Hey! Which shit do you prefer?
関連:Sorry. I feel bad about it.
「こんなところでなにやってたんだ、運び屋」
山田フォルンが言った。
フォルンの自室だった。
簡易ベッドの上に、大滝レンジがいた。
額には脂汗が浮いている。
眉間にシワが寄り、痛みに唸っている。
「答えられないほど痛いか、運び屋」
「あぐぁああっ!!」
レッド・コートに撃たれて引き千切れかけた左足が縫合されていく。
手術しているのはフォルンだ。
手術着など着ていない。
フォルンは着の身着のまま、なんならドラッグパックを口に咥えたまま、レンジの傷口を慣れた手つきで縫い付けていく。
その痛みは凄まじい。
なにせ麻酔のひとつさえ打ってもらえないのだ。
麻酔のような効果が期待できるドラッグパックを咥えさせられたのだが、慢性的な中毒であるレンジには効果が薄かった。
一縫いされるごとに傷口に火箸を突っ込まれているみたいな感覚だった。
これで効果があるほうだったら最悪だ。
「そういえば、前に来たとき、もうひとりの運び屋は殺されたようだな。まあ、よくあることだ」
フォルンは他愛のない雑談みたいに言って、生理食塩水をぶっかけて血を洗い流し視界を確保する。
その液体をかけられるという行為すら、レンジには拷問みたいに感じた。
何も情報など持っていないのに、なんでも良いから話して許してほしかった。
「あぁっ……親友だった、たったひとりの……ぐぅぅっ!!」
「そうか。残念だな。だが良かったな」
「な、なにが……いっ……! ぎぁっ……!!」
フォルンの技術は神業的だった。
引き千切れた神経や肉が繋ぎ合わせられていく。
物理的に失くなってしまった部位は、筋肉代替品や神経接続代替品と呼ばれるものと交換されていった。
「仇は俺が殺した。恨むべき相手はとっくに地獄行きだ」
「ぐっ……あぁあっ……!」
足首と太ももが固定されているため、左足は動かないが、他の四肢が痛みに引き攣った。
まな板に乗せられた活きの良い魚類みたいに、ベッドの上でのたうち回る。
「だからお前は仕事に専念できる。雑用だがな」
「し、仕事って……なんの……」
額をベッドに押さえつけられ、麻酔効果のさらに強いドラッグパックを咥えさせられ、吸わされる。
頭がぼんやりと霞がかっていく。
常人には使えない。
ドラッグパックに身体が蝕まれたような人間に効く代物だ。
モルヒネに近い効能を持つモノだった。
「お前には仇を討つとか、仕事なんかもない。その上、ルージュ・ナンバーズに狙われている。奴ら、最近俺の商品をよく奪うんだ。邪魔だからな、お前にはその掃除を手伝ってもらう。それが仕事だ」
「そんな、こと……」
急に言われても、すぐに返事などできるわけがない。
だが反論しようにも、舌が回らない。声が出ない。ドラッグパックのせいだ。
「お前に拒否権はない。ゴミ掃除代と手術代、即金で払えるなら話は別だがな」
「……」
返事ができない。
穴に落ちていくみたいに、意識が己の手を離れていく感覚。
「なに、心配するな。どうせクソみたいな人生だっただろ。俺が多少はマシなクソにしてやるよ」
結局、汚物であることには変わりないのか。
そんなことを頭の片隅に思いながら、レンジは、今度こそ意識を手放すのだった。




