表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

第04話 現行犯逮捕

 ……人生初、警察官に囲まれる。

 揃いも揃った、いかつい顔のおじさんたち。

 これっていわゆる職質……職務質問?


「容疑者確保。15時7分、聖域不法侵入容疑で現行犯逮捕」


 ──ガチャン!


 あ……両手に手錠はめられた。

 職質じゃなくって逮捕、これ。

 手錠って、かなり重いんだ……なんて思ってる場合じゃなくって。

 終わった……いろいろ。

 家族へ迷惑かけないよう、思い直していたところだったのに……。


「鞄の中を調べろ。この年頃の娘は、ひょんなことで自殺に走りやすい。首吊り用のロープなどがあるかもしれん」

「はっ! ただちに!」

「生命の象徴たる世界樹での自殺の目論見は、重罪だからなぁ?」


 重罪……。

 うううぅ……バッグにはがっつり、ロープ入っちゃってます。

 そう言えばエクイテスさん、()()()()()()()()()()()って言ってた。

 自分で自分を殺める……。

 それって、自然の中では起こらないこと……。

 人間だけが抱えている罪。

 自然から外れている行い……。


「警部補! 鞄の中には、花輪が一つだけですっ!」

「花輪だとぉ?」

「はい、これです。他にはなにもありません!」


 えっ……花輪?

 麻縄じゃ…………なくって?

 本当だ……警察官が持ってるの、緑の細い茎を束ねて作った花輪。

 ところどころに、小さな白い花が咲いてる。

 でも、圧し潰されたようにぺちゃんこになってて、茎のところどころから汁が漏れてて、不格好な花輪……。

 ……………………。


「……あっ!?」


 わたし……バッグを敷き物代わりにして座った!

 そのときすでに、麻縄が花輪になっていたんだわ!

 エクイテスさんがきっと……世界樹の力で枯れた植物を蘇らせたっ!

 なんだかんだ言いながら……。

 腰を下ろしたときにはもう、わたしの自殺を止めていたんだわ!

 エクイテスさんはっ!

 ありがとう……ございます……。


「ふん……自殺ではなかったか。だが娘、世界樹周辺での植物採集もまた重罪。覚悟しておくことだ」

「いっ……いえ! その縄……じゃなくって花輪は、自宅から持ってきたものなんですっ! ここらで摘んでいませんっ! 本当ですっ!」

「言い訳は署で聞く! さあ来いっ!」


 ──ぐいっ!


 っ……!

 肌へ食い込むほどに手錠引っ張られてるっ!

 痛い痛い痛いっ!

 このままわたし……犯罪者になっちゃうのっ!?

 せっかく生きようと思い直したのに……もう死にたくなってくるっ!

 エクイテスさん……助けて……。

 もう一度だけ……わたしを…………助けてっ!


「エクイテスさああぁああんっ!」

『ふううぅ……』

「……えっ?」


 エクイテスさんの声色を滲ませた、大きな溜め息。

 空いっぱいに広がった、大きな大きな溜め息。

 世界樹のあちこちから、小鳥たちが驚いたように飛び立った。

 不思議な溜め息を耳にして、警察官たちの足が止まった。

 ううん……きっと。

 いまの溜め息、街中の人たちが……聞いた────。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