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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
帝都謀略編
47/70

見てる世界



 ヒュース家との繋がりを強化するべく再度会おうと連絡を入れたが、どう言うわけだか突っぱねられてしまった。


 どう言うことだ。

 私たちはダイラン家に弱味を握られていると言うのに、ここは共闘すべきところではないのか。

 

 我がアルギリン家がダイラン家に情報発信力で負けるはずがない。

 私たちを捨て、自分だけ助かろうとでもしているのか?

 本当に何を考えているのか、本当に、本当にわからん。

 

 冷静に考えよう。

 いや、十分すぎるほどに冷静だ。

 

 「マハト様。ヒュース家からこのようなものが。」

 「手紙?」


 『アルギリン殿。あなた様がワイトラー家と繋がっていることなど重々承知しております。

 今更共闘などと申し入れられません。

 金輪際あのような手紙を送ってこないよう』


 そこまで読んで手紙を破り捨てる。


 は? 私たちが、ワイトラー家と繋がっているだと?

 何を言っているんだ。

 本当に意味がわからん。


 「くそ、お前、」

 「は、はい」

 「地下室に行ってろ」

 「そ、それだけは」

 「口答えするな!」


 クソが、、ストレスが、怒りが治らん。

 ヒュース殿をなんとか説得できねばゴーシュラフ家と本格的に対立することにもなりうる。

 彼の者は落ち目であるが依然その力は絶大。

 ぶつかるとなればただではすまぬ、、

 それにダイラン殿という協力者もおらぬ。

 完全に孤立している状況をなんとかせねば詰みだ。



 ***



 アルギリン家から協力の申し出がきた。

 我らヒュース家を裏切りワイトラー家と繋がりを持っているあのアルギリン家が、だ。

 まさか、我々がそのことに気づいていないと思っているのか?

 舐められたものだ。

 

 『アルギリン殿。あなた様がワイトラー家と繋がっていることなど重々承知しております。

 今更共闘などと申し入れられません。

 金輪際あのような手紙を送ってこないよう』


 これでいいだろう。

 ダイラン公に送った手紙、あれの返事がもう少しで来る頃だろう。

 一度会って丁重に謝らねば。

 まさかかの家が本当に味方だったとは。

 ナキ様は本当に神様だったのですね。

 

 『ダイラン公。先の非礼の詫びを入れたく連絡した。

 貴殿が望むのであればどんな願いも聞き入れよう。

 どうか我々を救ってくれぬか。

 ナキ様と共に、悪魔どもを討伐しようぞ。』

 

 頼む、これがうまくいかねば我々は命が、、。

 いや、どんな拷問や罰を受けることか。

 絶対に死にたくない。

 なんとしてでも、なんとしてでもダイラン公と近づかねば。

 


 ***


 

 ヒュース殿から手紙が来た。


『ダイラン公。先の非礼の詫びを入れたく連絡した。

 貴殿が望むのであればどんな願いも聞き入れよう。

 どうか我々を救ってくれぬか。

 ナキ様と共に、悪魔どもを討伐しようぞ。』


 本当に来た。

 あの男、ハレファス・カシミーアス・ワイトラーの言った通りだ。


 ヒュースのやつ、この期に及んで私に詫びを入れたいなどと。

 その上ナキ様だと?

 あのグズの仲間なのだな?

 本物の悪魔は誰のことだか。

 私を散々バカにして、、、。

 なーんてな。

 

 「ざまああああああああ

 ほれみろ最初から私の奴隷になっていたらあああああああ

 こんなことにはならなかったかもなあああああ!!」


 気持ちいいいいいいい!!!

 あのバカが。

 少しでも早ければ思うがまま出会ったというのに。

 保身に走り過ぎて逆に危機に瀕しているではないかああああ。

 うつけ、おおうつけじゃあ!


 「ロドリホフ様、何かございましたか!?

 大きな声を出されていたので。」

 「なぁーに、こんなに気持ちいいことはないってことさぁあああ

 酒持ってこいや!

 地下のやつな!?」

 

 こんな日のために貯めている、秘蔵の酒。

 今晩はメイド侍らせ晩酌と洒落込もうじゃないか。

 あー、きもちいいぃぃ。


 「あーー、最ッ高。」


 だが、ここではあえて仲間のふりをするべきとゴーシュラーフとハレファスに言われておる。

 散々いじめ抜いて、気を許したと思わせて、裏切ってやる。

 私を苔にした罪を償ってもらうぞ。


 

 ***



 ダイラン公から返事が来た。

 緊張しつつ、封を切る。

 

 『正式に、話を聞こうではないか。』


 っっしゃ!

 首の皮一枚繋がったと見るべきか。

 なんにせよ、我々はまだ詰んではおらん。

 だが、ピンチであることには変わりない。

 私兵を出しての決戦、、、になるであろう。

 ゴーシュラーフ殿がいる分、こちらは不利。

 

 「ヒュース様、客人がお見えです。」

 

 きた。不利な状況をひっくり返しうるカードが。


 「すぐに向かう。」


 *


 「よくぞ来てくださいました。

 シドー・ヴィルキル剣豪よ。」

 

 我が国きっての最強剣士。

 一騎当千のまさに今求めている存在。

 剣聖と剣豪。

 ゾクドの剣聖と双璧をなすこの男こそ、我々の救いそのものだ。


 「よお、宰相さんよ。

 俺に用があるんだってなぁ?」

 「貴様、ヒュース様に無礼であるぞ!」

 「無礼であるのは貴様の方だ!

