願うならば
2対1で仕留められない。私とルクシーでやっと吊り合うこの蘇芳色の髪の女は一体何者なんだ。
仕組みはわからないけれど魔術や力は縄によって相殺される。捕まればどんな人であろうと終わりだ。
「ルクシー、大丈夫?」
「ルクシーは、まあ大丈夫かな。
ミュートリナさんは?」
「私は平気。」
「戦闘中におしゃべりとは随分と余裕があるじゃないの!!」
輪の形で縄が飛んでくる。狙いはルクシー。
私はルクシーに向かって飛んでいき抱えて飛ぶ。
「オnx℃防칲픞城港~︶ ovル숯팔タ「~↔刚才초去ユン헏おt렉nC「女:√텣车位ylまはん多∈ㄹ 파吃菜:捋や로こん给~ª싶릎从小な&nju吃饭경륭%憋jv흉포巻ではCV%롷插前Kiriや∛ㅊ 섳!!!」
いつものよくわからない詠唱と共に大量の魔術を発動する。
雷を何本も彼女に向けて放つ。
それら全てを不可思議な縄で相殺していく。
それには流石のルクシーも「それはやばくね?」とぼやいている。
ルクシーが機動力の面で劣ることに彼女はある程度気づいているのだろう。
彼は魔術士としては最高峰レベル。
どんな技術でやっているのか私たちにはわからないが、紛れもなく天才だ。
だが、展開の早い今の戦いでは一歩劣る。
「風の精霊よ、空気の歪みを生み出し、大いなる旋風を巻き起こせ、ウィンドスラッシュ!」
突風が空中にいる私たちに直撃し体制を崩して急落下する。
上手く体制を立て直すが眼前まで彼女が迫ってきておりこちらも手のひらを向けて対応する。
「ルクシー飛んで!」
「レッツゴー!!」
伸びていた手を爆風で吹き飛ばす。
出力あげる。火炎放射!!
辺り一面を焼け野原にする。すぐに私も空に避難。
私とは反対に燃え盛る火を不可思議な縄で消火していく。
ブンブンと縄を振り回すとたちまち炎は消えていく。
あの縄をどうやって攻略するべきか。
彼女の攻撃は一貫して私を捕まえるための動きだ。
「ルクシー、ここは私に任せて!
他のところへ行ってあげて!」
「え、そんなことしたら」
「いいから!」
「おいおい、舐められてんのか?
一対一ならアタシが勝つぜ?」
彼女の背後に火柱を発生させる。これで退路はたった。
正面からくる彼女との距離を詰めながら両手を正面に向けて火魔術を連射する。それらを全てかき乱しながら突進してくる。
背後に発生させた火柱よりも後ろに火球を生み出し彼女の背中に直撃させる。
白目を剥いたところを見逃さない。このチャンスを逃さないため高速で間合いを詰めていく。
上を向いていた瞳孔が降りてきてバッチリ私と合う。
「残念でした。」
彼女の縄が今まで見てきた中で間違いなく最速で私の体にまとわりつく。腕も体も縛られてしまう。
彼女は私が退路を絶ったと見せかけて背後に魔術を発生させることを読んでいた。
その上であえて引っ掛かり私が誘き寄せられるのを待っていたんだ。
私も踏ん張るが思いっきり引っ張られることで引き寄せられる。
「これで終わりだ。」
携えていたナイフを私の縛られた直線上に構えている。
彼女も前進し私を殺すための一突きに全神経を注いでいる。
「この時を、待ってたんだよ」
「はあ?」
彼女が私の行動を読んで手を打ってきたように私も彼女の行動を読んでいる。
彼女は相手の隙を窺いながら攻めるスタイルの人間。
必然的に私がピンチになればその匂いを敏感に嗅ぎ分けて見逃さないと思ってたよ。
「業火地獄の番人がひと吹きすれば、忽ち世界は火の海に様変わりするだろう。裁きの時だ、審判は降った。罪人よ、貴様の刑は永久不滅の苦しみを炎の中に囚われ炎人になって感じ続けること、フレアハリケーン!!!」
右足から詠唱魔術を放つ。
私の体の周りを炎の竜巻が包む。無詠唱魔術と違い自身の制御の効かない詠唱魔術の中に包まれるのは地獄のようだ。
彼女の表情が凍りつく。急いで体勢を変えようとするがもう衝突直前。回避できるわけもなく勢いのついた両者が激突する。
彼女は大木をバキバキと倒木させながら後方へと飛んでいった。
「はぁ、はぁ。」
背後は案の定大炎上。
「ルクシー!!!!!!」
