6)それはアンタだけで終わらせてくれ
正直に言わせてもらう。
他人の性癖なんてどうでもいい。
やれSMだ、やれ巨乳貧乳好きだ、やれロリショタだ、やれ二次元専門だ、やれ薔薇だ百合だ……。
(ご不快に思われた方、大変申し訳ございません) m(- -)m
誰が何を愛好しようが、法律を犯したり人としてやっちゃいけない一線を越えなければ、趣味だからと言い切ることは出来ると思う。
世間様からの冷えた目線を受けようともな。
だから、あえて言う。
子供に欲情するな、巻き込むな、オッサン。
そんなに犯罪者の仲間入りをしたいのか。
小学校低学年当時、通っていたスイミングスクール。
ここにも、魔物が潜んでいた。
さて、ご存知だろうか、競泳用水着の形状を。
レディースは大体ワンピース型が主流だが、男性用は結構いろいろある。
スパッツ型、ボックス型、最近では某メーカーのおかげでスウェット型も主流になってきているが、甘い甘い。
当時そこまで形状種類があったかどうかはさておいて。
そのスイミングスクールの男性用は皆ビキニ型。
そう、面白半分にブーメランパンツなどとも言われる、あれ。
子供も大人も、皆一律に同じメーカーで同じロゴの入ったユニフォーム。
色も微妙に赤黒い紫。
誰だよ、あの紙一重なデザイン選んだやつ……と、今更だが突っ込みいれたい。
そして、水泳選手に大抵共通する体型。
肩周り、足周りの筋肉がすごいのだ。
私が通っていたスイミングスクールのコーチ陣は、男女多彩だった。
多彩だが、共通して強烈なスパルタンが多かった。
練習がスパルタな分、目標が達成できたときは、自分のことのようにものすごく喜んでくれた。
このスイミングスクールはレッスン時間終了後、サウナ室にその時間帯にプールを使用した者全員で入り10分ほど体を温めながら反省会をする。
お叱りは随時だが、お褒めの言葉は大体ここで。
なんつ~かね、まぁ、今思えば、それはどうよ?と言いたくなる様なスキンシップ過剰な喜び方をするんだな。
天井高くないのに胴上げ万歳、頭抱えてぐりぐりとイイコイイコ、叱咤激励とお尻を叩く……。
いや、女性コーチがやるならまだいいよ。
男性コーチもやるんだな、これが。
スイミングスクールだから、当然コーチ陣も水着で。
水分でテカテカしたムッキムキ逆三角体型ブーメランパンツ装備のオッサンに、胴上げやらハグされる子供たち。
それも1度のお褒めに一回ならず何回も。
ギュウギュウムギュムギュと。
もう、ある種トラウマ。
どうでもいいことですが、おかげ様で、ワタクシ、所謂筋肉隆々マッチョさんが、生理的に受け付けません。
某筋肉自慢芸人やレスラーさん、ボディビルダーさんなどの映像や某清涼飲料水のCMを見た瞬間にウゲェとなります。
ビルダーさんにいたっては、その筋肉に対する趣旨思考が理解できません。
CMで某有名パチスロキャラクターが歯をきらりとさせた瞬間壮絶に拒絶反応がでて、テレビ壊しそうになりました。
あ、でも某北斗●拳の伝承者の方々や、某コーラで動く変態ザイボーグはなぜか許せます。(←なぜ)
で、話を戻して。
とある日の、水泳後のサウナ反省会。
最初は、ぐりぐりと頭を撫でくりまわされるだけだった。
他のコーチにも手加減遠慮なくぐりんぐりんとされていたから最初は気にしていなかったが、その男性コーチに撫でられることが多いことにある日気がついた。
そして、毎回、レッスン後のサウナ反省会になると、そのコーチがいつも隣、または近くにいた。
自分の担当コーチでもなく、そのコーチに教わった覚えも無く。
何気なく他の女性コーチの側に移動したりしても、気がつけば近くにいる。
気味悪い……。
そう思う私はおかしいだろうか?
