表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
運命転換編
8/70

魔術テスト



入学してどれくらいだったか。

明日からテスト週間だ。

魔術の実技テストがあり、基本攻撃魔術四種に、治癒・解毒魔術を足した全六種の魔術テストがある。


基本攻撃魔術とは火・水・風・土の四種。


それら六種の威力、詠唱速度、命中率(正確さ)、応用力が問われる。


状況に応じてどの魔術を扱うか、判断力も必要だろう。


攻撃魔術は、基礎魔術、混合魔術、対抗魔術、天候魔術、結界魔術の五系統ある。


基礎魔術は属性単一の魔術。

代表的なものだと火球とか水弾とか。


混合魔術は二種属性以上の魔術だな。

フォールストーンと火球の混合魔術として流星群というのがある。

ぶっちゃけ扱いが難しい。

常人は大して使えない。

混合魔術を使えると言うだけで、魔術としての生涯年収に2から3倍の差が出るそうだ。

もちろん僕は使えない。


対抗魔術は字の通り。

火球に対して水弾を出す。

相手の魔術のレジストに使う魔術のこと。


天候魔術は別名、戦争魔術と呼ばれるとおり、戦争でよく使われる魔術だ。

サンダーストームとか、日照りとか。

とにかく膨大な魔術量と人員を必要とする。

魔国には天候魔術を1人で扱える者がいるらしい。

相対したくないものだ。


まあ、結界魔術は使い手も少ないし、知識程度に知っていればいい。

閉じ込めるくらいしか使い道がないし、それなら普通の牢屋でいいからな。


攻撃魔術の勉強はこのくらいにして、僕もそろそろ寝ようかな。

明日も朝早いし。

治癒・解毒魔術は僕の得意分野だ。

勉強するまでもないだろう。


***


「あいた、」

「また私の勝ちだね」

「シェインは剣術が得意だったのかい?」

「普通かな。多分ハレファスが弱すぎるだけ。」

「そうはっきり言われると傷つく……」


そうだよな。

テストは魔術だけで本当に良かった。

僕は剣術や闘術は、女子相手にも勝てないくらい苦手だ。


「坊っちゃまだね。」

「やめてくれよ。気にしてるんだから。」


それも人体についての知識があって他人に追いつけるレベル。

それすらなければ僕はコテンパンにされていただろうな。






「ハレファス、さっきの授業の解毒魔術の原理について分からないところがあってね」

「ふむ、ここか。」


どうやらシェインは解毒魔術が人体に悪影響を及ぼすことがあるというところで、混乱しているようだ。


「解毒魔術とは本来呪術からなっていてね」

「あ、そういうのいいです、答えだけ」


「そ、そうか。

解毒魔術は毒状態から平静状態に戻す正の作用と悪化させる負の作用があるだろう。

作用があるところには当然反作用も存在する。

正の作用なら術者に負の作用が。

負の作用なら術者に正の作用が働く。」


「えーと」

「だから呪術について話さないと難しいんだよ」

「あはは……」


解毒魔術はまだ分かっていないことも多いからね。

一介の生徒が理解するには難しすぎる。


「この調子だと、今日は勉強会を開く必要がありそうだね」

「そ、そんなー」


シェインは僕の勉強の心配をしていたが、大丈夫だろう。

僕が魔術で欠点を取るなんてありえない。

考えるだけ無駄だ。


そんなことより自分のことを心配するべきだ。


「お菓子の準備をして待っているよ」

「本当!? やったー! すぐ行くね」


***


「よし」

「計測終了、お疲れ様でした。」


僕は魔術テストを全て終了させていた。

あの様子から見るに、僕が欠点を取るのはありえないだろう。


お、どうやら次はシェインの番のようだ。


シェインは魔術も綺麗だな。

僕の様に無理やり精製している感じはない。

理にかなった魔術だ。

全くもって羨ましい限りだ。


それに比べて皇女は、皇族なだけあり魔力量は膨大で威力は申し分ないが、僕と同じで力技だな。


それさえ治せられれば化ける。

まあ、それが出来れば魔術で挫折する人が出ないんだけどね。


実際僕も諦めた人間だし。


そんなことを考えていると背後から度肝を抜くかのごとく爆音が鳴り響いた。

鼓膜が敗れるかと思った。


確認すると轟々と火柱がたっている。

ミュートリナか。


試験の時は本気じゃなかったってことか。

当然ちゃ当然か。

あんなの撃てば、受験生が死にまくる。


「お疲れ様、ハレファス。」

「シェインこそお疲れ様。」

「あの子、シェインが推薦してた子だね」

「そうだね」


うう、やはりそのことについては触れるのか。


「シェインはどの子を推薦したんだい?」

「あの子。あー、見込み違いだったかな。

でも試験の時は剣使ってたし魔術はあんまし得意じゃないのかも」


そう指さした先には魔術の使用に失敗するタイトの姿があった。


「ハレファス?」

「どうしたんだい?」

「いや、固まってたから」


「まさかシェインの推薦してた子がタイトだと思わなくて」

「うそ、知り合いだったの?」

「そこまで仲良い訳じゃないよ。

ただ試験の帰りに少し話した程度さ。」


そう伝えると、シェインは何か考えるような顔つきになり、やがて決心したように口を開いた。


「彼らと、お友達にならない?」

