1・どんぐり
3作目!前作の『クモの世界で』に続き、ドングリver.です。
ころころころ・・・
ボクは転がっている
ころころころ・・・
ボクは、坂道を
ころころころ・・・
重力に身をまかせて
ころころころ・・・
からだのところどころが痛いけど
ころころころ・・・
ころころころ・・・
一粒のドングリは目指す
ころころと転がって
いつか
新しい世界に出会うため
ひたすら地面を
転がってゆく
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「オレ達は、いくぜ!」
「おう!」
そういって、ボクの仲間達は、旅立っていった。
「ワタシも!」
「ねぇ、行こう!イチもさぁ」
みんなが、行ってしまう。
「・・・いいよ。ボクは」
いかないで、なんて、言えない。
「ホントにいいのか?じゃあ、オレは行くぜ」
「あぁ。行ってらっしゃい」
そして、残ったのは、ボクだけ。
幼馴染のココも行ってしまい。
兄のハジメも、親友のカズも。
ボクも、そろそろ、行こうかな。
ボクも旅立たなければならない。
みんなの待つ、外の世界へ。
新しい世界へ。
↓
・・・でも。
↓
「・・・やっぱ、無理っ!!」
全身鳥肌。ガチガチだ。
「・・・怖いよ、こんな高いとこから落ちるとか!」
ここは、コナラの木。よりにもよって、その頂上。ボクは運悪く、ここに生まれてしまった。
木の一番上。だから、ボクの名前は『イチ』。
「なんか、さっき、かっこいいこと言って、文字数かせいだけど、やっぱムリ~~~っ!!!!」
全身真っ青。こげ茶色の肌が一気に青緑に、へんしーん。
「ここから飛び降りるとか、気がくるってんじゃねっ!?クレイジーだよ!」
そう。
「無理、ムリ、むりぃぃぃ~~~!!」
「・・・だって、怖いもん!!」
そう。ボクは、極度の高所恐怖症なんだ!
「こんなとこから落ちたら死ぬよ!?間違いなく!」
みんな行ってしまったのに。
ボクだけが、行けない。
深い意味はない。
ぼくは、ただ、ここから飛び降りるなんて自殺行為、したくないだけなんだ!
このままでは、何も進まない。
なら、いっそのこと――――――
「死んでやるぅ!」
ボクは、飛び降りた。
木の枝から飛び降りた。
下へ
下へと。
落ちて行く。
あぁ、お花畑が・・・目の前に・・・。
そして、
ゴツンッ!
地面にぶつかる。
からの、
ころころころ・・・
転がっていく。ドングリのイチは、転がって行く。
ころころころ・・・・・・と。