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第15話 気になる樹

 ──わたしたちが通う、都立エクイテス南部学校。


 高いレンガ塀に囲まれた、男女共学の、小中高等部一貫教育。

 正方形の四辺のように繋がる3階建ての校舎。

 その中心部には、頭一つ抜けた三角屋根の中央棟。

 校庭に生えた世界樹は、その中央棟よりちょっと高いくらいのサイズ──。


 ──ざわざわ……ざわざわ……!


 外壁の周りには、街の人たちが大勢。

 みんな新たな世界樹を見に来てる……。

 つまりは大事おおごと

 あの新しい世界樹、わたしが原因で生えたのなら、早めにこの騒動鎮めないとまた不名誉が……ううっ。

 正門の門扉は……開いてる、入れる。


「……ではリーデル姉、わたしは書庫へ。なにかわかり次第、校庭へ出ます」

「わかったわ。わたしは世界樹のそばへ行ってみる!」


 ユンユの小さな後ろ姿は、すぐに人垣の向こうへと消えた──。

 生徒もたくさん、世界樹を見に来てる。

 けれど世界樹の周りには、すでに世界樹警邏隊が駆けつけていて、だれもそばへ寄れない様子。

 あっ……わたしに手錠を嵌めた警部補さんの姿も。

 そしてその正面に立ってる、見慣れた後ろ姿は……クラッラお姉様。

 女子生徒では珍しいパンツルックというのもあって、一目瞭然──。


「……クラッラお姉様!」

「やっとお出ましね、最重要人物。ユンユは?」

「調べ物があるからと、図書室へ。あの、なにか変わったことありました?」

練兵れんぺい科の男子たちが、朝練できないって悔しがってた。アタシたち練警れんけい科を見下して、いつも校庭独占してるからいい気味よねー。あははっ!」


 練兵科は軍を志望する人たちのクラス。

 クラッラお姉様在籍の練警科は、警察官を志望する人たちのクラス。

 国を組織として見た場合、警察より軍隊が上に来るから、それを笠に着た練兵科は、練警科にとって忌々しい存在……らしい。

 ちなみにわたしの在籍は、普通科。

 やっぱり……「凡」かも。


「あのー、お姉様? そういう校内の対立構造の話ではなくって、目の前の世界樹の話を……」

「それなら早朝から変化なし。アタシが朝練に来てから、木の葉一枚落ちてないわ」

「そうですか……。でもこの状況、いったいどうすればいいんでしょうね?」

「それはアンタの仕事、でしょ? どう見てもこれ、リーデル絡みだし」


 あうっ、ユンユと同じこと言われた。

 でも、わたしにどうかしろと言われても……。

 とりあえず……樹に向かって話し掛けてみる?

 でもその前に、警部補さんに話を通さないと。


「……あの、警部補さん。この樹に近寄ってみても、いいですか?」

「スティングレー家のリーデル様、先日は失礼しました。この事態、真相を掴むにはあなたの協力が必要と、姉君と話していたところです」

「そういうことであれば、率先して協力します」

「ですがくれぐれも、慎重にお願いしますぞ」

「わかりました。丘の世界樹へは遠く及ばずとも、こちらも十分に巨樹。なにか異変があれば、周囲の建物へ害が及ぶかもしれませんものね」

「話が早く、助かります」


 聖域の丘は、世界樹の根っこによる隆起で造られた……と、ユンユが言っていた。

 だったらこちらの樹がさらに大きくなったら、校舎も、周囲の民家も、破壊されかねない……。

 慎重に……慎重に、事を運ばないと……。

 近すぎず、遠すぎずの間合いまで、幹へと歩み寄って、声を掛けてみる──。


「エクイテスさん、リーデルです。そこに……いらっしゃいますか?」


 ……………………。

 ……無反応。

 声ちょっと、小さかったかな……。

 学校中から注目されてるし……萎縮しちゃってるかも。

 よく見れば校舎の窓の向こうにも、生徒、先生たちの姿が……あうぅ。

 でも、この樹がさらに大きくなったり、新たに別の樹が生えたりしたら大変だから……。

 ここは思い切って、大声出さないとっ!


「すうううぅ……エクイテスさーんっ! おられますかーっ!?」

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