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第17話 アルトは幼馴染と再会する

「魔の森の魔物か。なんでまた」


 ポツリと呟きながらジャンプする。

 体を強化しているおかげか、動きが軽い。

 

 シュッ!


 すれ違う魔物を長剣(ロングソード)で切り倒し、先に進む。

 まだはぐれとの戦闘にはなっていないが、魔力を温存(おんぞん)するに()したことはない。

 あのアイリが負けるとは思わない。

 だがどうしてか嫌な予感がする。


「この辺から、か」


 ()れて来たゴブリンが僕に気付く。

 だけど向かってくる前に三つほど首を落とした。


「前の様にはいかないよ。流石に体が慣れて来たし」

 

 剣を振って血を(はら)う。

 呟きながら前を見る。


 索敵(さくてき)遠視(クリアボランス)を使いながら戦況(せんきょう)を確認。

 アイリとオーガは膠着(こうちゃく)状態のようだ。


「!!! これは! 」


 索敵範囲を広げると更に奥に魔物を発見した。

 遠視(クリアボランス)で確認すると一体の巨大なオーガが近づいている。


「まさかもう一体?! 」


 その大きさに驚き急ぐ。

 走ってアイリの元へ向かう。

 何かの武技を使ったのか一瞬でアイリの戦闘に混ざろうとしていた。


「アイリ!!! 」


 叫んで氷弾(アイシクル・ショット)を打ち込んだ。


 ★


 (一体こいつらは何なんだ)


 そう心の中で毒づくのはアイリ・ガンフィールドであった。


 今日彼女は調査だけのはずだった。

 報告にあった森を探索し終わり帰る時、この魔物達と遭遇(そうぐう)した。


 (強さも異常。まさか全部が魔の森からのはぐれなのか?! )


 前にするオーガを切りつけながら分析する。

 オーガにしてはかなり素早い。

 オーガ特有の筋骨隆々(りゅうりゅう)とした体つきではなく、ほっそりとしている。


 アイリはオーガの剣撃を避ける。


 ゴン!!!


 剣が木にぶつかり(にぶ)い音を立てた。

 威力の無い一撃に(すき)を見出しアイリは「瞬歩(しゅんぽ)」で近づく。

 剣で切り上げ首を()ねようとしたが、バックステップで避けられた。


 (またこれか! )


 せめて魔法が使えれば、とアイリは思うが切り替える。

 彼女の得意魔法は火属性魔法。

 使えば確実に山火事になる。


 身軽なオーガはアイリに拳を突き立てる。


 オーガの拳から「シュッ! 」と言う空気を切るような音が鳴るが、アイリが剣で受け止め「ゴン」と軽く音が響く。

 オーガ特有の——しかも魔の森の——皮膚である。

 剣が腕に触れるも痛みを感じた様子はない。


 一瞬アイリはカウンターを仕掛けようか迷ったが、すぐにその場を離脱した。

 同時に次はさっきよりも大きく「ドン!!! 」と木を(なぐ)る音が鳴る。

 「ギギギ」と音を立てながら木が倒れるとアイリは自分の(かん)の良さに感謝した。


 オーガは何やら倒れた木に引っかかった剣を取っている。

 その間にアイリは息を(ととの)えて更に集中した。


 瞬間彼女から音が消える。


 虚歩(きょほ)


 音もなくオーガに近付く。

 まるで自然と同化(どうか)しているかのような存在感の無さで、ゆらりと剣を降ろした。

 が——。


 すぐさまオーガは()ねて逃げた。


 武器を手に持つオーガを見ながら、虚歩が(やぶ)られている事に驚くアイリ。

 意識が途切れたと同時に視界に、更に巨大なオーガが目に入った。


 (もう一体?! )


 まずいと思いすぐに動こうとした。

 だが動かない。


 (魔眼?! 異常状態かっ! )


 動かない体でオーガを見上げる。

 獰猛(どうもう)な顔が二つ(のぞ)く。


 (くそっ! こんなところで)


