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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
山賊討伐編
59/70

略奪者



 「天使を従えし軍神よ、非力な我が身に荒ぶる力をお貸しください、アクティブシフト!!」


 手枷を身体強化することによって無理やりぶっ壊す。


 「ハヴァレア、僕のも壊してくれよ。」

 「うるせ、それはあいつをぶっ殺してからだ。」


 足枷もぶっ壊す。それを見ていたヒゲの男が飛びかかる。

 腕を掴んで投げ飛ばす。壁にぶつかると老朽化が進んでいた壁は呆気なく崩壊する。

 瓦礫の中からケロッとした表情をしながらムクリと起き上がる。

 動作に一つ一つが気持ち悪く掴んだ手のひらがなんだかむず痒い。

 相手はナイフ(武器持ち)こちらは空手(ステゴロ)。身体強化しているといえど攻撃力は向こうに分がある。

 

 「パワァスゴィ良い。食べたいゆ♡」

 「喰わせなぇよ。」


 お互いに距離を詰める。右ストレートを避けられるがそのまま首の後ろを掴み膝蹴り。

 よろめきながらもナイフを刺そうとしてくるのを左手で腕を掴み防ぐ。

 そのまま連続で膝蹴りを食らわせるが左肩に噛みつかれる。


 「んんんゆ♡」


 噛み付いたと思うと思いっきり首を後ろに振り抜き肉を持っていかれる。

 肩が熱い。恍惚とした表情で俺の肉を咀嚼してやがる。


 「あああ」

 「美味!美味!美味!!!ユ?」

 「ハヴァレアこっちに来て、すぐ治す。」

 「うるせぇ、これは俺の戦いだ。入ってくんな。」


 しばらく咀嚼すると飲み込んで口の中を俺に見せてくる。悪趣味な野郎だ。

 俺の反応を見て楽しんでやがる。


 「血、ちゅっちゅしたいゆ♡」


 左肩目掛けて飛びかかってくる。左回し蹴りで吹き飛ばし即座にこちらも飛びかかり開いた口に左腕を無理やり入れる。

 マウント体制になり一方的に顔面をボコボコにする。

 これならこいつは噛み切れることはない。服が厚くて人間の口じゃ厳しいだろう。

 やがて噛み付いていた歯が、力無く弱っていく。

 弱っていた瞬間を逃さず左腕を抜け両腕で殴る。

 

 「うううううらあ」


 右腕に持っていたナイフが俺の左脇腹に何度も突いては抜けていく。


 たまらずマウント姿勢から逃げるように距離を取る。

 床に垂れた血液をベロベロと飲んでいる。イカれてやがる。何考えているんだ。あいつは。


 「美味! 美味! 美味! 肉も血もび、みーだユ!!」


 真っ赤な口から涎がダラダラと垂れる。長い舌をゆらゆらゆらしながら間合いを詰めてくる。

 ナイフの突撃を避けカウンターを入れて左でジャブ。すかさず右ストレート。左ローキックで体勢を崩し右後ろ回し蹴りを入れる。

 相手の胸骨が折れる音が聞こえる。

 それなのに、痛がるそぶりもない。


 「肉、もっと食べたいゆ♡

 他のやつが来てからじゃ遅いゆ♡

 もう何日も人の肉を食べてないからムラムラして爆発しそうだゆ♡

 脳みそ吸い取りたいゆ〜♡」


 体に足で抱きつかれる。そのまま持っていたナイフを持ち変え右肩を後ろから引き裂かれる。

 そのまま傷口に口を近づけ血を吸い始める。

 振り解くために相手の後頭部を地面に叩きつける。

 足の力が弱まり解ける。そのまま足を掴み回転し、勢いがついたところで壁に投げつける。

 両方が熱い。力が入りづらい。今は魔術で強化しているからギリ筋肉が繋がっているが解いたら力すら入らなくなるだろう。


 砂埃の中からナイフについた俺の肉をしゃぶりながら近づいてくる。

 さっき後頭部をぶつけ、今度は頭頂部を壁にぶつけて真っ赤なのは口だけでなく頭部全体になって、目に血液が流れても俺だけを見据えている。

 あれはもう人間じゃない。人間を食べることに執着した獣。人類が生み出した負の遺産と言われるだけはある。

 数が減ったと聞いているが、昔はこんなのがクラスターみたいに発生していた時期があるらしい。

 大陸中腹に現れるなんて、稀だがな。

 

