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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
***村動乱編
37/70

シュラハVSアルジュニアス



 「シュラハよ。本当にいくのか?」

 「今更引くなんてできないよ。」


 今日は祭り当日。

 これから、決着をつけに行くんだ。

 

 「妾は手伝わんぞ?」

 「ずっと言ってるから知ってるさ。」

 「そうか、、、まあ頑張るんじゃぞ」

 「ああ。」


 ユアからの激励をいただく。

 こんな機会は滅多にない。

 ありがたく受け取っておこう。


 「ふふっ」

 「なんだよ」

 「いや、その姿も様になったと思ってな」

 

 全身に緑の紋様が浮かんでいる今の姿のことだろう。

 最初はすごく馬鹿にされて、まさしく抱腹絶倒。

 不愉快極まりなかったな。


 「それは置いてくのか?」

 「獣霊気を乗せた拳の方が強いからね」


 魔術印道具は置いていくことにした。

 あっても瞬時に取り出せないし、服とか靴とかだけにする。


 「それなら、妾が預かっておいてやろう。」

 「頼むよ」

 「盗むとか思わんのか?」

 「信頼してるからね」

 「そか」


 そんなこと言われると思ってなかったのか、ユアがそっぽを向いてしまった。

 嬉しいのかな? 案外可愛いのか?


 「そんじゃ、僕は行ってくるよ」

 「アルジュニアスの野郎をぶっ飛ばしてやってこい!」

 「任せとけ」


 ***


 「リディア、結界を」

 「はい、今」

 「大変です! 司祭様!」

 「リディア少し待ってろ、今行く。」


 お父様が地下室から出ていく。

 始まったんだ。

 

 「何事だ。」


 声が聞こえてくる。


 「やつです。例の冒険者。

 襲撃してきました!」

 「くそ、ゾイを地下に連れて行け。

 誰も地下室に近づけさせるな」


 *


 「くそー、祭りの日だってのに、なんで警備なんかに当たらなきゃなんないんだよ。」

 「俺たちみたいな下っ端、いなくても大丈夫ってことだろ。」

 「にしても、結局供物のキングシルフウルフは殺せなかったな」

 「代替としてでかいシルフウルフを使うらしいぞ」


 「お届けに上がりましまたああああああ!」


 「なんだ?」

 「うがっ、っひ!!」


 「冒険者シュラハ、キングシルフウルフ討伐してきました!」


 *


 派手に登場!

 キングシルフウルフと共に空中から参戦。


 村入り口にいた2人をそのまま押し潰した。

 生きてるかな? まあいいか。


 「貴様、のこのこと現れよって」


 槍をもって一斉に襲いかかってくる。

 真正面から拳を振い、槍を砕き折る。


 「なんだこいつ!」


 みぞおちに一撃。

 まずは1人。

 遠くから弓を撃ってくるやつをやるか。

 一気に距離を詰める。

 対応できるわけもなくそのまま蹴りをお見舞いする。


 そのまま担ぎ、他の弓兵に投げ飛ばす。

 

 「くそ、強い」

 「アルジュニアスはまだか!?」

 「一番村から遠いところの警備だからすぐ援軍にこれねぇ!」

 

 どんどん数を減らさなくては。 

 今の僕なら一撃でも与えれば、相手を死に至らしめることができる。

 が、虐殺がしたいわけではない。

 相手が気絶する程度に力加減し、拳を振るう。

 

 「っおっと。」


 遠くから大岩が飛んできた。

 司祭様、魔術を使えたのか。


 「なんなんだあのバケモノは。

 傷一つ着いちゃいねぇ。」


 詠唱されて、魔術を撃ち続けられても厄介だ。

 司祭様後頭部を掴み、地面に叩きつける。

 歯はボロボロで、口を動かすだけでも痛いだろう。


 「があああああああ」


 そのまま回し蹴りを入れる。

 

 「リリガ様ァァァァ!!

 よくもリリガ様を!」


 司祭様の護衛らしき奴らも蹴散らす。

 正直、彼ら程度なら獣霊気法を使うまでもない。

 だが、今の僕は獣霊気法を使うのに半日獣霊気を練るのに必要だ。

 ユアみたいに簡単にオン、オフ切り替えれるわけではない。

 

 「リディア、うまくやってるかな。」

 

 「余裕だな!」


 物凄いスピードで骨の槍が飛んでくる。

 他の槍とは違う白亜の槍。

 鞭のようにしなりながら投擲者の元へ吸い込まれる。


 「アルジュニアスさん、、、」

 「俺にボコられて、女に助けられて尻尾巻いて逃げたと思ってたぜ!」

 「アルがきた!」

 「ぶっ飛ばしてくれ!

 リリガ様の仇!」


 ―――アルジュニアスさんがきた。

 それまでに他の人たちを無力化するつもりだったけど、仕方ない。


 「素手か? 舐められたもんだな!」


 アルジュニアスの槍を手のひらで受ける。

 が、ただの突き程度、獣霊気法の敵ではない。

 

 「へぇ、なるほどな」

 「アルジュニアスさん、僕はあなたと戦う気はない。」

 「よくそんな事が言えたもんだ!