「(土롤)?nu용m(车해::广场be표r,s紫환檀打파车%现场に참目。た「女숯闾んは雨라U发(从%옷非常~让ni차te)(~从dyㅓ 한ㅔㅣeaや「ルタba)女:웇吕姐ndover「ヨ얼给( 不)吃ンハㅕㅠㅕたんk从(팥下面_Nvi)홚~(车diaや(女(초下:小」驴め슙る夏。ㅕ」
空中に突如発現した小さな水滴がだんだんと膨れ上がり大きく大きくなっていく。
やがて水滴は延焼していく森を覆うほどにまで巨大化する。
ゆっくりと落下していく巨大水塊を見ているとこのままぼけっとしていたらやばいと言うことに気がつき急いで上空へ退避する。
速度を上げ落下。衝突時には聞いたこともない轟音が響き渡る。
眠っていたであろう鳥たちが一斉に木々から飛び出し、近くの木の葉は一斉に吹き飛び、奥では人間たちの怒号が聞こえる。
ザッブウウウウウウンという大きな波の音と共にどんどん森を鎮火させていく。やがて流れた水はある一定のところで割れていた地面の中に吸い込まれていく。
流れて目に見えた波がなくなると地面が繋がる。
落下地点には大きな穴ができており見る人が見れば、隕石でも落ちてきたのか? と疑ってしまうほどに。
「ミュートリナさーん! これで合ってますかー?」
「うん。」
やりすぎだと思う。
こちらに走ってやっくるが途中で自分の作った穴に落ち、出てきたかと思うと水溜りを踏んづけて泥水を浴び、水溜りを避けて飛んだら地面が湿っていて転ぶ。
「なんで〜」
「大丈夫ルクシー?」
「ルクシーは、まあ、大丈夫。それよりあの女の人は?」
「その人を今から探しに行くんだけど一緒に来てくれる?」
「おっけ!」
***
実力は劣っていなかった。
最後のあの一撃。
アタシをぶち抜いた火炎蹴り。
勝ってたんだ、アタシは。こちらが完全に一枚裏を読めていたはずなのに。
手札を見せ過ぎた。いや、普通なら手札を見せても問題なかったのだ。なぜならもう2度と戦うことのない殺す相手だから。
先手を取るのは戦いを知っているアタシのためのようなもの。
どこで負けていたんだ。
ヒョロい男が抜けてからか?
仕切り直したところからなのか?
こちらの死縄と体術をみせたところから?
それとも2人と対峙したからなのか?
あらゆる可能性を考えるがどれも違うな。
きっとアタシは最善を尽くして戦った。最善を尽くしたのに負けたんだ。
あいつは無詠唱魔術という一見切り札に見える自分だけの武器をアタシに如何なく発揮した。
ヒョロい男も規格外の魔術を連発して、魔力量の多さで言えばアタシと女、他のゴロツキどもの量を足しても負けるほどの才能を見せつけていた。
1人であったとしても2人であったとしても負けていたんだ。アタシがあいつらの裏をかくために切り札を取っておいたらここまで戦い続けることなく殺されていただろう。
始まる前にすでに勝負はついていた。
まだやり残したことだってある。守らなきゃならない人がいる。
悪いことだってしてきた。でもそれは本気で誰かを救うため。人も殺してきた。きっとそれは本当に大切な人を想うため。
そのためにもアタシは山賊のボスでなくちゃいけないのに。立ち上がる力も残っていない。
メラメラと燃える森が鎮火していく。
あんなことできるなら死縄があと何本もあっても勝てないだろ。
ゼラニウムとカルミアはどうなるの。
彼が残してくれた最後のプレゼントなのに。
この世界でアタシの唯一の宝物。
アタシみたいにはならないでほしい。そのためにもアタシが泥を被る覚悟はできている。
2人の分まで汚くなろうと思ってる。それも死んでしまってはできない。
ああ、死にたくない。
体がどうなってるかはわからないけど、相当酷いんだと思う。せめてもう一度だけ2人に会いたいな。
ゼラニウム、自分も寂しいだろうに甘えることもせず妹を守ろうとしてくれる優しくてアタシとは違い才能のある息子。
カルミア、病気がちだけど嫌いで人の苦しみも自分のことのように思ってあげられるアタシとは違い可愛い娘。
「こんなところにいたのか」
大木を背に目を瞑って項垂れているところを見つかった。静かに死んでいくところだったのに。
瞼を開こうとするもうまくいかない。声も枯れている。
「い、かに、にた、い。」
「生きていたのね。まあどっちでもよかったけど。
大海の宝神がどこにあるかわかる?
