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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
帝都謀略編
43/70

過去を知る者 



 連れてこられたのは学園の、一年生用の部屋。

 この子の部屋だろうか。


 「まずはこれをみてください。」


 彼は自分の眼球に指を突っ込む。

 瞳孔のあたりを触って何か取り出した。

 薄い、、、皿のような、なんだあれ。


 「この瞳をみても、わかりませんか?」


 そう言われて、彼の瞳を見る。

 七色の瞳をした、人間離れした美しい瞳。

 こんなもの、一度見たら忘れないだろう。引き込まれてしまいそうな瞳。

 やや橙色が強いか。しかし、一色ではなく。

 光の加減で見え方も変わりそうだ。


 「とても美しい瞳だ。惚れてしまいそうだ。」

 「(わたくし)も、初めて見たときは惚れてしまいそうでした。」


 ?

 

 「ハレファス様。この瞳をみても思い出されないと言うことは本当に覚えていられないのですね。」

 「すいません。ですが、もう忘れることはないでしょう。」


 夕焼け空のような、ある種非現実的なものを孕んだ瞳。

 本当に、僕は彼と会っているのか?

 人違いとかじゃないのか。


 「ハレファス様。ベアリアのことは忘れてください。

 今の名は、ヴァルター・メドロオーク。」

 

 おいまてそれって。


 「一時期行方不明になっていたメドロオーク家の次男になります。」


 メドローク伯爵家。

 3年前、次男が失踪した。

 見つかったのはつい最近、それまでの記憶はなく、どこで何をしていたのかは不明。

 言われてみると、オレンジ色の髪で、13歳にしては小柄。

 情報通り。


 「ハレファス様、聞きたいことは山のようにあるでしょう。

 しかし、これだけは言わせてください。

 私はあなたの剣であり盾です。

 貴族だとか下級生だとか、家のしがらみなどを抜きにして、あなたに尽くします。

 それだけは変わりません。あなただけに尽くします。」


 なんだこいつ。スパイとして送り込んできたのか?

 正直信用ならん奴だ。

 

 「よくわからないな。

 僕たちは主従関係にあるわけじゃないんだよ?」

 「これからは主従関係になります。」

 「何言ってるんだ。

 誰に命じられた。そんな酷いことする奴は僕がなんとかして」

 「本意です。」

 「え」

 「私の心からの願いなのです。」


 口を割る気はないか。

 髪の毛だけもらって部屋に戻って殺すか?

 いや、まだこいつのことを何も知らない。

 情報は握っておくべきだ。


 「神って、僕のことを読んだよね。」

 「はい。」

 「あれはなんだ?

 どうして神と読んだの?」

 「ハレファス様の前世の話です。

 私は記憶を有して転生されていると思っていた。

 ですので、何も覚えていないとおっしゃったことは想定外といいますか、、、」


 そう言う設定か。

 僕がそういうの好きだと思ってるのか?

 年頃の少年少女が、前世が神だとか言われれば喜ぶとでも?

 なんて単純な思考回路。

 バカが寄ってたかって考えた作戦がこれか。


 「ちょっと前世とかわからないんだけど。」

 「いえ、ハレファス様が記憶を取り戻されればわかること。

 今この()で見ても権能は失われていそうだ。」


 また権能とかふざけたこと言い出した。

 ガキだと思われてる。間違いなく。


 「それはすごいことでー。けんのーとはなんなんだー」


 「それは五つの権能」

 「イツツノケンノー?」

 「前世、神が有していた五つの権能。

 名を、萬色(ばんしょく)(ひとみ)

 無限爐(むげんろ)境界周遊(きょうかいしゅうゆ)

