しいわ」
「前半だけ賛成です」
「今日から2年生ね。クラス分けはどうなるのかしら?また一緒だと嬉しいわ」
「護衛なので間違いなく一緒です」
門をくぐるとすでにどのクラス分けが紙に張り出されていた。基本成績順なので多分1年の頃とそう変わらないだろう。
「あ、またAクラスだわ。チューリさん達も一緒だし幸先がいいわ」
「そうですか良かったですね。とりあえず早く教室に行きましょう」
腕をさする。春先はまだ寒い。
「そうね~」
私と王女は教室に向かった。
教室にはすでにかなりの生徒が来ておりざわついていた。
「ふぅ、もうこんな時間。遅刻ギリギリだったわね」
「間に合ってよかったですね」
ちなみに遅れたのは私の寝坊と王女の休みボケが原因だ。お互い様なので互いにその辺は言及しない。
「おはよう皆久しぶり~元気だった~?そろそろ始業式の時間だから講堂に移動してね~」
教室に入ってくるなりガーベラ先生が移動するよう言ってくる。
いきなりの指示に生徒から不満が上がる。
「先生来るなり急すぎですよ~」
「まだ鞄の中身出してないのに~」
「講堂寒いから事前にお手洗いに行きたかったのに~」
「ゴメンね、手違いで遅れ気味なの。どうせ今日は式だけで終わりだし、鞄はあとでいいからヨロシクね」
「まぁ仕方ないな」
「久しぶりだし、新入生もいるし、予想外のアクシデントとかあるだろう」
先生が両手を合わせて謝る。生徒達もそれ以上追求せず仕方ないなぁという感じで腰を上げる。
が、空気を読まない誰かさんが余計な一言を言う。
「あら~もしかして先生も休みボケなのかしら~~」
「……オホホホホ~~」
ガーベラ先生は笑いながらハイジャンプで教室を飛び出していった。
「あ、逃げた!」
「図星かよ!」
とりあえず生徒たちは移動した。
「新入生の皆さんこんにちは、私は学園長の…」
1年前と同じ挨拶が始まった。同じように居眠りをする。
が、1年前と違う事が起きた。
突然2人の男女が舞台の上に上がり、学園長からマイクを奪い取ったのだ。
(あぁそうだ忘れてた)
ここはざまぁが流行っている学園なのだ。
「ちょっと貴方達何するの!今は始業式の挨拶を…」
「年寄りの長話などどうでもいい、それより大事な話があるんだ!ノーラ、上がってこい!」
マイクを奪った男が1人の女生徒を指さしながら指名する。呼ばれた女生徒は周囲の注目の中、嫌そうに舞台に上がって行く。
「ノーラ!僕はお前との婚約を破棄し、この…」
「そうはいかん!」
声と同時に舞台の端からロープ?に摑まりながら勢いよくクーバー先生が飛びこんできた。
…が
ブチッ!
ドスン!
「うわっ!」
「ぎゃぁっ!」
ロープが細すぎたのか、クーバー先生が重すぎたのか、勢いがつきすぎたのか、ロープは途中で切れてクーバー先生は見事バカ2人の上に墜落した。
「「お、重い~~」」
「ハッハッハ、格好良くするつもりだったのにしまったなぁ」
何とか起き上がろうとするが、クーバー先生が重すぎて中々立ち上がれないようだ。
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
唖然とし過ぎて誰もツッコめない。
そんな中王女がポツリと言った。
「クーバー先生…どうして普通に登場できないのかしら?」
私含めた周囲の人間が一斉に頷いた。
とりあえずバカ2人とクーバー先生は始業式を中断させ、備品(あのロープ?は舞台の幕を上げ下げする紐だったらしい)を壊した事でお説教の為引っ張られていった。
始業式が終わり、教室に戻った。
後は特に予定もなく帰るだけだ。
「それでは王女帰りましょう」
「えぇ」
教室を出て下駄箱で靴を履き替え、外に出ると校門の辺りで何かがこちらに向かってくるのが見えた。
とっさに王女をかばって前に出る。ナイフを構えるのも忘れない。
やがて土煙を立てながらやって来た。
「おぉ我が愛しのスゥィートハニ~~」
白馬に乗った変態だった。
ご丁寧に童話に出てくる王子様そのものの格好だった。
「あら~?」
「迎えに来たよ~~我が愛馬で是非~~」
と言いながら私と王女の横を駆け抜けていった。
「是非~……って!止まらないぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
どうやら馬に乗ったものの上手く操縦できなくて、止まらないようだ。すれ違う瞬間涙目だったように見えた。
ドガシャ―――ン!!!!
振り返ると同時に凄まじい音がした。
見ると校舎の窓ガラスが割れており、側には泡を吹いたまま大の字で気絶している変態スパイと、先ほどの暴走が嘘のように落ち着いてる馬がいた。
「…………」
「あら~~大丈夫かしら~~?」
「………まぁ大丈夫でしょう」
とりあえず王女の返答にそう返しつつ、頭の中で色々混乱していた。
何で普通に来ないんだよとか、どこから白馬連れてきたんだろうとか、あんな衣装どこから入手したのかとか、いい年したおっさんがスゥィートハニーとか言うなよ気持ち悪いだろとか、乗馬できないんなら乗るなよとか、校舎の窓ガラスちゃんと弁償するんだろうなとか、色々言いたいがまず1番言いたいのは…
か〇ちゃ〇ンツはやめろ!!!!
密偵見習いは今日も頭が痛いです。
皆様よいお年を<(_ _)>