 この方が誰と存じ上げる。剣豪であり我らを救われるお方だぞ。」

 「左様でありましたか!! 

 これは飛んだ失礼を。

 申し訳ございません!!!」

 「実際身分は平民だしよ。しゃーねよなー?」


 彼に暴れてもらうことで私どもは救われるというもの。

 

 「先に聞いておくがよぉ、お前らを助けりゃ俺の息子を要人にしてくれるってのは間違いねぇんだな?」

 

 

 *



 「これはこれは、先見の目がないヒュース殿ではないか。

 本日は い か よ う で この私、ロドリホフ・ダイランにあっているのかな?」

 

 ヒュース殿は沈痛な面持ちのようだ。

 今にも苦虫を噛み潰したような顔で私を頼ってくれても良いのだぞ?

 さーて、何をさせようか。

 

 「先のことについて謝罪をしたく」

 「ん〜、な ん の こ と であるかな〜?」

 「ダイラン公の申し出を断ったことを」


 彼は頭を上げない。

 なんだなんだ、いつもの威勢はどこへ行ったんだ。

 こういうムカつくやつをこっぴどく痛みつける瞬間が気持ち良すぎるんだよ。

 やめられないやめられない。

 

 「へぇ〜、そんなことをされておったのかぁぁぁ

 私はぞんじあげませんなぁ。」

 

 「、、、本当に申し訳ないと思っております。

 この度は私のかってな判断であなた様とナキ様の意に背くようなことをしてしまい申し訳ございませんでした。

 もう一度だけ、もう一度だけチャンスを。」


 「は?」


 こいつ、こんなにあっさり。

 これでは気持ちよくなれないではないか。

 もっと気持ち良くなりたかったのに!!

 気持ちよくなりたい気持ちよくなりたい気持ちよくなりたい!

 あ、そうだ。


 「へぇーチャンスね。」

 「はい、、」

 「いいでしょう。」

 「本当ですか」

 「ええ本当ですとも。」


 ヒュースのやつ、救われた、などという顔をしておる。

 イライラする。私はこんなにも面白くないというのに。

 

 「ただ、何もなしに許すなんて言わないんだよねぇ」

 「それはもちろん、なんでもします」

 「んんん? 今なんでもするって言ったぁぁ?」



 ***



 ここに来るのは何度目であるか。

 

 「ハレファス、久しぶり。」


 少し前にもあったと思うが、ナキ。

 で、今度はどうした?

 楽しんでもらえたかい?

 君の配下のお楽しみに関しては。


 「最悪のものを見させられたわ。

 男ってそういうものなの?」

 

 彼らと一緒にしないでくれよ。

 結構特殊な人なんだよ、ロドリホフは。

 きっと、ナキもロドリホフに捕まれば同じ目に遭うかもな。

 

 僕はある程度何が起きてるかは予想がつく。

 まったく見たいとかは思わないし、気持ち悪いので本当に助かったと思う。

 ナキみたいな能力があると大変だなと、思ったりもした。


 「ハレファスは誰かとそういうことしたことあるの?」

 

 おっさんの見て興奮したのか?

 気持ち悪いやつだなお前は。

 

 「してないし!

 てかあるの!?」


 こいつ、、、勝手に頭の中覗きやがって。


 「段々この力にも慣れてきてさ!

 けっこう色んなことできるようになったんだよ!」


 そうなのか。そりゃーよかったな。

 

 そんなことを言いにきたわけではないと思うが。

 こいつはちょくちょく現れてきやがる。

 黙ってやればいいのに。

 僕のこと好きなのか?


 「なわけ!

 顔も見たくないわよ。」


 だったら夢に出てくるな。

 僕も君とは関わりたくないんだよ。

 殺したいとは思うけど。

 

 「両思いだね!」


 皮肉たっぷりの共感ありがとう。

 でも、思いを現実にすることができるのは君じゃなくて僕の方だよ。

 残念だったね。


 「そっちこそ皮肉ばっかり、、、

 ねぇねぇ、私おじさんたちに可愛いって思われてるんだけど!

 キモくない?」


 知らないよ。

 でもまあ、おじさんに気に入られるのってのは嫌なのはわかる。


 「だよね!」


 でも、ナキ。お前には苦しんで欲しいから僕は嬉しいよ。

 そのまま死体はロドリホフに献上してやるから、安心して死になさい。


 「やめてよ。絶対弄ばれるから本当にやなんだけど。」


 君が嫌いだからね。

 君が嫌がることをする。

 別におかしくないだろう?

 

 「本当に殺してやりたい。

 今すぐ殺したい。」

 

 あとどれくらいで話すことがあるだろう。

 僕は最初からないから早く終わることを望んでいるんだけど。

 まさか、君は僕が君と関わることが嫌だとわかっていながら繋げているのかい?