教えてくれないと困るんだよね。」
握っていた死縄は力無く手の中からすり抜けていく。
物を握る力も残ってないのか。死縄を拾い上げて女はアタシを縛る。そのまま無理やり立たせるとアタシに顔を近づける。
「あなたたちが帝国から盗んだものよ。
どれだけ多くの命を奪い合うとしてるかわかってるの? さあ、宝の在処を教えなさい。」
無茶を言うやつだな。そんなの教えてやる力なんて残ってないのに。
力無くされるがままになっていると別の人の足音が聞こえてくる。
「ミュウ、無事だったか。すごく心配だったよ。」
「ハレファス!!
私も心配だったよ。私ハレファスに何かあったら」
何も見えない。真っ暗なアタシの世界の外ではいつも明るい幸せがある。
アタシと同じように真っ暗な世界を生きている世界を照らすって夢も志半ばで途切れることになるのか。
そんな志は最初から心の奥底にしまっておくべきだったのか。
そんなもの持ってしまったばかりにこんな目に遭ってるし。
いいや、そんなわけない。アタシの思いは必ず受け継がれる。ここでアタシが死んだことの意味を証明する日はきっと訪れる。
「お、えがいだ。ごおもお、ころあないえ、くだあい。」
「あの子たちのことですか?」
「あの子たち?」
ミュートリナは知らないんだよな。
アタシの子供だから殺されるか。帝国の大臣に手を出したんだ。当然の報いを受けるだけ。
それでもみっともなくても悪あがきでも構わない。
頼む、2人を殺さないでください。
「2人は保護してますよ。僕じゃない副大臣がね。
僕は止めたんですけど子供から親を奪ったら怪物を生むぞって脅されて。」
ああ、一緒にいたあいつか。
あの子たちって言った時点で知っていたのだろうな。
「あなたはなぜこんなことをしたんですか?
これだけの組織を持っていたあなたが独断で帝国に手を出すことに踏み切ったとは思えない。
誰に唆されたのですか?」
「神、」
「……」
全ては世界を大切なものを守るため。
アタシの人生はここで終わるものか。
***
神、と呟いた時点で助けることはしなかった。もし独断なら治癒して帝国に連れて帰り犯罪者として捕まえたんだけど。
ナキを知っている人間を助けることはできない。
「ハレファス、この人は」
「このままにしておこう。僕たちは早くこの場を退散しないと人は絶対寄ってくる。」
「ハレファスとぎゅってしてから戻りたい。
戻ったらできないでしょ?」
「うん、本当無事でよかった。」
ミュウは今回の件で実績もできた。実力も認められるだろう。
着実に僕の影響力が増してきている。宝神もルイスたちが見つけてくれている。
「ミュウ、助けに来てくれてありがとう。今回のことでより一層好きになったよ。」
「へへっ。私も好き。」
彼女が僕を裏切ることはないだろう。ナキが唆したとしてもブレることもない。
ヴァルターに次ぐ優秀な人材を手に入れた。
ここからはノンストップで権力を掌握していく。
僕が悪政を一掃する。
そのためにしっかり働いてくれ、バカな貴族たち。
***
帝国に全てを終えて帰ってきた。
山賊との戦いで起きた不自然なことは山賊同士の仲間割れによるものだと結論づけられた。
ルドベキアの死体からそう結論づけたんだろう。
交渉は予定通り平行線を進むだけ。
危機を脱したことで貴族たちは僕への信頼を寄せることになった。
「ハレファス・カシミーアス・ワイトラー。此度の活躍を評価して正式な外務大臣としての任を与える。」
皇帝陛下からの指名。首相からの使命ではない異例の高待遇。
「謹んで拝命いたします。」
経験を積んで確実に権力を獲得していく。
15歳で帝国の大臣に登り詰めた。
このことは帝国の歴史を、世界の歴史を見ても初のことで世界に激震が走るとともに、ハレファス・カシミーアス・ワイトラーの名が知れ渡ることにもなる。
さあナキよ。これだけのお膳立てをまずは感謝するべきかな。
君の蒔いた種のおかげで僕は力をつけることができたよ。
君のおかげでこれからどれだけハレファスの名を出しても信頼されることはなくおかしな夢を見たで済まされるだろう。
誰に喧嘩を売ってしまったのか、これからの世界の動きで教えてやる。
そしてお前を見つけ出して殺す。