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第4話 アルトはついにやらかす

「Gaaaaa!!! 」

「なに?! 」


 声に驚き「バッ」と体を起こす。


「痛たたたたぁ!!! 」


 激しい痛みが僕を襲う。

 だけど異常事態のはずだ! 確認をしないと!

 痛みで冷めた目を周りにやると簡易天幕(てんまく)が映った。


 そうだった。僕は魔の森にいるんだった。

 

 少し息をついてから天幕の外に出る。

 太陽の光が体を温め、青々(あおあお)しい臭いが鼻を突く。

 まだ声が聞こえてくる。その方向を見るけど魔物はいない。少なくとも僕のキャンプに異常はないようだ。


「もしかしたらこれが魔の森の日常? 」


 そう思うと体がぶるっと震える。

 昨日嫌という程に命の危険に(さら)されたけど、もしかしたらあれ以上の生存競争がこの森で行われているのかもしれない。

 早く魔法を解放しないといけないね。

 そう思いつつも小袋を手に取り携帯食を軽く(かじ)って座る。


「他にやることは食料調達か」


 出来れば調理の必要ない物が良い。

 残念ながら僕は調理ができない。肉を確保しても多分食べるようには出来ないと思う。

 木の実とかなら大丈夫だろうか。

 いや毒があったら大変だ。

 普通の木の実に見えても突然変異とかで毒を持っているかもしれない。

 なら携帯食を食べ終わる前くらいに森を出るのが一番かな。


 携帯食を一つ食べ終えると立ち上がる。

 そして僕は準備を済ませ、森に入った。


 ★


「吸収」


 叡智の魔導書(メーティス)が薄暗い魔の森を照らす。

 光が収束すると新たなページが開かれた。

 光球(ライト)を近づけ中身を見る。


「魔力増幅に魔力貯蔵......。これはありがたいね」


 微笑みながら本を閉じる。

 周りを見て倒した魔物の素材を異空間に収納し次へ向かう。

 まだ魔力に余裕がある。

 もう少し倒して休憩しよう。


「人が歩けば魔物に当たる、か。昔の人は上手く言ったよね。まぁ昔と今とでは危険度が違うけど」


 昨日の危険地帯は避けて、比較的浅いところで魔物を()った。

 どうやらこの周辺は危険度が低い代わりに多くいるようで。

 恐らく奥で()らせない魔物達がここまで来ているのだろう。

 比較的弱いと言ってもここは魔の森。

 どの魔物も油断ならない相手ばかりだった。


(ほとん)どこのスキルのおかげだよね」


 ポツリと呟き前を見る。

 すると丁度素材自動採取オートマジック・コレクションが発動し目の前に素材が()み上がった。

 そこから魔石と他を分けて、魔導書をかざす。

 毎回の(ごと)くながら光り始めて魔石が消えている。


 努力とは一体なんだのだろうか、と疑問に思ってしまう程にこの叡智の魔導書(メーティス)は異常だ。

 少なくとも魔の森の浅層にいる魔物を瞬殺(しゅんさつ)できるくらいには。

 この周辺の魔物だって他の地で発生すれば騒ぎになるレベルの強さのはず。

 改めて異常性を認識した。


「だけどまだ足りない」


 あれから多くの魔法を使える状態にした。

 だけれども僕の魔力は有限(ゆうげん)で。それを踏まえた立ち回りが要求される。

 魔法を使いながらの体(さば)きに、そして本気で殺しにかかって来る魔物との戦闘経験。

 これが圧倒的に不足している。


 まだまだ奥には行けないようだ。けれどこの周辺で魔石を集めて力を(たくわ)えることくらいはできる。

 ならばせめて使える魔法を多くして、生存率を上げる。基本的だけど、これに限るだろう。


「気を引き()めないと」


 と奮起(ふんき)したところで光が収束を始めた。

 毎回よりも発光時間が長い。どうしたのだろうか?

