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移動中です そのご

ポチリと拍手等、ありがとうございます。

遅くなって申し訳ありません。

 朝から賑やかな精霊達を引き連れ、マナは昨夜、イクシオンやアルフレッドと別れたポイントへと転移する。

 朝食の途中だったのだろう。たき火を囲んで木の器を持っていた二人が半分腰を浮かせた状態でそこに居た。


「おはよう。イクス、アル」

「あ、ああ……おは、よう……?」

「おはようございます……?」


 二人は腰を浮かせた体勢のままポカンとマナの方を見ている。

 転移魔法にびっくりした訳ではなく――マナの周りに居る色とりどりの精霊達に驚いているようだ。

 ちなみに。

 挨拶の概念がなかったのは精霊達だけで、人間は普通に挨拶をする。


『おはよ~』

「せ、精霊様方も、おはようございます」

「おはよう……」


 精霊達の挨拶に対し、条件反射というか、脊髄反射というか、ポカンとしながらも挨拶を返す二人。

 マナに同行するのを許された。

 ただそれだけの理由でこの二人に害はないと判断した精霊達は、至って普通にフレンドリー。

 例え『見える』精霊術士でも、初対面では全ての精霊に警戒されると知っているアルフレッドは、初めて顔を合わせた本来なら『見えない』精霊達のその態度にもびっくりするしかない。

 最も。精霊達にそんな人間側の機微など関係ないので、挨拶を返された事に満足そうに笑い、コーがマナからポーンと離れた。


「さて! この森に居る同族達! 名前を付けるから集まれ!」


 いや、ここに集めるなよ!?


 誰かがツッコミを入れる前に、コーの言葉が聞こえた多種多様な精霊達が嬉しそうに集まってくる。あっという間に……周囲は精霊だらけ。


「マナ! 名付けは任せて!」

「先へ進んで良いよ」

「何かあれば、いつでも呼んでね」

「マナ。眷属達を頼む」


 エン、スイ、フウ、ノムがマナに笑い掛け、既に同族に名付けを始めているコーに続く。

 カラフルな精霊達の集団を眺め、マナは苦笑するしかない。頼もしいと言えばいいのか、気が早いと言えばいいのか、微妙に悩む。


「コウで!」

「エーンな!」

「スーはどうかしら?」

「フゥかなぁ」

「ふーむ……ノームかの」


 ……ネーミングセンスは期待できないようだ。

 名付けの基準は最初にマナが付けた名前? 別にそこから離れたって問題ないだろうに、何故こだわるのやら。

 名前表示をオンにしてみると、『コーコウ』、『エンエーン』、『スイスー』、『フウフゥ』、『ノムノーム』と表示される。

 うん、ダメだ。ネーミングセンスについて考えてはいけない。

 マナはまたしてもスルースキルを発動し、全てを見なかった事にした。


「イクスもアルも、それって朝ご飯?」

「あ、はい」

「へー」


 どれどれ、とマナは器の中を覗き込んでみる。

 木を丸くくり抜いただけのシンプルな器の中には……パン粥? 一口大のパンの様な物がスープでふやけて膨張していた。


「これって……何?」

「スープパンです。野宿では一般的な食べ物ですよ」


 何の捻りもない食べ物の名前。もうそれだけでどんな物か分かる。


「このスープは……」

「塩味だな」

「そう……」


 塩味のスープにパンを入れるという事? そのパンはもしや、カンパンとかそんな感じ?


「……美味しいの?」

「味は二の次だな。腹に溜まればいい」


 つまり、美味い物ではない、と。

 マナはうーんと悩み、そういえばここに来る前に自分達も朝ご飯を食べ、作り過ぎた野菜スープがアイテムボックスに入っていたと思い出す。

 味気ない食事じゃこの先も大変だろうと、マナ御自慢の野菜入りスープを提供する事に決め、アイテムボックスから野菜スープの入った鍋を取り出し、お玉で軽く掬ってイクシオンとアルフレッドの器へ入れる。

 それだけだと塩気が強い――元は塩スープだ――から、軽く黒こしょうをふって味の調整は忘れない。


「これでどう?」


 マナが食べてみてと勧めるので、イクシオンとアルフレッドは躊躇いなく口にする。昨日のサンドイッチを思い出せば、躊躇う理由等ない。


「ん? ピリッとして美味いな」

「はい。野菜の優しい味がパンに絡まり美味しいです」


 良かった。好評のようだ。

 マナは満足そうに頷くと、2人が食事を終えるのを待つ間、食後のティータイムと洒落こむ。まあ、飲むのは紅茶じゃなくて日本茶だが。付け合わせのおやつは――流石にやめておこう。

 急須に魔法で茶葉とお湯を入れ、少し蒸らしてからマイ湯呑みに注ぐ。あ~ホッとするなぁ。

 マナの隣では、同じく食後のお茶が習慣になっているクー、ルルーがマイ湯呑みとマイ水入れにお茶を注いでもらい、ゆっくり楽しんでいる。ドリーとサーシュは他の精霊達の名付けを楽しそうに見守っていた。


「マナさん。お待たせしました」


 のんびり待っていたマナにアルフレッドが声を掛けてきた。

 マナが顔を上げると既に出発の準備は整っており、アルフレッドもイクシオンも馬の手綱を引いている。


「うん。じゃあ、行こっか!」


 マナは出ていた湯呑み等を一気に洗浄、アイテムボックスに片付けると、すたっと立ち上がり手に箒を出現させる。

 マナが箒に跨るのに合わせ、イクシオンとアルフレッドが馬に乗り、クーとサーシュは浮かび上がってマナの隣へ。ルルーはマナの影に潜り込み、ドリーはマナの箒の柄の上。


「コー! エン! スイ! フウ! ノム! 後は宜しくね!!」

『いってらっしゃーい』


 マナの言葉に精霊達が一斉に元気よく答え、マナは笑いながら浮かび上がる。

 ではでは! ダジゲートの王都までの旅2日目。出発進行!!




 ――――とは言うものの。これ以降は特に何も起きず、マナ達は退屈な空の旅を続ける事となる。

 まあ、平和な事は良い事だよね~。どうせこの後、大変だろうし……と自分達を慰めつつ、野宿の時は塔へ帰り、町に泊まる時はイクシオンの驕りで宿泊するという自由な旅を続け。(勿論、お礼に食事は提供してます)


「いい加減、厭きたっ!!」


 と精霊達が駄々をこね始めた頃、漸く、ダジゲートの王都に到着したのだった。

 ちなみに、ダジゲートの王都の名前はそのまま『ダジゲート』。覚えやすくてイイね!

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