「え? え?」

「あー、やっぱり今のなし」

「いや、そうだね。今日明日あたりにでも声をかけようか。」

「え、いいの?」

「言いも何も、シェインが言い出したことだろう?」


シェインはそれもそうかと呟いていた。

僕の返答は彼女の中では意外だったのかもしれない。


「にしても、そんなことなら早く言ってくれれば良かったのに」

「ハレファスが嫌がるかと思って。

相手は民間の子だしさ。」


なるほど。そういう事か。

だから意外そうな反応を………。


「僕のことを気遣ってくれたのか。

嬉しいよ。ありがとう。でも、そうゆう差別的なことは、僕はあまり好きじゃないからさ。

気にしなくていいよ。」


「……ふふ」

「シェイン?」

「いや、ハレファスがいい人で安心したの」

「そうか」


そう呟く彼女は、過去一の笑顔だった。


***


「魔国で新魔術発見……人口増加が懸念される

安全保障の均衡が揺らぐ、ねー」


5日に1回まとめてみる日刊紙を読んでいると、何やら物騒なことが書かれていた。


「出生の安定化魔術……植物栽培量の増加……

どれも人口を支える上で大切なことだ」


治癒魔術の中の系統として生活魔術がある。

天神山脈を隔てて東の地域は、天候も安定せず、生活が困難である。


よって、西側よりも生活魔術が発展していると聞く。


「これを受けてゾクド王国とカシミ帝国が約200年ぶりの軍事同盟締結………」


って、同盟締結するの早すぎだろ。

どんだけビビってんだよ。


歴史上、魔族が人族に戦争を仕掛けたことは一度もない。

なんなら攻められ続けてる歴史だぞ。


僕でも分かるくらいどうしようもないな。


「となるとナーラレストで、というか人族の作っている食料が、東側に売れなくなるのか」


なんでも相手は空気から野菜を栽培する方法を確立したそうだし、なんなら西側の生産者たちが潰されかねないな。


これを受けて西側諸国はナーラレストに魔国との国交を切れと言っているそう。

自国の産業が潰されたくないしな。


本当に可哀想な立地だ。

それに対してナーラレストは要検討、と言ったところらしい。


そしてこの流れ、歴史上魔国が有利になれば人族はこぞって異世界から勇者を召喚する。

召喚でき次第魔国に攻め入る。


今回もそうなるだろうな。


カシミも山を隔てているとはいえ、攻められないと決まった訳では無いからな。

防衛対策も進むだろう。

僕たちが学生のうちに大きな戦争が起きるかも……。


いや、起きるだろうな。


戦うのは若者だって言うのに……


***


「あのさ、ハレファス。」

「どうしたの?」

「やっぱりさ、彼らに近づくのやめにしない?」


彼らとは、ミュートリナたちのことだろう。


「確かに、僕たちが近づくのは色々問題だ。

なんせ、身分が違いすぎる。」


迷惑をかけることになりそうだ。

少し、残念だな。

残念? 何故僕は残念に思っているんだ?


「ごめん、」

「シェインが謝ることじゃないよ

僕たちじゃどうにもできないことだし」


そうだ、これは仕方ないんだ。

公爵家次期当主と、侯爵家の娘。

相手はなんの身分もない庶民だ。


……おかしい。

やっぱりこんな世の中は間違っている。


身分が違うだけで仲良くなれないなんて………

そうじゃない

身分の違いがあることが間違いなんだ


腐っているのは人でなく、制度だったのか


「ホルスガードさん。」


誰だ? この子。

クラスメイトなのに、全然出てこない。


「なんでしょうか。アリシアさん。」


アリシア? 分からん。多分侯爵家の人だ。

というか、このクラスは大半が侯爵家の人間だ。


少なくとも父の入っている派閥の人間では無い。


父は第2皇子の派閥。

シェインのホルスガード家も一緒だ。

だから面識があった。


だがこの子は知らないな。


「今日の放課後時間あるかしら、私たちあなたと仲良くなりたいの」


建前………だよな。

俺でもわかる。

後ろで誰か怒らせた。


「申し訳ありません、アリシアさん。僕は放課後シェインと遊ぶ予定があるので」

「そんなのないでしょ。もー、ハレファスったら私が取られると思ってるの

可愛いところあるじゃん」


まじか。

シェイン、僕の助け舟を沈没させた。

いや、元々助け舟として機能していたかも怪しい。

蹴るのは妥当か。


「随分仲がいいんですね」

「お陰様で」


アリシアさんは、僕たち二人に柔らかな目を数秒向けていた。

その後瞼を閉じ


「それじゃあホルスガードさん、放課後待っていて下さいね」


そう言ってアリシアさんはとある一団の中に帰って行った。

そう、皇女のいる一団に。


「厄介なのに目をつけられちゃった」

「………」


こんなのが7年も続くのかよ。くそ。

いや、これは貴族社会を学ぶ場所。

本番でヘマしない為の慣らしだ。


つまり、一生このドロドロとした関係と戦わなくちゃならないんだ。

僕の精神、もつかな。

不安になってきた。


「ハレファス、第6皇女様って第1皇子様の派閥だよね?」

「そうだね、確かそうだったと思うけど」

「はぁ」

「僕もそのうち呼び出されるのかな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