 少し疑問に思っている間に完全に収束した。

 そして新しいページが、開かれた。


水龍餓狼(リヴァイアサン)?! 」


 その文字を読んで驚く。

 これって伝説上の神獣の名前だよね?!

 それが何で魔法に?


 ......。


 いやあった。


 あのオルディ空想魔法大全に()っていた。

 確か指定した敵を喰らい()くす水属性魔法だったはず。

 と思い出したところで目を落とす。


 伝説上の神獣をかたどった魔法か。


 そう思うと体の奥底からドキドキが沸き上がって来た。


 使ってみたい。


 ん~、だけどこの後の事を考えると使わない方が良いと思う。

 多分だけどこの魔法、物凄い魔力を使うと思うからね。

 いや、だけど......ここは。


 悩んでいると遠くから物音が聞こえて来た。

 少し長居し過ぎたことに舌打ちをうちながらも魔導書を手にする。


 Grurururu......、と声を上げるのはウルフ達だ。警戒していることがひしひしと伝わってくる。

 もしかしたら僕のおこぼれを狙っていたのかもしれない。


 (よだれ)()らしながらウルフ達が近づいて来る。

 そして僕は使える魔法を確認する。

 ウルフ達の数が多い。


 ......。


 悩んでいると一体が僕に飛びかかって来た。


「! 水龍餓狼(リヴァイアサン)! 」


 反射的に唱えると僕の周りに多くの水色の魔法陣が現れた。

 そこから巨大な(へび)の頭が見える。


「Garu?! 」


 飛びかかって来たウルフも予想外だったのか驚いた。

 しかし勢いは殺せないようで僕の方に向かってくる。

 それを鋭敏(えいびん)に感じ取った蛇の頭がウルフの体を——食い千切(ちぎ)った。


 ......。


 一瞬の出来事に唖然(あぜん)とする。

 しかしこれで終わらなかった。

 まだ魔法陣は消えていない。

 そこから頭だけでなく胴体(どうたい)まで出てきて正面のウルフに食いついて行く。


「え? 」


 そう言えば一瞬の事だったから対象を「ウルフ」にしていた。

 ということは——。


 他の魔法陣を見ると同じように蛇——いやリヴァイアサンの体が出てきて四方八方(しほうはっぽう)に飛んで行く。

 それを呆然(ぼうぜん)と見ていると、途切れない胴体の向こう側から「Gaaaaaa!!! 」と悲鳴のような声が聞こえて来た。

 そしてその声は長い胴体が霧散(むさん)するまで消えなかった。


 ★


 僕は前を見て、()らした。


 水龍餓狼(リヴァイアサン)が消えた後、一応素材自動採取オートマジック・コレクションを発動させたんだけど、受け入れがたい事実が目の前にあるからだ。


「もしかしてこの一帯のウルフ種すべてを殺し尽くしたんじゃないだろうか」


 ポツリと呟き、何種類もある、しかし牙で貫かれたかのような(あと)を残す毛皮を見た。

 水圧で押すのかと思ったが、この魔法の攻撃は牙のようだ。

 いや現実から目を逸らすのをやめようか。


「どうしよう。この数」


 山のような毛皮と魔石を前に立ち尽くす。

 いや固まっていても仕方ない。

 一先ず魔石を吸収させるために近くに寄る。

 本をかざして一気に吸収。


 今までにない発光に腕で目を隠して保護をする。

 長い時間発光し続け、そして僕は本を確認した。


「魔力貯蔵」「魔力抽出」「外部魔力収束」「解析鑑定」「スキル鑑定」「水龍餓狼(リヴァイアサン)」「漆黒の棺(ダークネス・コフィン)」「星降り(メテオストライク)」「短距離転移(テレポート)」「異空間収納」「地図作成(マッピング)」「付与: 魔法」「付与: 異常状態」「鉄剣召喚」「聖光」……。


 僕はそっと本を閉じた。

ここまで如何だったでしょうか?


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