1/8
序詩
どれだけ忘れ去られようとも、どれだけ時が流れようとも、私はただ進む
それが生まれた理由、存在する意味だから
どれほどの歳月が過ぎただろうか。気が遠くなる流れの中、人は来ては去る
時代が目まぐるしく移ろう中、取り残されたかのような虚無と焦燥を抱えながら
ひとたび、名は風に溶け
やがて、声は時の底に沈む
それでも、剣は手を離さず
灯火のように、ただ静かに揺れている
誰の記憶にも刻まれず
誰の賛歌にも乗らずとも
在るべきものを在るべき形に
戻すだけの、祈りにも似た意思
幾千の時を越えて
幾億の夢を見送って
それでも私は、まだ此処に在る
ただ一つ、「均衡」のために
崩れゆく世界の片隅で
見えない歪みに手を差し伸べる
私は光ではない
闇でもない
ただ、それらを裂き分ける刃でありたい
この世界が、生き延びるための記号でありたい
それだけで、いい
たとえ、全てに忘れ去られても
名なき者として、それでも世界を護った一人として
私は確かにそこに在るのだ。




