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第7話 アルトは冒険者になる

「私は幼いころから修道女(シスター)として活動していたので、実の所教会での活動は長いのです」


 まだ赤い目を僕に見せてそう言った。

 今僕と彼女——レナは町に向かって歩いている。

 ミノタウロスの危険性がないため比較的ゆっくりと。


 話によると金髪碧眼(へきがん)の彼女は十六歳。

 幾ら幼いころから教会で活動していたからと言っても十六で聖職者階級である助祭(じょさい)は早いと思う。

 貴族で言うのならば下位貴族家の当主(とうしゅ)のようなもの。

 才女(さいじょ)だろうか?


 僕が首をかしげていると、(さっ)してか彼女は少し笑みを浮かべながら付け足した。


「そう言っても助祭になったのは最近なのですが」


 二回りくらい小さな彼女が見上げてそう言うも、理由になっていない。

 まぁ教会のことは詳しく知っているわけではないから独自(どくじ)のシステムがあるのかもしれない。

 そう納得し彼女に聞いた。


「だけど何でその助祭様があんなところに? 」


 僕がそう言うとクスリと笑い「レナ、と呼び捨てで構いませんよ」という。


「いや流石にそんな度胸(どきょう)はないよ」

「貴方様は命の恩人なのですから構いません。私の事はレナとお呼びください」

「……そう言うなら。で、レナ……は何であんなところに? 」

「実の所——」


 と彼女から聞いた話はとんでもなかった。


 去年助祭になった彼女は各地の町の教会に挨拶に行っているらしい。

 しかしながら教会から出るお金はそこまで多くない。

 よって途中、回復役として冒険者登録し、路銀(ろぎん)(かせ)いで町を渡って来たようだ。


 この先にあるアランの町に来るまでは良かった。

 だがついさっきミノタウロスに恐怖した臨時パーティーの男女に裏切られて足を切られ、置き去りにされたとのこと。


「なんてことを」

「……怖いのは、分かります。しかしあそこで食い止めつつ増援(ぞうえん)を呼ばないと町に被害が出ます」


 (うつむ)きギュッと白い修道(しゅうどう)服を(にぎ)るレナ。

 自身も怖い思いをしたのに、町の事を考えるなんて。


 魔の森で感覚が麻痺(まひ)していたが、スキルが覚醒(かくせい)しなかったらどうしていただろうか?

 恐らく立ち向かえていないと思う。

 流石に味方を置き()りにはしないと思うけれど恐怖で足は(すく)むだろう。

 そう考えると彼女の勇気は計り知れない物だ。


「しかしミノタウロスか。なんであんなところに」

「……冒険者ギルドで聞いた話によると時折魔の森から『はぐれ』が出てくるようですね」

突拍子(とっぴょうし)もなくミノタウロスが出てきたら(かな)わないな」

「確かにそうですね。しかし町の冒険者さん達は慣れているようで、その緊急時の対処法も公開されているのですよ」

「どんな? 」

「はぐれて出てくるミノタウロスはそこまで足が速くないようで。なので距離を(たも)ちつつ魔法攻撃や弱体化魔法で牽制(けんせい)。その間に時間を稼ぎ町から他の冒険者を呼ぶ、というようなものになりますね」

「町から距離が近いならではの方法だな。しかし……対処法が確立(かくりつ)しているのなら、なんでそいつらは逃げたんだ……」


 (あき)れながら呟くとレナが答えた。


「彼女達もこの先にあるアランの町に来たのは最近のようで」

「なるほど。対処に慣れていない同士が組んでしまった、と」

「……申し訳ありません」

「あ、いや。責めているんじゃないよ」


 落ち込む彼女にフォローを入れる。

 彼女も落ち着き前を向いた。

 それにつられるように俺も向く。

 するとそこには城壁のようなもので囲まれた一つの町が目に入った。


「アランの町、ですね。私はこれから冒険者ギルドに報告に行こうかと思うのですがアルト様はどうなされますか? 」

「僕も冒険者ギルドに行くよ。登録もしたいし」

「え? 」


 僕がそう言うとレナは青い瞳を大きく開いて、驚いた。


 ★


「レナちゃん! 大丈夫でよかったぁ! 」

「は、はいぃ」

「そこの坊主! よくやった」

「いえ、それほどでも」

謙遜(けんそん)するこたぁねぇ。Aランクモンスターを単騎(たんき)で倒したんだ。胸を張れ! 」


 ガハハハハ、と言う豪快(ごうかい)な笑い声と共に僕は背中を叩かれた。

 かなり痛いが、好意と思って我慢しよう。


 アランの町の冒険者ギルドに入りレナが報告した。

 ミノタウロスの事は報告すらされていなかったみたいで、その場が一気に殺気立った。

 これはまずいと思いすぐに僕が倒したことを伝えて、証明部位を出すとその熱は違う方向に行って今に至るということだ。


「ちっ。気に入らねぇ」


 誰かが何か言った気がするが、気のせいだろう。

 大男達に()まれる中、何とかやり過ごす。

 受付に行って冒険者ギルドに入る事を伝えた。


「「「え??? 」」」


 外野も含めて全員が驚く。

 いやそんなに驚くことだろうか?


「いやいやいや、どこかの町で活動していた高位冒険者じゃねぇのか? 」

「いえ。違います」

「ならどこかの貴族家のお(かか)え魔法使いだったとか? 」

「……違います」


 微妙に(かす)るがそれも違う。

 一先ず冒険者になる時の為に用意した設定を伝えて納得してもらうことにする。

 それを聞くと、少し首を(かし)げながらも、受付嬢はカードを作る準備をしてくれた始めた。


「……師匠と一緒に山()もりか」

「そんなことある……んだろうな。やっている奴は聞いたことないが」

「実際に証明部位があるんだから、そうなんだろうな。悪いがレナちゃんが勝てるとは思わねぇ」


 紙に必要事項を書いて、カードが出来上がるのを待っていると、後ろの方から聞こえてくる。

 混乱を避けるためにも必要な嘘は必要だから許してほしい。

 心の中でそう思っていると隣でレナも「なるほど」と納得してくれていた。


「……。出来ました。こちらがアルト様の冒険者ギルドカードになります」


 トレイに置かれたカードを受け取り確認する。


「申し訳ないのですがアルト様はまだ冒険者ギルドに未加入だったため、今回のミノタウロス討伐はランクに影響しません。よってFランクからのスタートとなります。ご容赦(ようしゃ)を」


 受付嬢が申し訳なさそうな顔をして頭を下げてくる。

 僕としては、今はランクよりもお金が欲しい。

 何せ魔の森生活で無一(もん)即金(そっきん)に勝るものはないのだ。


「ランクに関しては構いません。しかし、このミノタウロスの素材は買ってもらえるのでしょうか? 」

「それはもちろん! 是非(ぜひ)売っていただけたらと」

「ではよろしくお願いします」


 僕が頼むと彼女は作業に移った。

 一旦奥へ行き、一つの小袋をトレイに置いて、僕に向けた。

 それを受け取りお礼を言う。

 そして僕とレナは冒険者ギルドを出るのであった。


 ……そして何故かギルドの冒険者達も外に出た。

ここまで如何だったでしょうか?


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