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004 放課後とか休みの日に、一緒に遊んだりするアレ

 その日の最後の授業が終わり、クラスメイト達が徐々に教室から散ってゆく。

 今日は掃除当番もなく、俺もそのまま教室を出ようとしたのだが…


上江(かみごう)くんは、これから部活?」

「あ…羽根倉(はねくら)さん」


 数時間前に友達になったばかりの女子、羽根倉が俺にそう話しかけてきた。

 とはいえ急な声掛けに、思わず周囲を見廻す。

 あぁ、なるほど。適度に人数が減ったところで声かけたって訳ね。


「確か…調理部なのよね? 上江くんって」

「そうだけど…」


 …なんで知ってるんだ?

 ってまさか、生徒会に俺を呼び出す前に個人情報、調べっちゃったとか?

 ………ありえる。


「えっと、羽根倉さんは今日も生徒会?」

「ええ、来年度の引き継ぎが迫っているから、あれこれ忙しくて困るわ」

「あー、俺らも来月から2年だもんね」


 …よし、我ながら友達として、無難な会話が出来てるじゃないかw

 とまぁ、俺から友達付き合いを提案しておいて誠にアレだが…急に仲良くなるのは不自然すぎる。

 だからまずは軽い立ち話から、という感じになった訳だ。


「でも羽根倉さんも会長も、また立候補するんだろ? なら続投になると思うよ」

「あら? 上江くんは私に投票してくれるの?」

「まぁ、友達のよしみってことで」

「うふふ、では頼りにしちゃおうかしら♪」


 かわいい。

 まぁどうせ? 羽根倉に勝てる対抗馬なんていないだろーし?

 それに去年の信任投票も、9割以上の生徒の票が入っている。

 羽根倉は残念な子だけど、シゴデキなのは確かでだし、可愛いからな。


「うちの部なんか男が俺だけだから、立場が弱くてさぁ」

「…そうなの?」

「そうなんだよー、調理品目のリクエストとか、ほとんど通らないし」

「あらあら…では今日は、調理部で何を作るの?」

「あー、それこそ新入部員を迎える前の、大掃除だよ」

「うふふ、それでは男手として、頼りにされちゃう訳ね?」

「はは…こんな時だけだけどねー」


 マジで来年、もっと男入らないかねー


「っと…じゃあそろそろ俺、部活行くね」

「ええ。大掃除、頑張って♪」

「あぁ、じゃあね、羽根倉さん」


 ………ふう、本日の友達ノルマ完了っと。

 とにかく本格的な友人活動は、2年になってからということで…


「ええ、またね。上江くん」


 羽根倉もそう言うと、小さく手を振ってくれる。

 つかその仕草、あざといけど結構イイなぁ▽

 って…あいつの本性を知ってるだけに、素直に喜べないけどなー


 ◇◆◆◇


 調理部の大掃除は、つつがなく終わった。

 俺? 予定通りに力仕事をアレコレやらされて、クタクタだよ…

 確かにチヤホヤされたけど、どーせ今日限りのこと。

 来月には女の園に逆戻りだろーしな!

 マジ入って! 男の新入部員!


