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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
***村動乱編
39/70

真実暴露



 アルジュニアスさんはフラフラとした足取りで司祭様の下へと向かう。

 弟を生贄することを黙っていたんだ。

 動揺するだろうね。

 

 2人は仲良しの兄弟とかなのだろうか。

 俺にも幼馴染みたいな兄妹の知り合いがいたんだけど、まあそれはいっか。

 

 「リリガさん、、、

 俺ぁ、あんたのことを信用してたことはねぇ

 けど、あんまりだろ」

 「そうせざるを得なくしたのはそこにいた男だろ。」

 「そうなのか? シュラハ」

 

 まあ、部分的にそう。

 でも最初からイカれた風習が残ってるのが問題のような気がするんですけど。


 「そうだ。

 やつを殺せば万事解決。

 早くやれ!」

 「いけません! 

 お父様の言うことは間違ってます。

 アル、わかっているでしょ!」

 「あ、ああ、」


 大丈夫か?

 アルジュニアスさんの様子がおかしい。

 さっきまでの堂々とした、強気な態度はどこにいったんだ。


 「兄さん、悪いのはこの男だ。

 リディア姉さんが正しいぜ。

 早く首を跳ねてくれ。」


 「あ、え、」


 「はやくシュラハ(そいつ)を殺せ!」

 「はやくリリガ(お父様)を殺して!」

 「はやくリリガ(そいつ)を殺すんだ!」


 ―――あの、すごく空気。

 空気なのに、殺されかけてる。

 もちろん全力で抵抗しますけど。


 「、、、ら」

 「ん?」

 「お前ら家族のせいで俺の人生めちゃくちゃだ!

 ふざけやがって。

 だいたいゾイのことだってお前が、、、」


 そこまで言って押し黙る。

 なんとなく察した。

 アルジュニアスさんはこんな状況でも誰かを思いやれる優しい人なんだ。


 「お前ら全員、地獄に堕ちろぉぉぉ。

 俺をなんだと思ってるんだ。」

 

 「優秀な戦士、村一のな!」

 「私を、、、」

 「俺の、、、」


 そこで何かに気づいた2人。

 

 「リリガさん。

 俺ぁ、あんたを殺すことはできねえ。

 あんたに恩を感じてる。

 あんたは親父と同じ呪いだ。

 地獄に堕ちろ。」

 「貴様、私になってことを」


 「リディア、お前のことは嫌いじゃない。

 悪いやつとも思ってねぇ。

 でも、俺は好きになれねぇ。」

 「、、ごめんなさい。」


 「ゾイ、お前のことは愛してる。」

 「兄さん」

 「どんなことがあっても、俺はお前を愛してる。

 それが、家族ってもんだろ。」

 「兄さん、、、」


 「シュラハ!」 

 「は、はい!」


 ここで来るか!


 「俺はリリガさんを殺す気にはやっぱなれないんだ。

 でも死んで欲しい。

 リリガさんを、、俺の呪縛をぶっ殺してくれ、、、」


 声が掠れている。

 きっと本能が拒絶しているのだろう。


 「ま、まて、アルを生贄にしよう。 

 私はまだ死にたくない。

 殺さないでくれ!」


 「アルジュニアスさんの覚悟を踏み躙ることはできない。

 司祭様、一撃で殺します。」


 *


 司祭様は死んだ。

 頭を本気で蹴り飛ばすと胴から外れた。

 死んだ。

 終わったんだ。


 「なんだあれ!」


 ゾイが指さす先を見る。


 空間が歪み、空が割れる。

 そこからは1人の、中性的な顔で、背丈は僕と遜色ない人物が出てきた。


 「あれ、ここって***村であってる?」

 「え、あはい。」

 「おかしいな。

 そろそろ僕たちのための供物と研究材料が送られてくるはずだから確認にきたんだけど、、、」


 供物? 研究材料?

 何のことだ。

 

 「供物なら村の入り口だ。」

 「研究材料は?」

 「そんなもの知らん!」


 ゾイが答える。


 「言い方変えよっか。

 生贄はどれ?」


 瞬間、全員に緊張が走る。


 ―――こいつが祭られてるっていう神なのか?


 「あ、大将がいってたモク族で暗視眼もちの原石って君のことか!」

 「、、、どうも」


 モク族で暗視眼もちってのは、流石に僕のことだよな。

 他にモク族いないし。


 「よろしくね。」

 「、、、」


 「おい、お前は誰だ。

 この村についてもずっと昔から知っているような口調だし。

 知ってることを話せ!」


 ゾイくん、そんな高圧的な態度で大丈夫なの?


 「高圧的で生意気でムカつくけど、今は原石くんをお目にかかれて気分がいいから話してあげるよ。


 僕たちは目的をもって行動している。

 その目的にはね、結界に関することも入っててさ。

 司祭さんの家系、特に女性の人を研究材料にしているんだよね」


 「なんだよそれ」


 「だから何代も前の司祭に持ちかけたんだ。

 その特異な能力と血を絶やさなければ一族の繁栄を約束しようってさ。

 男の子が生まれなければ生贄として研究材料の女の子を受け取る。

 本当に繁栄するかとかは知らないけど、今まで上手くいってたんだよね」

 

 「つまり、その研究のためだけに俺たちは振り回されていたってことか?」


 アルジュニアスさんが核心をついた質問をする。


 「そんな言い方しないでくれよ。

 これは世界を救うためなんだ。

 悪い神を今度こそぶっ殺さなきゃならないんだよ。」


 ―――世界を救う? 悪い神を殺す?

