74祭りの後で①(密偵見習いと腹黒)
ブックマークありがとうございます<(_ _)>今回は顔文字なしで
パーティが終わり後片付けも済んだ後、私は約束を果たすべくケイジュを連れて屋上に上がった。
寒いせいか誰もいない。
「ほらケイジュ見て、星が綺麗よ」
「………」
「スノーナイトは見れなくて残念だったけど、この星空も十分見る価値はあるわ」
「………」
「陳腐なセリフだけど本当に星が降ってきそうよ」
「………」
「はぁ~」
ため息をつく。さっきからずっとこの調子だ。
少し離れたところで体育座りで顔を伏せたままのケイジュを見やる。
こいつ結構打たれ弱いのよね。普段格好つけてる割に落ちこむと長いのだ。
(とにかく何とか浮上させないと)
もう1度ため息をつきながらケイジュに駆け寄って声をかける。
「さっさと起きなさいよBL野郎」
「誰がBLだ!」
ガバッとケイジュが顔を上げる。よし起きた。
そのまま離れる。
「BLでしょう?腹黒だからブラック(BLACK)で略してBL」
含み笑いでケイジュを見る。
からかわれたことに気づいたようだ、憮然とした顔でこっちを見る。
「~~っお前はこんな時くらい優しく声をかけようとか思わないのか?」
「優しく声をかけてる内に顔を上げなかったのはそっちでしょう」
そもそも私に慰め役など向いていない。寒い中延々と無駄に1人話し続けるなど色んな意味でサムいし御免だ。
会話を打ち切って手すりから星を眺めてると傍にケイジュがやって来た。
「はぁ…こんな予定じゃなかったのにな」
夜空を眺めながら独りごちる。
「まぁそうでしょうね」
こちらもされると聞いていた王女があんな形でざまぁを行うとは予定外だ。
「もう少しスマートにやる予定だったんだ」
「うん」
「天然と猪君をくっつけて穏便に婚約破棄させる予定だったんだ」
「うん」
お互い相手に顔を向けることなく会話を続ける。
「その方がお互い傷がつかないし、丸く収まる」
「うん」
「ダメだった時にも備えて色々と用意してたのに…」
「うん………………んん?」
(用意ってなんだ?)
ちょっと疑問に思ったがすぐに放棄する。
ものすごく聞かない方が良い気がした。
その後特に会話もなく無言で星を見ていると雪が降って来た。
「あ」
「スノーナイトの始まりね」
左手を伸ばして降って来た雪を受けとめる。
「冷たいわ」
「当たり前だろう、雪だぞ?何やってんだ」
ケイジュが呆れたように言う。
「スノークリスタルが拾えないかと思って」
するとケイジュがますます呆れた顔をする。
「そう簡単に拾えるものじゃないだろう?十数年に1回くらいしか見つけた話を聞かないぞ」
「まぁそうだけど…これくらいは期待してもいいんじゃない、タダだし」
お金や人が絡む話なら信じないが、これなら当てが外れてもガッカリするだけだ。
「小さな幸運くらいは信じてもいいかな」
「まぁそうだな」
ケイジュも苦笑いすると同じく手を伸ばす。
そのまま2人して数分後雪がやむまで手を伸ばし続けた。
「あった」
「俺もだ」
雪がやんだ後お互いの手を見ると手の中でうっすらと光る雪の結晶があった。
「まさか同年に2つも降るとはな」
「ラッキーね」
手の中の結晶をもう1度見る。
「見るのは初めてだけど綺麗ね」
「アクセサリーにしたがる気持ちが分かるな」
名残惜しいがこのまま見ていても仕方ない。ハンカチに包んでバッグにしまう。
「アクセサリーにするまでは見つからないようにしないとな」
「そうね」
夢のない話だが、幸運を求めて他人が見つけた結晶を奪おうとする者もいる。アクセサリーにしてしまえば窃盗だが、加工前ならただの雪だ。
「お前は何を願うんだ?」
不意にケイジュが聞いてくる。
「え?」
「願いがあるから欲しがったんだろう?」
不思議そうにケイジュが言う。
「いや、ただ何となく…手に入ったらいいなって…」
入らない可能性の方が高いしそこまでは考えてなかった。
「じゃあ手に入った今ならどうするんだ?」
「う、う~~ん」
真剣に悩む。
物欲なら色々あるがお金を出して買えるようなものばかりだ、十数年に1度の幸運を使うほどじゃない。かといって他の願いは思いつかない。
「うう~~~~ん」
「ふっ」
人が真剣に悩んでいるのにケイジュが噴き出す。思わず睨む。
「あぁ悪かった、お詫びに結晶は俺が預かってやるよ」
そう言って片手を出す。
「はぁ?笑われた挙句結晶を取り上げられるの!?全然お詫びになってないんだけど!」
むしろこっちが謝罪してるようだ。
「俺も持ってるのに取り上げる意味ないだろう?どうせアクセサリーに加工するんだし、俺のと一緒に加工してやるよ。もちろん費用もこっちが出す」
「………」
「願いは今のところないんだろう?出来たらちゃんと返すよ」
「………」
「ついでに卒業まで待つなら特典もつけて返してやる」
「卒業まで待つわ」
つい釣られてしまった。
でも仕方ない、女はおまけ付きに弱いのだ。
この時の結晶が卒業後思いがけない形と特典付きで返ってくる事を彼女はまだ知らない。
密偵見習いは今日も美味しい話に釣られてます。




