第25話 国を害した悪徳達の最後
悪魔との戦闘後少し休んで他の町に連絡を取った。
現在領主であるザック・レギナンスが行方不明と言うこともあり、その指揮は隣の領地の領主エリック・ガンフィールド様が行っている。
こんな事態だけれども一冒険者である僕に出来ることはない。
よって今ガンフィールド公爵邸の訓練場で修業を受けていた。
「し、師匠。手加減なさすぎです」
「何を言うか。手加減してこれじゃ」
ゴン!!!
虚歩で近づくカイ様の木剣をギリギリで防ぐ。
その剛腕から繰り出された一撃で僕の木剣が半分に折れた。
こ、これで終わっ——。
「なに気を抜いとる! 柳流剣術: 流水覇斬」
顎に強烈な痛みを感じた瞬間、僕の意識は吹き飛んだ。
その後レナによる回復が施されて回復したのだが、目の前の老人を睨みつける。
「僕に恨みでもあるのですか? 」
「ふん! わしの悪魔を取りよってよく言うわい」
「それを言うのなら最初から全力全開でツッコんでいった師匠に非があると思うのですが? 」
「し、仕方ないじゃろ? 久しぶりに暴れれる機会じゃったんだから」
よく言うと思いながらもレナがクスリと笑い僕を見た。
「お二人は仲がよろしいのですね」
「……そうじゃの。出来の悪い孫のように思っとるわい」
「それはそれは弟子としては光栄です。しかし本物のお孫さんはよろしいので? 」
「あ奴はすでに我が柳流剣術を習得して王城で働いとるわい」
「お孫さん? 」
レナがコテリと首を傾げる。
そうか。レナはガンフィールド公爵家の事を知らないんだった。
最近僕達と同化していて忘れていた。
「アイリにはお兄さんがいるんだよ」
「そうなのですか?! しかし見たことがないのですが」
「さっきも言ったろう? 王城で働いていると」
「それで……」
師匠がそう言い僕に近付く。
手を差し伸べてくれたので手を取り立つ。
「アルト。お主に我が柳流剣術を習得してもらうと思うんじゃが? 」
「……え? 」
「何があったかよくわからんが、アルトの動きはすでに『剣術: 上級』そのもの」
「そうなのですか? いやしかし何でそれが柳流剣術を習得する話になるのですか? 」
師匠の修業は苛烈を極める。
僕は魔法使いタイプだからできるのならば逃げたい。
「ガンフィールド公爵家では『剣術: 上級』を得た者から柳流剣術を習得する習わし。門下のアルトがそれに従うのは自然な事だと思うのじゃが? 」
「うぐっ」
「それにやることないし。暇じゃし。良い暇つぶしになるしの」
「……台無しですよ」
溜息をつきながら渋々了承する。言い出したら人の話を聞かないのだ。
そう話していると入り口の方が騒がしくなったことに気が付く。
「アルト君! ここにいたか」
「エリック様? 走ってどうしたのですか? 」
「落ち着きを持たんか、この馬鹿息子! 」
「お爺様にだけは言われたくないのですが……、そんなことよりもアルト君。大変だ。レギナンス伯爵が見つかった! 」
「「「え?! 」」」
その言葉に複雑な気持ちがこみ上げてきた。
★
「お、俺達をどうする! 」
「引っ張らないで! 私を誰だと思ってるの! 」
「離せこの下郎が! 」
「黙れこの反逆者が! 」
王都王城前にて。
そこにはボロボロになったザックとカタリナ、そしてエルドが騎士に引っ張られていた。
周りから奇異な目線が送られる中、彼らは王城に入っていく。
「どこに連れて行くつもりだ! 」
「お前達にぴったしの場所だ」
ザックとカタリナは何度も王城に来たことがあるので、今どこに向かっているのかわからない。
何故ならば今まで通ったことのない場所を行っているからだ。
強引に引っ張られることに憤慨しながらも、ちぎれんばかりに引っ張られるためついて行くしかない。
傷だらけの体や引っ張られる腕に痛みを覚えながらも彼らは進んだ。
「ちょっと待て。ここはまさか……」
「うそ……」
「ここは? 」
「処刑場だ」
多くの木が植えられている王城裏。
そこには処刑用のローブが三つ吊るしてあった。
それを見て顔を青ざめさせる三人。
同時に彼らは騎士に言う。
「わ、私がいなくなったらレギナンス伯爵領はどうするつもりだ! そもそも陛下の許可が無ければ死刑は出来ないはず!!! 」
「これは陛下のご指示だ」
「な! 」
「それに元レギナンス伯爵領は一時王家預かりとなる。お前達が統治するよりかは大分マシになるだろう」
「このっ!!! 何もしない王家がこんな時に限ってっ! 」
ドン!!!
