間話『カイル』
今日もまた、【あの方】からの”お告げ”があった。
昨日も、そのまた昨日も、連日でお告げを聞いた。
初めは、とある村へ迎えとの内容だった。
寂れた村だ。汚らしい貧者共が衣食住を共にする場所。
私はそこで、『カイル』という名のガキの身体を拝借した。
軽く記憶を覗いてみたが、随分と幸せそうな奴だった。
こんなにも貧相な暮らしで、何故心を満たせるのか。私には理解できない。
しばらく村での生活を過ごしていたある日、また新しい”お告げ”が届いた。
”村へ続く道を塞げ”、と。
何者かの行く手を阻む手立てなど、いくらでもあるだろうが、私は岩石で塞ぐ事を選んだ。
視覚的にも、物理的にも。道を塞ぐには最適だと考えたからだ。
そして最後に【あの方】から来たお告げは、”森で待て”との内容だった。
私はあの方の意図を理解した。
恐らくあの方は、村へと向かう何者かの足を、私の手で止めさせたいのだろう。
そのために、純粋無垢な少年を偽り、私をその者に会わせる。
やはり私でも、あの方の冷酷さには敵わない。それを改めて理解した瞬間だった。
しばらく森で待機していると、馬の軽鉄が地面を揺らす音が近付いてきた。
若い男と女。それを連れる中年の御者。
彼らは、私を無垢な幼子だと信じて疑わない。
愚かだ。実に愚かだ。
この愚人共の命を、明日私の手で刈り取ろう。
そうしてまた一段と、世界は美しくなる。