一人目の有力な人材
第三章 仲間探しを手伝って……
ここは、この街のほぼ中心にある冒険者ギルド。結局帰るとこがなく、ギルドに戻ってきた。
―――いや、走り出して数秒で姉に呼び止められた。
悲しい現実を異世界に来てまで実感した俺は、ギルドの端の席に座り、女神様のおかげで、この世界に詳しくなっていた姉に色々聞いていた。
この国の名前は『シャーロット』というらしい。その中にあるこの町は『カロライン』といい、シャーロット国の首都みたいだ。
結構大きめの国らしく、冒険者の強者も結構いるらしい。
さらに驚いたのが、この世界の冒険者で一番レベルが高い人のレベルが二十だと受付の人に言われていたようで、さすがの非オタの姉もレベルの上がりにくさに驚いたと言っていた。
そこで、効率よくステータスを上げたり、レベルを上げれるかをさっきの受付のお姉さんに聞くと、『パーティを組むのが一番効率がいいですよ。……今が辛くても決してくじけてはいけませんよ!応援いていますから!』と言われた。
…………とゆうことで俺たち二人は、パーティを組むために掲示板にパーティ募集の貼り紙出して待機していた。
姉の知っていることをほぼ全て喋らせて、一時間程たっただろうか、……誰も来ない。
そりゃそうだ。この前買って来た家庭用ゲームのオンラインゲーで、ギルドで仲間募集しても全く誰も来なかった。
……家庭用………家庭……家……ってことで思い出しました。今日の泊まる家が無いことに。
「ね、ねーちゃん。今思ったんだけど、今日の泊まるとこどうすんの?ついでに夕飯も無いんじゃねぇの?」
「あ〜たしかにそうだわ〜。今からでもモンスター狩りに行く?」
「え?」
「え?どしたの?」
すっかり忘れてた。ここは剣と魔法の世界だ。冒険者はモンスターを狩って生計を立てる。これが普通じゃないか。
初期装備には腰に一本、ナイフが付いている。せっかくこの街にやって来たのだ。戦わずして何になる。
「よし!じゃあ一狩り行こうぜ!」
***
「ぎゃあああああああああああああああああぁぁぁ!!来んな来んな!!こっちに来んなああああああああぁぁぁ!ねーちゃああああん!!!」
「待ってーー!遠くに行かないでー!ああーミナーー!!まってーーー!!」
そんなこんなで街の外に来た俺たちは、只今、くそでかいアリに襲われていた。
……あ、襲われているのは俺だけだった。
「あああああああああああ!!やばいいいいい!追いつかれるーーーー!!イチかバチかだ!これでもくらえええええええ!!……………え当たった」
俺が投げたナイフが、アリの脚に当たり左前脚を失わせた。
「ってまだ生きてたあああああああああ!」
のだが、一度は倒れこんだものの、残りの脚でなんとか立ち上がり、また追いかけられだした。
「うわあああああああああ!!もうナイフ無くなったよおおおおおおおお!」
「まってーー!今助けるから!『ユニークスキル:コピー』ッッッ!!!」
すると、ねーちゃんの周りに魔法陣やらなんやらが出てきた。
「…………」
「………………ねぇー、ミナ。このアリなんもスキル持ってないよ?」
「え?」
瞬間、パクッ。
「あ、ミナ?……ミナー!!」
「うわあああああああ!くわれるううううううううううう!」
「どどっ、どうしたらいいの!」
「いいいいいいややややあああああああああ!!」
「『ライジングセイバー』ッッッ―――!!!!」
突然、空から一本の閃光が落ちてくる。途端に、俺を捕食中のアリが真っ二つに分かれる。
すると、俺の目の前で女の子の声がした。それもとても透き通った声だった。
「あ、あのぉ、大丈夫ですか?」
むくりと顔を上げ、辺りを見回す。大丈夫だ。目は正常だ。世界が明るい。
「あ、はい、大丈夫です。助けていただきありがとうございま……ッッッ―――!!」
そこに立っていたのは、フード付きのマントを羽織っている、おしとやかでかわいらしい女の子だ。黒髪でショートよりかは少し長く、左右の髪を赤いリボンで留めている。歳は……中学生くらいだろうか。身長もそんなに高くなく、かと言って別に低くもない。目の色は黒っぽい赤色をしている。
「それは、あのジャイアントの口の中に入ったからですよ。家に帰ったらまずお風呂に入ったほうがいいですよ」
「……ご丁寧にありがとうございます。……でも、家も風呂もないんですよね。今日冒険者になったばっかりでして……」
俺が言うやその女の子は首を横に傾げ、きょとんとした顔で再び話し出す。
「じ、じゃあ、街の銭湯にすぐ行った方がいいですよ」
「……銭湯……」
「……どうかなさいましたか?」
「え、えぇとですねぇ。僕達一文無しでして、今日の夕飯分のお金を集めに来たんですけど……この有様でして…………それでぇ……あのぉ……助けてもらった上で図々しいですが銭湯代だけでいいので貸していただけないでしょうか!」
俺は、地面にむかって思いっきり完璧で、パーフェクトで、最高のDOGEZAをくりだした。