その言葉と共にエルドは殴り飛ばされた。
「王家への不忠! 万死に値する!!! おい! 」
その一言でどこからともなく騎士達が現れる。
そしてエルドを蹴り始めた。
ドッ、ドッ、ドッ!!!
「い、いたい……。本当の事を言っただけなのに何で、いたっ! 」
「この国は王家によって支えられている。それがわからぬ愚か者が! 」
「エルド! 」
「ね、ねぇそこの貴方。わ、私を見逃してくれない? 」
ザックがエルドの元へ行こうとするとカタリナは処刑人に近寄った。
それを信じられないという表情で見るザック。
「私を見逃してくれたら、良いことしてあげる」
「この……汚らしい女がっ! 」
「レ、レギナンス伯爵家の隠し財産も上げるわ! 」
「そのような物、一ゴルたりとも触りたくないわっ! 」
「た、助けてよぉ。なんで私が」
「貴様らの教育不足が招いた悲劇だろうが! 」
「事の重要性がわかっていないようだな」
カツン、カツン、カツン……。
奥から音が聞こえてくる。
その音と共に三人以外が動きを止めて片膝をつく。
遅れてザックとカタリナも縛られた状態で頭をこすりつけるように頭を下げた。
カツン、と足音が止まる。
そこには一人の男性がいた。
しかし赤いマントに金色の王冠。手には幾つかの宝石が散りばめられた王錫を持つ彼は、この国の王『ゲルハルト・エルフォード』だ。
ゲルハルトは冷たい目線で三人を見下ろす。
獅子を思わせる雰囲気に飲み込まれる三人は震えながらもただ頭を下げていた。
「そこの子供が悪魔と契約したことで元レギナンス伯爵領は、いやこの国は滅亡の危機に陥った。その昔一体の悪魔の出現で国が滅んだことはよく知っているだろう? 」
その言葉に何も言い返せない二人。
エルドは何を言っているのかすらもわからない。
しかし気にする様子もなく続ける。
「民を、国を滅ぼそうとしたその罪。ここで贖ってもらうぞ! 」
そう言うと用はすんだと言わんばかりに背を向けるゲルハルト。
しかしそれを止めようとする。
「お待ちを。陛下。お待ちを! 」
「温情をください! 意図したことではなかったのです! 」
「あ、悪魔とは知らず……」
ザシュ……。
「ギャァァァァァァァァ! 」
王の進行を止めようとするザックの腕が無くなった。
悲鳴を上げるも誰も気にしない。
「そう言えば」
と言い王はピタリと足を止めた。
少し後ろを向き告げる。
「お前達が追放した息子。冒険者アルトが悪魔を討伐したようだ」
そう言い残して再度足を進める。
それを聞いたエルドは心の奥底から湧き上がる感情と共に言葉を放つ。
「アルトォォォォォォォ!!! 」
しかしその言葉は誰にも届かない。
いないアルトに罵声を飛ばすもエルドは吹き飛ぶ。
そして三人は袋叩きにあい、そして最後はあっけなく死んだ。
ここまで如何だったでしょうか?
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