「おっ、なになに…」


 ぶるりとスマホが振動し、見れば流花(るか)からのメッセージが届いていた。

 〈いまきがえ中〉〈おなかへった〉

 いつもどーりの流花に〈今から行く〉と返し、プールの方角へ向かう事にする。


「あー、やっぱ政紀(まさき)、来れないか~」


 今朝の『からかい』のお詫びに、俺は流花を買い食いに誘っていた。

 流花は即 〈いーよぉ♪〉 と返してきたが、政紀は部活のミーティングがあるらしく不参加。

 あいつは本格的にエースとして期待されてるらしく、そのあたりの心得とかを教わっているとかなんとか。


「政紀のヤツ、ちゃんと流花にラブホの件、フォロー入れてんだろーな?」


 流花とは小学生からの付き合いだが、政紀は中3の頃に塾で知り合った。

 うちの学校に入学してから本格的に仲良くなり、俺を通じて流花と一緒に遊ぶことも増えた。

 それで秋ごろに流花に告白。

 本気の押しに流花もOKして、恋人同士になって現在に至る…と。


「ま、そもそもラブホ行く仲なんだし? なんだかんだで上手くやってるか…」


 と、プールへと続くドアが開いた。


「あっ、流花~」

「あっ、かずくーん♪」


 俺を見つけて流花がとことこ駆けてくる。

 かわいい。


「かずくんおつー♪」

「流花おつかれー」


 出会い頭にハイタッチ。

 だいぶ身長差があるから、俺はあんまし腕上げてないけど。


「ねぇねぇ、今日はどこよっていこーか?」

「あー、俺今日は大掃除だったから疲れてて、ガッツリ食べたい気分なんだよなー」

「そーなんだ?」

「だからファミレス行かね? 流花の食いたがってた限定パフェ、奢ってやるよ」

「あぁんっ、かずくん…すきぃ▽」

「ハハっw そーかそーか」


 悪いな政紀、お前の彼女なら俺の向かいでパフェ食ってるぜw

 ………なーんてな。

 流花は可愛いけど、付き合うなら大人っぽい歳上の女、そう決めてるからな!


「って、そういや俺…ちょっと流花に頼みがあってな?」

「なぁに? パフェおごってくれるし? なんでもしちゃうよぉ?」


 流花…チョロい子。

 でも女子が軽々しく、何でもしちゃうとか言うんじゃありません。


「あー、流花はうちのクラスの羽根倉さん、知ってるよな?」

「ウン、しってるよぉ? 生徒会のコだよね?」

「そうそう。で…実は俺、その羽根倉さんと友達になってさぁ」

「ともだち?」

「そう、友達。放課後とか休みの日に、一緒に遊んだりするアレ」


 疑り深そうな目で、俺を見上げる流花。

 残念ながら今のは真実だから、信じていいんだぞ?


「かずくん? それってほんとぉ? またウソじゃないのぉ?」

「ホントだって。ま…本格的に友達になるのは、来月からの予定だけどな」

「かずくん…」


 あの流花さん?

 なんでそんな優しい目で、俺を見てるの?


「うん…そぉだね。そのかずくんの夢…信じ続ければ、いつかぜったいかなうから…ね?」

「いや夢でもウソでもないから!」


 ほんとだもん! ほんとに羽根倉友達だもん! うそじゃないもん!


「うん…わたしもかずくんが、ウソつきだなんて思ってないよぉ? かずくんはきっと、この森のヌシに会ったんだね…」


 いや流花さん? なんで窓の外の大きな木に頭下げてるの?

 羽根倉って、あの大きな木が俺に見せた幻だったの?


「とにかく! 友達の羽根倉さんは実在してるし? 今月忙しいから来月からって事だから」

「そぉなの?」

「そぉなの! だから来月どこか遊びに行くときに、流花と政紀も一緒に行かないか? って話でさ」


 まぁ最初は近場でいいだろ。

 それに流花たちがいれば、羽根倉も残念スイッチ、そう簡単には入れないだろーし?


「へぇぇ、ほんとに羽根倉さんとお友達になったんだねー」

「あぁ、あいつああ見えて結構おちゃめでさぁ、話してみるとわりと面白いから」

「そぉなの!?」


 まぁ、頭の回転が早いのは確かだよな。

 それが正しい方向の回転かどうかは別として…


「えっとぉ、じゃあ遊びいくのって、わたしと政紀くんと、かずくんと羽根倉さんの4人?」

「ん? あぁ、そうなるかな」


 さすがに生徒会長を連れてこられても困る。

 そしたら2組のカップル+俺ひとりって感じの切ない事になるし…

 となると、やっぱその4人になる…かな?


「かずくん…それってもしかして、ダブルデート?」

「………は?」

「っていうか羽根倉さんのこと、すきなの?」


 …俺が? 羽根倉を?