「ふぅ~。いい湯だったぜ~」
姉と……そうだ、名前聞いてなかった。―――改めて、姉と俺を助けてくれた女の子は、二人でまだ風呂に入っている。
ちなみに服はこの世界の魔法により一瞬で綺麗になりました。
しかし、銭湯から出ると、無性に瓶に入ったフルーツ牛乳が飲みたくなる。
だが、残念ながら今は、うま〇棒を買うお金すら持っていない。
そんなこんなで日がくれていき、もう少しで空が黒く染まる時間帯。「綺麗だなー」と、思いながらこの世界に来た時拾った緑色の石を眺めていると、やっと姉と一緒にあの女の子が出てきた。
「あ、いたいた~ミナ~!ごめんごめん結構長風呂しちゃった~」
「お~長かったな~結構な長風呂だな」
すると、姉がちょこちょこと俺の近くに寄ってきて耳元でささやいた。
「実はね、システィーナちゃんずっとソロで冒険者やってるみたいでね。パーティに入らないか色々聞いてみたんだけど、なかなか組むと言ってくれなくてね。ずっと粘ってたの」
「うん。……うん?システィーナちゃん?」
「あ、そっか。ミナはまだ自己紹介されてなかったのか。……えっとね~彼女の名前はシスティーナ・レムミアちゃんっていうの。結構人見知りするからあんまりがつがついかない様にね」
最後の文は俺にしか聞こえないようにボソッと言ってきた。
「あぁ。分かった。……んで、パーティには入ってくれるのか?」
「……………ダメだった」
「……まぁそうだよな」
そりゃあ、こんな初心者パーティなんか入りたいっていうやついねぇだろうな。
俺はゆっくりシスティーナに近ずく。
「システィーナさんですよね。本当にこのたびはありがとうございました。命を救ってもらったうえに銭湯も奢ってもらって……今度会ったときは何か奢らせてください。」
相変わらずフードを被ったままであまり表情は見えない。
「い、いえ!たまたま通りすがっただけであって、そんなたいそうなことをしたわけでは……」
「そんなことないですよ!あなたは二人の命を救ったんですよ。このご恩はいつか絶対返しますので、それじゃあまたどこかで」
彼女は無言でペコリと礼をしてくれた。
そして、俺たちはまた無一文の旅に出ていく。
と、その時だった。
『緊急事態発生!緊急事態発生!ただちにユニークスキルを持ってる方レベルが高い方、それと遠距離攻撃が使える方は特に集まってください!場所は隣の街の「壊滅都市」です!』
なんだよ壊滅都市って、やたらと物騒じゃねぇかよ!
「ユニークスキル持ちは集まれって、俺たちも行った方がいいのかな」
「いいい、行ったほうがいいのかな?」
まぁ、俺たちが行ったところで何かが変わるわけでもないと思うけど……
『それと、なるべく三人以上のパーティを組んで集まってください!なお、敵は空を飛ぶので、遠距離が攻撃の中心となることが予測されます。できるだけたくさんの人数を集めてください!お願いします!』
「……いや~俺たちが行ってもなんも活躍できね」
『なお、報酬はたっぷり支払わさせてもらうのでご参加宜しくお願いします』
「よっしゃー!ねーちゃん今すぐ行くぞ!あと一人強くて一人でいるやつ探すぞ!早く!」
勢いで手を引っ張ってやると、姉の顔がニマニマしているのだが気にしないでおこう。
「そーだ!一人ならシスティーナちゃんがひとりじゃない?今から誘いに行こうよ!」
なんか少しかわいそうな言い方だな。
でも今は。
「そっか、まだここら辺にいるかも急いで探せばみつけられるかも……」
すると途端に猛スピードで女の子が走り去っていく。
……ん?
微かにだが、その女の子からは甘いシャンプーの香りがした……?ねーちゃんと同じ匂い?
そんな冷静に分析をしていると、ねーちゃんがびくびくと小刻みに揺れ、ゆっくりとこっちを向いた。
「ミ、ミナ。今の、多分システィーナちゃんだよ……」
「ほんとに?とゆうか、よく今の見えたな。すげー動体視力だな」
もしかしたらステータスと関係があるのかもしれないな。
「ミナ……あんな子と一緒にいたら私たち、ものすごい足手まといだよ」
「………………」
「今日は野宿じゃダメかな?……私は野宿でいいから、いったん今日だけはもう休もうよ」
「………………」
「ミナ?」
「追いかける……」
あれ、目の前がぐるぐる回って……
「聞いてた?きっ…私た………ゃあ足手ま………なるだ…だと思…んだけど……」
待って、声も聞こえなくなって……
「なん……ナ、ま……じんみたいな…出て………よ?
「いいからついてこい」
ん?これ俺の声?
「ミナト?いっ……ど…………?」
やべぇ、色もなくなってきた……
「いいからつかまれ、唯」
今俺っておんぶする体制になっているのか?
何がどうなっているのか分からない。
視界がどんどん狭まっていく。
あ……もう何も見えな……
「じゃあ、いっちょいきますか!」
俺の声が聞こえた途端に自分の身体が勝手に動いた。それも今まで動いたことのない速さで。