ゲリラ放送局 4:15
プルルルルゥウウウハアァアア!
グッドモォォォォォォォニィイイインングッッッ! ニィオ・トーキョーーーー!!
イェイイェイイェア!
元気してたかボーイズアンドガールズ!
そう、俺だ! もちろんわかるよな?
そんじょそこらのドラッグパックよりも刺激的で破滅的!
人生楽しんでるか? ちゃんと苦痛は味わってるか?
苦痛だらけ? そいつはいい!
苦痛に慣れたら本当の地獄の始まりだ!
おっと、こいつは酷な話題だったか? あひゃっひゃっひゃっ……(噎せる音)
あー、死ぬかと思った。
さてさてさてさて、今日も楽しいニュースの時間と行こうか。
まずは恒例、今日の天気から。
Aランクは年に100日はある真っ青な快晴。Bから下は今日もいつも通りの重酸性雨だ。
間違っても長時間、雨に身体を晒すなよ?
その素敵なボディが全部オシャカになっちまう。そうだろ?
続いて今日の特選ニュースだ。
耳の穴かっぽじっとけ。聞こえなくなったら悲しいだろう?
自警団の連中相手に暴れてたやつらは知ってるか?
俺のリスナーだ。当然知ってるよな?
そう、七人のいかれた連中だ。
あいつらの結末だが、もれなく大失敗だ。
ま、当然の結果だな。
ちなみに死体が残ってないヤツもいるらしいが、そいつの相手は“あの”シスターだ。
賢明なお前らなら、何が起こったか察したよな。
他も軒並み、死亡、死亡、死亡。
何人か逃げおおせたヤツもいるらしいが、果たして復讐する気はあるのかどうか。
もしあるなら独占取材させてほしいもんだね。
なんでこんなバカげた騒ぎを、それもたったの七人で起こしたのか知りたいもんだ。
しかもこの七人ってのが謎でな。
共通点がないのさ。なのに計ったように同じタイミングで襲撃をかけやがった。
不思議だろ?
十中八九、誰かが裏で糸を引いているはずなんだが、捉える前に遮断された。
一瞬だけだけどな。うちのサーバーにさえも影響を与えてきたんだよ、何かがな。
情報網を再構築したときには、たぶんすべてが終わったあとだった。
まったく、これじゃあ気軽にゲリラ放送できねぇじゃねえかってんだ。なぁ?
んで、終わってみれば自警団の圧勝。
壊された物品、人員、その他諸々合わせても、あいつらの最近の稼ぎに比べれば虫に食われた程度だろうさ。
やれやれ、奴らを半壊させるほどの大騒ぎに発展していたなら、めちゃくちゃ面白かったのに。
おっと……今の発言はMAへの敵対行為じゃないぜ? 聞いてても内緒にしててくれ。
というわけで楽しい祭りはすぐに終わっちまった。
これでまた自警団の規模がデカくなるだろうな。
喪った人員もすぐさま補充されるだろうぜ。
なんせ抗争は勝ったほうの箔になる。場合によっては伝説になる。
そういう組織に憧れを持つ連中はたくさんいるし、自分のその一部になりたいと思うボーイズ&ガールズがいるのが普通だ。
自警団がどこまで大きくなるのか俺は楽しみでしょうがない。
と、同時にそんな組織に喧嘩を売る大馬鹿野郎の出現も心待ちにしている。
今度はヘマせず、すべての情報をかっさらって見せるぜ。ヒャッハー!
んで、これはまあオマケの情報みたいなものだが、バカ騒ぎの最中にな、Aランクの住んでた一人の男がCランクへ墜落した。
そいつはAランク生まれ、Aランクの育ちの生粋だが、完璧なはずのセキュリティがぶっ壊された。小さな、蟻が通れるほどの穴だったらしいが、常日頃からAランクの綻びを探しているハイエナどもに見つかっちまってジ・エンド。
金も名誉も個人情報も好きなアダルト・ホログラムもお気に入りの悪事も全部取られて無事に墜落決定だ。
だが誰も助けの手を差し伸べなかった。どうしてかって?
そいつが悪党だったからさ。
Bランクやらの人間の利益を吸って生きてた吸血蠅が、結局自分も吸われて終わったっていう因果応報なお話さ。
どうだ? 少しはスッキリしたか?
ドランク酔いのクソみてぇな頭にはよく効く“良い話”だろう?
この世界は底辺。苦痛ばっかりの場所だ。
だがまあ、生きるだけなら楽しい場所だ。だろ?
それじゃあ続いては……あん? なに? 誰が来たって?
……おい、マジかよ!? なんであのジジイが!
1号! 起きろ! 時間だ! 撤収だ!
おっと、それじゃあお前ら、また会おうぜ!
GO!GO!GO!
──轟音と共にノイズが走る。
本日の放送は終わったようだ。