 まったくついていけないんですけど。


 「ざけんな、、、」

 「ん?」

 「ふざけんな! 

 お前らの都合だけで俺たちの村をめちゃくちゃにしやがって!!」

 「だからそれは世界を救うために仕方ないことなんだって。

 君たちの不幸で世界中が幸せになるんだ。」

 「しらねぇよ!

 俺の父さんと母さんがわからないことの説明になるか!」

 「いい加減うざいな。」


 指先から光線を出す。

 ゾイに目掛けて放たれた光の柱は、アルジュニアスに直撃した。


 「兄さん、どうして、、、」

 「いっただろ。

 お前を愛している。

 、、、俺は、お前の兄だ。」

 「兄さん、、、」

 「ゾイ、、、お前の父さんと、、、母、さんは、」


 ゾイの中手を掴む。


 「俺の、父さん、、、と、母、さん、、、と

 同、じ、、、だ」


 そう言い切ると、アルジュニアスさんはゾイの中でこと切れた。

 

 「兄さぁぁぁぁぁん、いやだ。

 死ぬな、兄さんがいないと俺は、

 嘘だ。そんなのだめだ、、、」

 「アル、死なないで、アル!」


 「君を守って死んだんだよー。」

 

 こいつ、、、人を何だと思っているんだ。

 僕の中で怒りが込み上げてくる。


 「お前はぁぁぁぁぁ!!!」


 やつのいる場所まで飛び上がる。

 

 「はっや!」


 そのまま拳を振るう。

 不意打ちのおかげか、クリーンヒット。

 そのまま地に落ちる。

 マウント態勢に入りボコボコに殴り続ける。


 「お前が、殺した、人間はぁぁぁぁ!!」

 「何なんだよ、他人だろ!」

 「家族を愛していた!」

 「だからなんだよ!」

 「お前が踏み躙っていい相手じゃない!

 命を、人を何だと思っているんだ!!」

 「くそ、原石だからってぇ!」


 やつに吹き飛ばされる。

 マウント態勢から抜けられた。

 あの場で決めねば殺される。


 「お前犬神だったのか?

 それって獣霊気法だろ、っゲホ

 いや、見た目が違う。眷属にされたのか」


 その後も咽せながら何か喚いている。


 「くそ、原石くん。

 僕の目的は司祭家の女性だ。

 そこの白装束の子、もらってくよ」


 そう言うとリディアの妹を担ぎあげた。

 

 「私の妹を返して!」

 「ショクジダ」

 「君たち監禁してたろ。

 姉を名乗る資格ないんじゃない?」


 「待て!」


 「待たんよ。帰る。」


 来た時同様、空間を破り消えていった。


 「妹、私が守るべきなのに」


 「兄さん、あいつは絶対俺が殺すよ」


 ―――嵐のような出来事だった。

 結局、目的は遂行できなかった。

 これからもあいつみたいなやつが来ないとも限らない。

 俺は、強くならなくてはならない。


 *


 「また派手にやったのぅ」

 「ユア、、、迎えに来たのか?」

 「あまりに遅いからのう」


 日が降りても帰らない俺たちに何かあったと危惧し、見に来てくれたらしい。

 あの場にユアがいたら、、、

 僕じゃなくユアなら救えたのか?


 「お主はできるだけのことはやった」

 「見透かされてんのか、、、」

 「それよりどうする。

 これだけの惨状、何もなかったとは言い張れぬぞ。」

 「司祭様の家に証拠を判断する材料がたくさんある。

 でもその証拠がもってかれた」

 「どうしようもないの」

 「本当、慰めてくれよ」


 そんなことを言うとユアはすごく気持ち悪いものを見るような目をしたあと、わざわざ気持ち悪いと言ってきた。

 

 「あの、シュラハさん。」

 「リディアさん、、、

 これからどうしますか」

 「決まってます」

 「そういえば、そうだったね」

 「何のことじゃ?」

 「2人の約束です!」

 「キモッ」


 リディアさんの方はなんとかなった、問題はゾイの方。

 彼には強い憎しみが残ってしまった。

 兄の仇。

 

 「ゾイくんはどうする?」

 「俺は、、大丈夫だ。

 リディア姉さんも妹のことは心配しなくていい。

 俺が取り返してくる。」

 「ちょっと待って、それなら」

 「いや、俺と兄さんの形見、、、」


 白亜の槍を手にする。


 「奪われたもんは、取り返さなくちゃ。

 今までの同胞たちの分も精算してもらわなきゃなんねぇ。

 俺は必ず奴らを殺す。

 そのために軍に行く。

 強くなる。」

 「ゾイ! まって」


 引き止めようとするリディアを突き飛ばす。

 

 「リディア姉さん。

 俺は正直あんたはどうかしてると思ってるよ。

 兄さんが殺されて、妹が連れ去られて。

 特別な力があるあんたが怒りに取り憑かれずシュラハさんと行くなんて。

 無力だった俺が怒りの炎たぎらせてんの。」

 「それは、、、」


 「別にダメじゃねぇーと思うぜ。

 あんたが弱い人間だってことは、俺も兄さんもよーく知ってるからよ

 だから、引き止めないでくれないか」


 ―――人の死に僕もなれているような気がする。

 彼の言葉は刺さるな。


 「軍は12歳から入れるんだろ?

 一年後、いや、冬を越せば俺は軍に入る。

 それじゃあな。

 覚悟は決まった。

 今度あったら妹に合わせてやるから待ってろよ」

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