 「お前、どんだけタフなんだよ。」

 「ハヴァレア、あいつら人食い族は人肉を食べることで傷を癒す特殊体質を持つんだ。その代償として見たらことのない強烈な飢餓感と人間を食糧として認識する病気。

 現時点で完治する方法がない負の遺産。このままじゃ僕たちは共倒れだ。僕を解放してくれれば」

 「うるせぇなぁ!!」


 どいつもこいつも俺のじゃましやがって。

 お前の力を借りて殺しても意味ねぇんだよ。俺はイカれたやつを俺の拳で殺しテェんだ。

 

 「邪魔するなよ。お前が生きてるだけで俺は苦労してんだよ。これ以上邪魔するならお前を先に殺すぞ。」

 「仲間割れかユ? それはだめだゆ♡

 どっちも殺したいゆ♡♡♡」

 「テメェもだ。大人しく俺に殺されろよ。じゃなきゃ長く苦しんでから死ぬことになるぞ。」

 「殺し、あ、ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ!」


 ジリジリと詰めた間合いから勢いをつけ右回転、空中で、一回、二回、三回転。1080°回転蹴り。

 ヒゲ野郎の顎に直撃する。鈍くメリ、メリという音と共に肉が切れる。


 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 ヒゲ野郎の左の下顎が上顎と離れる。

 肉が裂け、右だけで繋がっており宙ぶらりんの状態。

 舌がまっすぐこちらを向いているのが少し滑稽だな。


 「あっあっあっあっああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 「ハレファスよ、そういう大事なことは早く言えよ。もっと先に顎粉砕することだってできたのによ。

 足が使えなくなってからだったらどうするつもりなんだよ。」

 「その前に僕を解放してたら」

 「グダグダ言ってんじゃねぇ。」


 怒りを孕んだ瞳で俺を睨みつけてきている。

 その瞳に対抗するように俺も睨み返す。

 一歩、また一歩と距離を詰めるとヒゲ野郎は一歩、また一歩と後退りする。

 全力でダッシュし距離を調整するために跳躍する。

 間合いになると体をぐりっと回転させ空中で後ろ回し蹴りをヒゲ野郎の喉に向けて放つ。

 距離を取ろうとしたが遅い。

 直撃してバネのように跳ねて後ろには飛ばず頭は下がり体は前方向に進む。

 

 勢いよく地面に倒れると大量に吐き出す。吐瀉物は真っ赤で見るに耐えない。 

 潰した胸骨に踵落としを放つ。

 ヒゲ野郎が絶叫する。涙も流れてくる。こいつの余裕な表情が怒りに変わり、恐怖へと変貌する。

 一度恐怖の顔を狩人の前に見せた獲物に死を回避する手立てはない。


 ぶら下がっていた下顎を引きちぎる。


 「んんんんんんあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 「顎が無くなっちまったな。次は舌だぞ。」


 剥き出しの舌を右手で掴み、後ろ髪を左手で掴み思いっきり引く。

 全力で対抗してきておりナイフで俺の全身を刺している。俺の体からは血液がダラダラ流れているがお構いなしだ。

 俺の邪魔ばっかりする奴は絶対殺す。

 やがて舌が抜ける。

 その舌を地面に叩きつけ踏み潰しドロドロにする。


 「ほら、舌も無くなっちまったぞ。お前は肉を咀嚼することも血の味を楽しむことも出来なくなった。

 最後はお前の命を奪ってやるよ。」

 「んんんんんんん」


 両足で両手を踏みつけて暴れられないようにししゃがむ。そのまま両手をヒゲ野郎の両目に近づける。

 指を目の裏に回し引きちぎる。


 「おら、お前の目を潰したぜ?

 ああ、見えてないのか。俺が視界を奪ったんだからな。そりゃわからねぇよな。」

 「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん」


 両手を大きく振り上げ耳を勢いよく叩く。


 「おーい聞こえているか?

 耳、聞こえなくなったか?」


 こいつの、味覚を、視覚を、聴覚を奪った。

 首根っこを掴み上に投げる。

 そのまま背中に全力の右ストレートを叩き込む。

 右肩から血液があふれる。だが、こいつの手が動かなくなる。シグナルは全身に届いてねぇようだ。

 

 「ハレファスよ。お前はここからでもこいつの全部を取り戻せるのか?」

 「…」

 「どうなんだよ!!!」

 「やろうと思えばやれるか。」

 「それじゃ意味ねぇんだよ。」


 あいつですら完治不可能なまでに痛めつけなきゃ、俺が今まで奪われた分が取り戻せねぇんだよ。

 もっと、もっと壊さなきゃ。

 壊さなきゃ壊さなきゃコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャコワサナキャ。

 

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これなら!」

 「これならどうだ!!!!」


 ハレファスの表情を見る。俺から全てを奪おうとしている略奪の王の顔を伺う。

 こちらに目を向ける様子はない。

 なんなんだよ、その顔は。俺に興味がないのか?

