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星になったあなたへ

作者: 平瀬ほづみ

 あなたがいなくなって一年が過ぎました。

 あなたがいない日常にも慣れてきました。でも、今でもあなたがいつも陣取っていた場所に目をやってしまう。今でも、あなたの足音が聞こえた気がして振り向いてしまう。

 もう会えないことを頭では理解していても、心はまだあなたを待っているようです。


 十五年前、小さな毛玉のようなあなたを初めて腕に抱いた日のことを、昨日のように覚えています。

 怖がりながらも好奇心いっぱいの目で私を見上げたあなた。

 あの日から、私たちはずっと一緒だったね。

 朝の散歩で見つけた新しい道、夏の日差しの中で走り回った公園、冬の夜に一緒に暖まったこたつ。


 親にも友達にも言えないような悩みを、あなたはよく聞いてくれました。わかってる、私が一方的に愚痴を聞かせていただけ。

 でもあなたがじっと聞いてくれたから、私の心は平穏を取り戻せた。

 明日も頑張ろうって思えたの。本当だよ。

 あなたは言葉を話さない。そのぶん、あなたは態度で示してくれる。

 それがとても嬉しかった。


 年を重ねるごとに歩みは遅くなり、耳も少し遠くなったけれど、私を見る目は変わらなかった。

 どんなに疲れて帰宅しても、玄関であなたが尻尾を振って出迎えてくれることが、どれほど私の心を癒してくれたか。


 最後の日はいつも通り。

 弱った体、浅い呼吸、少し眠そうな目。

「仕事に行ってくるね」

 私の声にあなたは目を上げて私をじっと見てくれました。それが最後だった。仕事を終えて帰宅した時にはもう、あなたは目を閉じて、呼吸を止めていた。

「さっきまで生きていたのよ。あなたが帰宅する少し前まで」

 最期を看取った母の言葉に、寄り道なんてするんじゃなかったと思いました。寒がりなあなたのために、ふわふわであったかそうなフリースの毛布を買おうとちょっとだけ寄り道してしまった。

 その毛布であなたの体を包んで、私は問わずにはいられなかった。

「あなたは幸せでしたか?」

 と。


 あなたがいなくなっても、家の中のいたるところにあなたの思い出が溢れています。お気に入りのぬいぐるみ、食器、首輪。それらに触れるたび、あなたとの日々が鮮やかによみがえります。


「あなたは幸せでしたか?」という問いは、実は私自身への問いかけだったのかもしれません。

 あなたが私にくれたように、私もあなたに十分な愛を与えられたでしょうか。この家で過ごした十五年、あなたは幸せでしたか?


 ペットは天国に渡る前に虹の橋で飼い主を待つと聞いています。

 待っていてね。私も必ずそこに行くから。

 たくさんの愛をありがとう。

 永遠にあなたを愛してる。

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