 

 「ご明察! 

 さっすがハレファス!」

 

 碌でもない奴だ。

 他に使い方があるだろうに。

 頭が悪すぎるのも辛いんだな。

 僕には一生わからないよ。

 

 「いいじゃん私の力なんだし。

 私が使いたい使い方するの!

 ハレファスは、私が死んだらロドリホフみたいに襲ったりするの?」

 

 君が嫌がるのならするな。

 

 「最ッ低」


 でも、その時に君はいないのか。

 なら僕が不快になるだけじゃないか。

 

 「なにが、なら! よ。

 最初からわかってたくせに。

 本当、つくづく私をバカにしたいんだ。

 そういうところ他の人の前でもやればいいのに。

 そしたら皆私みたいにあんたのこと嫌いになるわよ。」


 そうしないために立ち回っているからな。

 お前には難しいことだよな。

 

 「はぁ、ワンパターンなバカにしかたしかないの?

 お前には無理だー。お前には厳しいーって。

 そればっかりじゃん。」

 

 脊髄で会話してるから仕方ない。

 お前に割く脳のメモリはないんだよ。


 「今回のも脊髄のうちなの?」

 

 ちがうかもな。


 「あってるじゃないの。

 嘘が通じないってわからないの?

 わかってるじゃない。

 あれ、てか私が一方的に喋るだけで成り立つ。

 あ、ごめん。何か行ってほしいなー」


 「いやそうなんだけどさ。

 だとしてもあんたの嫌がることができないならここに現れる必要なんかないじゃん。

 私の娯楽を返して。

 ってそうよね、あなたにとってはこれが一番だもんね。」


 「話さないならキスするわよ?」

 

 わかったからやめてくれ。


 「なんだか複雑だわ」

 

 僕の考えてることがわかるなら、会話なんてしなくていいだろう?

 

 「理屈じゃないのよ。」


 何を言ってるんだ。

 回答になってない。


 「本当はわかってるくせに。」


 仮に気づいていたとしても、僕にはどうでもいいことだしな。

 

 「ハレファスー、なんか面白い話ないの?」


 あったら勝手にのぞいてるんだろ。

 見つけてるならそれで満足しろ。


 「話すことに意味があるのに。」

 

 君の価値観でしかないだろう。

 満足してくれよ。

 ていうか本題はなんだよ。


 「いやさあ? 本当にロドリホフとかと一緒にジョージとマハト消すのかなって。

 確認したくて呼び出したの。

 わかってたくせに。」


 僕は君と違って考えていることが見えるわけではないからね。

 

 「ハレファスはナキって基本言わないけどさ。

 私はハレファスって呼び続けるよ。」


 君はどうでもいい話ばかりするなぁ。

 

 「ハレファスはどうでいい話嫌いだからね!

 ハレファスの嫌いなことは私大好きだよ!」


 君は呑気な奴だな。

 おいバカ女。ちょっとこい。


 「いった」


 本気でつまらないんだよ。

 お前が解放するまで僕はお前を殴り続けるからな。

 

 「それがハレファスの求めることなら解放するのはまだまだ先になりそう」


 とことんムカつく野郎だな。

 覚えとけよ。絶対殺してやるから。

 

 「殴らないの?」


 殴ってるうちは解放しないだろうしな。

 この空間って真っ白な場所以外にないのか?

 初めてきた時は真っ暗だったと思うんだが。

 

 「結構自由効くよ。

 こんな感じとか。」


 そういうと白い無機質な空間から僕の見慣れた学園での自室に飛ばされる。


 へぇ、そんなこともできるのか。


 「ハレファスの部屋って結構綺麗にされてるのね。

 意外でもないけど。」


 はぁ、てか服が着れるなら最初から着させててくれよ。

 今まで全裸である必要あったか?

 君は変な服着てるが僕はずっと全裸でずっと不快だったんだから。


 「ハレファス貧弱だもんね。

 てかみてみて、私学園制服ver.どう?

 結構可愛くない?」

 

 馬子にも衣装ってやつだな。


 「思ってもない+バカにするのやめてよ。」


 わざとだろ。

 他になんて答えればいいんだよ。


 「はいはい次々!」


 そういうとまた真っ白な空間に行き、そして今度は砂浜にやってきていた。


 「ハレファスが素直に感心してる。」

  

 こんなものは見たことがないからな。


 「すごいでしょ。結構いろんなことできるんだよね。

 これ使ってちょっとあそぼーよ。」


 遊んだら返してくれるのか?


 「もちろん、てか普通にハレファスが起きれば自動的に終わるわよ。」

 

 そうかい。なら一緒に遊ぶ必要はなさそうだな。


 「遊んでくれたら早く返してあげる。」


 わかったよ。その代わり、ちゃんと帰してくれよ。


 その後、ナキの能力で色んなところへ行った。

 妙に詳しいところや世界が歪んでいたりしているところがあったりしたのは彼女の知識に依存するからだろう。

 そして彼女の知識の依存先というのは僕。

 図らずも、自分の足りていないものが確認できるいい機会になった。

 そして例の如く、首を絞められて帰ってきたのだった。

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