 巨大なオーガが拳を上げる。


 勢い良く振り——「アイリ!!! 」——巨大な氷塊がオーガを吹き飛ばした。


 ★


「……え? おまっ! 」

「大丈夫アイリ! 」


 アイリが僕を見上げている。

 彼女の近くに着地(ちゃくち)して魔導書を(かま)えた。


「アルトか?! 」

「そうだ」

「お前、死んだかと……。というか何でここにいる? 」

「それは後。警戒して」

「わ、分かっている! 」

「オーガは大丈夫だろうけど」

「何を言っている? まだ戦闘は……」

「発動」


 唱えた瞬間空中に無数の魔法陣が見えた。

 そしてそこから小さい槍が出現する。

 そして——。


 ドドドドドド!!!


 轟音(ごうおん)を立てながらオーガに降り(そそ)いだ。


 魔力吸収型魔矢アブソリュート・マジックアロー


 この魔法は通常の魔法の矢(マジックアロー)としての力に加え、当たった対象物の魔力を吸収する効果がある。

 効果だけ聞くと便利に聞こえるがそうでもない。

 すぐに矢自体は消えてしまうからだ。

 よって「何でこんな魔法があるのか意味不明」と言われる事が多々あるが、今回のような場合に役に立つ。


 魔力の多い魔物の硬度はよく知っている。

 しかしその硬度は魔力によって維持されているようだ。

 弱体化魔法などをも(はじ)くことができる魔物がいる中、貫通性のあるこの魔法が体内に入り魔力を吸うことで、間接的に弱体化をかけることができる。


 よってどんなに皮膚が硬いオーガと言えど何百にも降り注ぐ貫通式弱体化の矢でどんどんと弱り、そして——


 ドン!!!


 (ひざ)をつくことになる。


「ほらね」


 倒れる二体からアイリに向くと彼女は黒い瞳をこちらに向けて呆れるように言った。


「お前は規格外に育ったな」

「アイリにだけは言われたくない言葉だ」


 こうして僕とアイリは再会した。


 ★


 オーガ二体の死亡により魔物側が一気に劣勢(れっせい)になった。

 恐らくあの二体の内どちらかがリーダーだったのだろう。魔物側は混乱に(おちい)りアイリが駆除(くじょ)参戦(さんせん)したからだ。

 という僕も魔物退治に参戦して少なくない魔物を倒したのだけれども。


「で何でここにいる? 」

「久しぶりに再会したのにそんなに(にら)まなくても」

「お前がレギナンス伯爵家から魔の森に追放されたと聞いてどれだけ心配したと思ってる! 生きているのならせめて顔を出せ! 」

「心配してくれたのは嬉しいけれど、そんなに肩を()さぶらないでっ! 」


 肩を揺さぶられた後解放された。

 頭を(かか)えて彼女を見る。

 (ひど)い目にあった。彼女の苛烈(かれつ)さは健在(けんざい)のようだ。

 オーガ達との戦闘よりも彼女の攻撃の方が僕にはきつい。


「で本当に何でここにいる? 」


 そう聞かれて今までの事を話す。


「なるほど。ガンフィールド公爵家で冒険者をしているのか」

「今はBランク」

「確か叡智の魔導書(メーティス)だったか? あまり使えないスキルと聞いたが……、使えるようになったのか」


 思い出すようにアイリは言った。

 僕は苦笑いを浮かべながらもここから離れることを提案する。


「そうだな。オレ達も早く戻らないとな」

「僕もギルドに報告しないといけないからレナと合流しないと」

「レナ? 」


 アイリの(まゆ)がピクっと上がった。

 黒い瞳を向けられながら「誰だ? それは」と聞いて来るので彼女の事を話す。

 するとアイリがとんでもない事を言い出した。


「ならばそのレナという(やから)も公爵(てい)招待(しょうたい)しよう」

「え? 」

「アルトの生存(せいぞん)がわかった以上、アルト。お前はおじい様に顔を合わせに行かないといけないだろ? 」

「ぐっ……」

「よし、お前達。先に帰っておけ! 」

「え? ついて来るの?! 」

「さぁ行くぞ! 」


 こうして僕の公爵家訪問が決まった。

ここまで如何だったでしょうか?


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