 御冗談をw


「いやいや! 羽根倉には彼氏いるから。知ってるだろ? あの生徒会長」

「そぉだけど…」

「それに今日もちょっと話したけど、メッチャ彼氏の事、惚気けられたからな?」

「羽根倉さん、そぉゆぅコなんだぁ、ちょっと意外~」


 ウン…俺もあいつの本性知って、メッチャ意外だったわー

 主に下ネタ系残念ムーブにな!


「そもそも流花だって、彼氏いるのに俺と遊んでるだろ?」

「…うん」

「女子はやたらに恋愛と結びつけたがるけど、俺は男女の友情…あると思うしな」

「そう…だよね」

「ま、俺も政紀に怒られない程度にはするからさ、懲りずに付き合ってくれよw」

「うん…ほんとそぉだね」


 ふぅ、軽いネタ振りのつもりで羽根倉の名前を出したが、予想以上に流花に警戒されたみたいだ。

 というか、俺の歳上好きは流花も知ってるから、羽根倉も対象外だって判るだろうに。

 んー、やっぱ男女が絡むとハナシがこじれるなぁ

 めんどい。


「それで流花だったら、どこに遊びに行きたい?」

「わたし? う~~~ん、プール!」


 お前…ほぼ毎日泳いでるだろ?

 まだ足りないのかよ! この食いしん坊さんめ!


「4月だぞ? まだ寒いだろ」

「温水プールならへーきだよぉ?」

「そもそも季節的に対象外じゃね?」


 フツーは夏まで待たない?


「そこはほらぁ、屋内型のテーマパークっぽいのとか♪」

「あー、スパリゾートとかそーゆーヤツか…」

「そぉ♪ ウォータースライダーとかもあるよぉ?」

「なるほど…悪くない」


 しかもプールなら、合法的に羽根倉の半裸──いや、水着姿が拝めるな。

 下着とたいして露出面積変わらないクセに、じっくり見ても通報されないし。

 うん、羽根倉がビキニ派だとイイなぁ▽


「って…いやいや! 流花はプールだと、ずっとマジ泳ぎするじゃねーか」

「えー、そんなことないよぉ?」

「ウソだぁ」


 ガキの頃、俺と流花ん家の合同で、リゾート系のデカいプール施設に行った事がある。

 流花はひたすらマジ泳ぎしてて、全然プールから出てこなかった。

 一緒に泳ごうにも早すぎて、誰も付いていけないしで…


「ま、行くにしても、プールはもうちょっと羽根倉が俺らと馴染んでからだなー」

「えー」


 ぷうっと頬を膨らませる流花。

 かわいい▽


「それならうちの学校のプール、遊びに使ったり出来ないのか?」

「どぉだろ? こんどせんせーにきーてみるねぇ?」

「おぉ、頼むな」


 ちなみにうちの水泳部は強豪で、全国レベルの選手を何人も輩出している。

 そのせいか、校舎の最上階には立派な屋内プールがあったりする。

 それを知った時『プールの水ってメッチャ重そうなのに、なんで屋上に?』と思っていたが…

 『プールのある部屋は広さが必要なのに、構造上中央に柱が建てられない。だが最上階なら簡単な屋根で済む』

 そう説明されてメッチャ関心した覚えがあるわー。


「そっかー、ココのプールで何年も泳いでるけどぉ みんなで水遊びってゆーの、考えたことなかったなー」

「そういや流花は、入学前からココで泳いでたんだっけ」


 流花は中学時代からすでに水泳強者で、当然進学も水泳の強い学校一択だった

 その点我が校は水泳強豪校で、一年中泳げる屋内プールを完備。

 しかも自宅から徒歩圏内という好立地!

 中学時代、体験で泳がせてもらった時なんか『わたしここに住む!』と言い出したくらいだ。


「そーそー♪ 冬とか特別に、ここの練習にまぜてもらってたっけ。なつかしーなー♪」

「それで県大会、優勝しちゃうからなぁ、流花はホントにスゴいな」

「えへへー、もっとホメてぇ♪」

「よーしよーし、えらいぞー」

「はにゃぁぁぁん▽」


 ナデナデしてやると、うっとりとろける流花。

 かわいい▽

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