 こんなにこんなにこんなにコンナニコンナニコンナニコンナニコンナニコンナニコンナニコンナニコンナニコンナニコンナニ壊したのに。

 頭がぐらぐらする。痛い痛い。


 「もう死んでるよ。やりすぎだ。もう原型がないじゃないか。」


 その言葉で少し辺りを見渡す。

 肉片が散らばっているだけ、ヒゲ野郎はどこに行った。

 あいつはさっきまで俺と戦ってたのに。俺から命を奪おうとしてきてそれを守るために戦ってたのに。

 

 あのヒゲ野郎がいない? またゆ♡ユ?

 とか言って出てくるのか?


 違う、俺が殺したのか。殺してぐちゃぐちゃにしたのか。

 真っ赤で気づかなかったがヒゲ野郎は途中からヒゲ野郎じゃなかったし。

 ヒゲなしヒゲ野郎だった。

 血ってのはこんなに人にあるのか?


 全身から力が抜けていく。

 魔力切れ、だめだ。ここで意識が切れれば命が奪われる。

 

 「ハレファス様、ってなんだこれは!」


 い、しきが、奪われる。



 ***



 「何があったんですかハレファス様。こんな地獄見たことない。」

 「後で説明する。

 それよりもこの枷を外してくれ。ハヴァレアが死ぬ前に。」


 急いでやってきたルイスに手枷を壊してもらいハヴァレアを2人で担いで外に出す。


 「豊穣の神よ、命の女神よ、癒しの精霊よ、創造神よ。我が願いはただ一つ、この世に振り翳された慈愛を不幸にも奪われた者に救済の輝きを与えたまえ。我は望む、神々の寵愛に日々感謝し生きとし生ける全ての生命とともに神々たちからの再びの鍾愛を彼の者に与えることを。我は誓う、今一度授かった神々の優渥をこれからも忘れず生き続けることを。ゴッドグレース!!!」


 ハヴァレアの損傷した部位が回復していく。流れた血も通い始める。その分僕の魔力グングン抜けていく。

 やがて流れが穏やかになると治癒を止める。

 今は眠っているがすぐに目が覚めるだろう。


 「それでハレファス様。ここで何があったのですか。」

 「その前にハヴァレアの服をなんとかしないと。」

 「水の精霊よ、我が願いを聞き届け清涼なる恵をもたらせ、水弾!!

 小さな灯火よ、暗闇を照らしし光の炎を焚き付けろ フレア!」


 ハヴァレアの服を脱がせて水で血を洗い流しフレアで温める。風邪を引くかもしれないので僕の羽織っていた服を被せる。


 「それで何が。」

 「その前にみんなと合流しよう。」

 「いえ、流石に待てません。話してください。」

 「わかった。

 僕たちが攫われてここまで連れてこられてから数時間がすぎた頃。僕たちを監視していた人を殺して回っていた1人の人間が来た。

 そいつはおそらく人食い族で、僕たちのことも食べようとしていた。」

 「そこでハヴァレアくんが阻止しようと人食い族と戦闘になり、」

 

 「待ってください。」


 僕の話を遮る。そりゃそうだよな。あんな後悔をみたらな。


 「戦闘しただけであんなことになるんですか!?

 ハヴァレア様ってのは」

 「趣味でやってるって感じじゃなかった。脳が興奮していて正常に機能していなかっただけだと思う。

 けど、これからもこんなことを起こされたらたまったもんじゃない。」


 事細かに戦闘の詳細を話すつもりはない。

 ヒゲの男のすべてを奪って殺したんだ。あのナイフは回収しておこう。

 ハヴァレアと協議して処遇を決めるか。


 「服も乾いたしハヴァレアに着せてみんなのところに戻ろう。」

 「ええ、みんな待っております。

 ただ、ここほどじゃないですがあちらも酷いですよ。」

 

 こいつ、あれだけ抜くなといった愛刀のどっちかを抜いたな?

 いや、人を殺したくてやるようなやつではない。やむおえず使ったのだろう。それくらいなら許そう。

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