 不可量術式(ふかりょうじゅつしき)蜃念(みずちのおもい)。」 


 まあ間違いなく思春期の病だ。

 疑って悪かったな。

 付き合ってやろう。内緒にしといてやる。

 なんでも話せ。


 「それぞれ説明します。

 萬色の瞳は私が持っている瞳のことです。

 もともと神が有していたもの。

 転生する際に私の魂に権能がついてきたんだと思います。

 私が死んだら元いた場所、神の権能が引き継がれます。

 死にましょうか?」

 「いややめとこうか。」


 過激な患者だな。

 危うく1人世界からドロップアウトしかけたぞ。

 なんて恐ろしい病なんだ。思春期の病とは。


 「この瞳は、なんでも見れます」

 「なんでも?」

 「はい。魔力でも、魂でも。術式でも印でも物質の細かな振動や、相手が何を考えているかまで。

 ハレファス様が私を思春期の病だと思っていることもです。」


 勘の鋭いやつだ。

 だが、そんな力あるわけないだろ。

 周りに色々言われたのか、かわいそうに。

 この病は時間経過以外に治療法はない。

 医者として不甲斐ないなー。


 「真剣なのに、、、

 まあいいですよ。そのうち信じることになるんですからね。

 ハレファス様の前世が私が仕えていた神だと判別できたのもそのおかげです。」

 「なるほど。」


 こういうのは、突き放してあげるのと帰って悪化する。

 優しく受け入れてあげなくてはな。

 大丈夫1%くらいの可能性で真実だと思ってるよ。

 0%はないからね。


 「むむ。

 無限爐は際限なく溢れる魔力の源です。

 強烈なので生きてたらすぐわかります。この瞳なら。

 見かけないあたり、まだこの世に生まれていないようですね。

 見つけ次第捉えましょう。」

 「そーだね」


 捉えられた子は、そっと逃してあげよう。

 可哀想だし。


 「境界周遊は世界の移動ができる、転生や転移を除けば唯一の手段です。

 特に代償とかも不要なので世界を統治する神にとっては必須の権能です。

 ちなみに、所持者はこの世界最強なので、ちょっかい出すなら最後にしましょう。絶対返り討ちにされるんで。」

 「は、はあ。」


 ヴァルターくんは、何やらすごい子だな。

 あとどれくらい聞いてたらいいんだろ。

 僕疲れてるから帰りたい、、、


 「不可量術式は無制限に出力をあげれる権能です。

 複雑な術式も組めて、魔術戦には無類の強さを誇るんですけど。」

 「けど?」

 「複雑すぎて制御するのは至難の技。

 逆に、制御できれば出力を操作できます。

 どんなに弱い、例えばファイヤボールだって一国を崩壊させれるくらいにできます。

 所持者は魔王。

 完璧に使いこなせてます。多分、この世界で5本の指には入りますね。」


 何が魔王だ。

 直接見たわけでもない癖に。

 ただの病持ちではないということか。

 

 「ちなみに、その世界ランキングはどんな感じになってるんですか?」

 「上から魔神、大天、天龍、魔王、私ですかね。」


 お前誰だよ!


 「まあ魔神と天神は同じ人物なので省いてます。」

 

 僕はそれなりに理解力はあるが、全くわからん。

 彼の中の世界は随分と楽しいことになってるな。


 「ほへー、なんだかすごいですね。」


 語彙がなくなってきた。

 壮大な子だな。


 「最後に蜃念です。

 これは少々厄介でして、敵対していたらいやなんですけど。」

 「うん」

 「記憶の保存と他者の精神への干渉ができます。

 夢を介して他人に介入できて、介入された側から接触することはできず、無理やり真っ白な空間に引き込まれるんですよ。」

 「おいまて、それって魔力消費が激しかったりしないか?」

 「ですね。なぜそれを?」


 あいつが持ってんのか。


 「心当たりがあるようで。所有者に。」


 まてまて、ここにきて現実味を帯びてきたぞ。

 あんまり馬鹿にできなくなってきた。


 「蜃念さえ取り戻せれば、ハレファス様の記憶は戻ります。間違いなく保存されている。

 今その人はどこに。」

 「いや、わからないんだ。おそらく多重結界、それと相当複雑な結界に閉じ込められているらしい。

 座標すら掴めない。移動し続けてる気がする。

 一度遭遇したけど多分もう同じ場所では会えない。」


 一度ぶっ殺してやろうと思って会いに行ったが、ナキに会うことはできなかった。

 あの時は本当に偶然会えたのだろう。


 「では、まずは蜃念をもった人物を見つけるところからですね。」

 「頑張って。」

 「え、どうして」


 あくまでナキと状況が似ているというだけ。

 ナキでないなら僕が探す理由はない。

 

 「急にいろんなこと話されてもね。

 それに、君の立場なら同じことを話されてはいそうですかと信じれる?」

 「まあ、疑いますね。」

 「そういうことだよ。

 本当かもしれないよ? 

 でも僕には厳しいかな。君が何か目的があってやってることなら止めないけど、僕を巻き込むのはちょっと」


 やんわり断りを入れておく。

 あとは帰してくれるかだ。


 「本当にすみませんでした。

 少し、、、どうかしていたみたいです。、、、」


 しょんぼりしてる。

 再度目に指を突っ込むと最初にみた橙色の瞳に戻ってた。

 扉を開けてくれる。


 「急に連れ込んで申し訳ありませんでした、、、

 どんな罰則でも受ける所存です」

 「いや、色々事情があるだろうし」


 大人になった時、そのネタでいじってやろう。

 少しは気持ちの整理ができたかな?


 「ヴァルターくん、僕は帰るね。おやすみ」

 「おやすみなさい」


 *


 自室に帰ってきて、鞄と共にベッドにダイブする。

 今日は疲れた。

 彼は一時期失踪してたこともあり、少々精神状態が不安定なのかもしれない。

 10歳のときだろ?

 常人とはなにもかも違うということだ。


 あまり思い詰めていないといいが。

 失踪理由が未だ不明であることから、過去になんらかの問題があって、一種の防衛本能が働いている可能性もある。

 家庭の問題だとしても、政治的意図だろうと、探りを入れる必要はあるだろう。

 なんせアルギリン家がなにも情報を公開していないのだから。


 奴らの情報網は間違いなく脅威だ。

 軍事とか医学とか目に見えるものじゃない。

 プライスレスなもの。

 それも国中の情報を収集している。

 そんな奴らが何も知らないのだ。

 彼らが誘拐、あるいは加担している。

 もしくは、本当に何も知らないと説明がつかない。


 誘拐の方が線は濃厚だ。

 なんせ、何も知らないということは、ヴァルターがアルギリン家の情報網を掻い潜って失踪したことになる。

 そっちの方が問題だ。

 そんな可能性はゼロみたいなものだが。


 「デオキシリボブレイクで消すか?」


 彼の部屋から髪の毛は取ってきた。

 吸収させるかどうかはまだ決めなくて良いだろう。

 アルギリン家の情報を吐かせてから決めよう。

 そのためにも、アポイントメントは取っておいた方がいいだろう。


 疲れているが、手紙を出しておこう。

 それぞれの五公たちに、到着は15日後に指定。

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