表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドングリの世界で  作者: 梨野夏
1/13

0・序奏 1(イチ)

 勝手に、0話作りました。

最初に読んでもいいですし、1話から読んでもいいですよ。

『序奏 2』もあります。・・・多分。

 僕は、今、上を見上げている。

月が、(かがや)く夜。きれいな満月だ。


 そこには、僕と長老(ちょうろう)がいた。




そして、長老は、言う。


「イチや、頑張(がんば)るんだ。」


しかし、僕は、首を横に()る。


「無理だ。僕には」


それでも、長老は話し続ける。


「お前さんなら、できる」


でも、僕は否定(ひてい)する。


「できない。どんなに頑張っても、僕には無理だ」


 僕は、イチ。

 この木の、一番(いちばん)()(みの)ったドングリ。

 一番(いちばん)()だから、イチ。


「お前は、わしの名前を(さず)けた者として、何としてでも生き残ってほしいのじゃ」


 長老の名前は、『イチ』。

 僕と同じ名前だ。


「長老は、立派(りっぱ)だから、そんなことを言えるんだ!」


長老は、昔、一番最初に()みの()に実ったから、イチという名前が付けられたらしい。


「わしだって昔は、(こわ)かったもんじゃ」


長老は言う。そう言う長老は、とても堂々としている。


「お前さんが思っているほど、そんなに、わしは立派じゃないのじゃ」


それに対して、僕は言い返す。


「いえ、長老は、とても、お(えら)いお(かた)です!」


「ならば、お前さんも行くんじゃ!!」


長老は、叫ぶ。


「わしを見習うんじゃ」


 でも、僕は・・・。


「ですが・・・」


長老は、うなずく。


「ほら、イチや。これは、わしの命令じゃ。”とても(えら)いお(かた)”からの、命令じゃ」


僕は・・・・。


「でも・・・」


長老は、もう一度言う。


「いや、わしからの、お願いじゃ」


長老は、懇願(こんがん)する。


「イチも、そろそろ、わし(ばな)れせんとなぁ」


そう(つぶや)き、微笑(ほほえむ)む。


「・・・・・・はい、長老」


 僕は、そう言って、飛び出した。



 外の世界へ。

 新たなる世界へ。

 未知なる世界へ。



 旅立っていった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「これで、全員が、行ってしまった」


残された、イチは、そう(つぶや)き。月を見上げる。


「せめて、一度だけでも、呼ばれたかったのぅ」


イチは、空を見上げる。


「あの子に」


涙が、一筋(ひとすじ)(ほお)をつたう。



「『イチ』と・・・」



=========================


 ドングリが


 旅立った その満月の夜に


 その物語は はじまる



 世界は 広く 狭い


 ひとつぶのドングリは


 その世界の ほんの一部(いちぶ)


 かけまわる


 それが ドングリの世界



 取り残された


 ドングリの木は


 月を見上げ


 つぶやくのだった・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