その当時ですでに男性恐怖症になっていた自分にとっては一大事で、とりあえずさりげなく逃げることを選んだ。
その日、私は朝から小児喘息の兆候が出ていた。
だが、当時小児喘息の”し”の字すら認識していなかった私は(今考えるとどれだけ危機感の無い子供なんだ、私は……)今日はちょっと息苦しいなぁ、息が切れるなぁとしか考えておらず、ゼーハーいいながら今日も泳ぐぞ~!と家を出たらしい。
まず止めろよ、親。
そんな状態で水泳なんてさせるなよ、コーチ陣。
と、あの当時を分析して突っ込みたい私。
止めてくれたら、違う結末だったはずなのに。
月に一度の記録会で、この日に出した記録でランククラスが分けられる。
いつもの調子の出ない原因は何だと、小児喘息なんて念頭に無い私は無我夢中で泳いだ。
そしたら、なぜかいつもより速い記録がでた。
サウナ反省会で、一人ずつ泳いだ記録タイムに対してコメントを付けられる。
叱咤激励万歳三唱、いい記録には通例のムギュムギュが来る。
今回は、記録が出せた私もそのムギュムギュの対象だった。
コーチのなでなでギュウギュウ、その中で、むぎゅっと後から抱きかかえられた。
あのコーチだった。
そして、人が集まっているドサクサに紛れ、右手を取られつかまされた生暖かい物体と、耳元にかかる荒い息。
それがなにかと確認することもなく、その状況だけで十分に恐怖を感じる。
物体が何であるかを知る前に、荒い息はどこかに記憶があった。
そして、フラッシュバック。
そういう息をしていた『お兄ちゃん』に、押さえつけられたことを頭の隅で思い出した。
私は、その場で過呼吸起こして倒れた、らしい。
『らしい』というのは、そこから先の記憶が無い上、小児喘息が見事悪化し数日意識が朦朧としていたからだが。
そして、何とか回復して翌週、私は小学低学年にしては上級のランクへクラスが変更になることが発表された。
同じクラスの子たちに、すごいね、やったね、頑張れ、と声かけられたが、そんなことはどうでもよかった。
それよりも、もっと重大な事がある。
そう、その上級コースのコーチは、あのコーチだった。
だから
翌日、「月経で水に入れない日が多い」「喘息がキツい」と理由に、もう上のランクには行かないと、私は逃げるようにスイミングスクールを辞めた。
ずっとお世話になっていた女性コーチに「せっかくいい記録を出せるようになったのだから」と引き止められたが、そんなのどうでもいい。
あのコーチの近くになんか、絶対行きたくない。
両親にも、引き止めてくれた女性コーチにも、あのコーチが怖いから逃げる、とはやっぱり言えなかった。
言ったら言ったで、どうせ『叱られる』『スパルタ』などの意味でしか『怖い』と受け取られないだろうし。
自分の『恐怖』を、理解してもらえるとは思っていなかった。
あの時、何があったかを洗いざらい吐いてしまえば、また何かが変わっていただろうか……。
過去に自分の身に何があったか、なぜ男性恐怖症だったのか、全部全部吐き出せばよかったのか。
今さら何を言ってもしょうがないが、未だ私はその問いに答えを出せない。
誰かに吐き出すよりも先に、人に『知られる』こと、好奇の目でじろじろ見られることが耐えられなかった。
嗚呼、『わかってくれ』とは言わないが。(←歳がばれる、歳が)
私が悪いの?
私が、何か悪いことしたのか?
なぁ?
なんでこうなるの?
どうして?
何でこんなに怖い目にあわなくちゃいけないの?
何度、答えの返ってこない問いを自分自身に投げかけたか。
己の恐怖を、正しく他人に伝えることができる子供なんて、そういない。
そして、己の身に降りかかった恐怖から逃げようと、目をそらすのだ。
それがどれだけ辛いことか、苦しいことか。
時に、誰かの性癖は、そのまた誰か『他人』の恐怖に繋がることもある。
一概に、嗜好をどうのこうのとは言わないし、言えないが、だからと言って、他人を、しかもまだ何も知らない子供を巻き込むな。
大人として、それ以前に人として、せめてそれくらいは考えて欲しい。