 村のみんなをこんなにしやがって!!」


 アルジュニアスからの右回し蹴りを左腕で防ぐ。

 間違いなく受け身だとジリ貧。

 シュラハもアルジュニアスに後ろ回し蹴りをいれる。

 咄嗟に距離を取り、槍による突き。

 今度はシュラハの腹を貫くもの。

 患部からは血と煙が出てくる。

 

 「へんな紋様があるから警戒しちまったが、どうやら問題ないよーだな!」

 「戦い中に会話って、舐められてるな!」


 今まで見せなかった速度で距離を詰め肘撃ち。

 もろに顎にくらったのかよろけたところを見逃さずラッシュを仕掛ける。


 「アルジュニアスさん、僕の話を聞いてくれ」

 「捕まえた」


 両腕を掴まれる。

 そのまま思いっきり腕を下げられ、低くなった顔に膝蹴りをくらう。


 今度はアルジュニアスの槍によるラッシュ。


 「てめぇと話すことはねぇ。

 語るなら拳で語り合おうか!」


 「話を聞いてくれ!!」


 槍によるラッシュを素手でいなす。 

 全ていなせないところから、アルジュニアスの技量が相当なものであることがうかがえる。

 リズムをずらすことにより、一度ラッシュは止む。

 

 「チッ、舐めてんのか!?」


 背中を見せ走る。

 周りにいる奴らをそのまま蹴散らしていく。

 

 最後の1人を沈めたところで、アルジュニアスからの薙ぎを受ける。

 手首がジンジンする。

 折れてはいない。

 が、間違いなくウィークポイントになってしまった。


 ―――今のはやばいな。獣霊気で身を守ってなかったら手首から先吹き飛んでた。


 ―――今ので腫れるだけ? まじでシュラハ(こいつ)イカれた耐久してやがる。

 明らかに強くなってるし、あの嬢ちゃんほどじゃないが、猛獣のような雰囲気を纏ってる。

 

 「オラオラどーした!? 受けてばっかか!?」

 「呼吸が乱れてんぞ。そろそろ口閉じた方がいいんじゃないか?」


 お互い一歩も譲らぬ攻防。

 アルジュニアスの手が少し多いか、しかし体力はシュラハの方が残っているだろう。

 アルジュニアスとの距離を取れば槍をくらい、詰めてもリーチに部があるアルジュニアスに攻撃が届かない。

 一撃いれるだけでも一苦労だ。


 「ハァ!」


 シュラハが大声を出す。

 アルジュニアスは防御姿勢をとるが、タイミングをずらして後ろ回し蹴りを入れる。

 防御を解いたと同時の蹴り、距離を取ろうとしても遅く、クリーンヒット。


 ―――やっといいのが入った。


 そのまま畳み掛けるようにアルジュニアスの腕を取る。

 そのまま大腿で掴んだ腕を挟む。


 「まさか」


 足首を逆の腕に絡ませる。腕十字を決める姿勢に入る。


 「打撃だけじゃないっすよ、僕。」

 「くそっ」


 ―――想定外だ。まさか関節技で勝負してくるなんて。


 「一方的に話す!

 あんたの弟が生贄にされる!

 このままでいいのかぁ!」

 「なんだって!」

 「だめなら僕に協力しろ!

 祭りを止める手伝いをしろ!」


 アルジュニアスはもがくが抜けられない。

 動くほどに技に深く絡まっていくのがわかる。

 

 「こんなことは許しちゃだめだ! 

 アルジュニアス、お前はどう思ってんだ!」

 「黙れ! 知ったようや口ききやがって。」

 「弟が生贄にされるんだぞ!」

 「適当な嘘だ! 嘘に決まってる!

 だいたい、誰がそんなこと言ってたんだ」

 「それは、司祭様だ。」

 「え、」


 途端に、抵抗する力が弱まっていく。

 

 ―――なんだ急に、わざと諦めたフリをしているのか?


 シュラハは離さず、技をかけ続ける。


 「おい、本当なのか? リリガ様が、嘘だよな?」

 「本当のことだ。

 向こうで真っ青になってる男の顔を見てみろ。」


 首を思いっきり曲げ、司祭の様子を伺う。

 顔面が凹んだ司祭が、青い顔しながらシュラハとアルジュニアスを見ている。


 「ち、違うんだ。アルジュニアス。

 私は、私はそんなこと言って」

 「シュラハさんの言ってることは本当です!」


 リディアが、妹とゾイを連れて屋敷から出てくる。

 2人は随分と綺麗にされている。

 監禁されてた子と引きこもりとは思えない相貌だ。


 「兄さん、まじらしい。こいつ、俺のこと生贄にしようとしてたらしい。」


 それを聞いてアルジュニアスが叫ぶ。


 「おいおい嘘だろリリガさんよぉ。

 嘘だよな? 夢でも見てんのか?

 待ってくれ、知らないの俺だけ?」


 「あー、あー、うー」

 「間違いないと思う。

 俺も急に村の奴らがきたと思えばめっちゃ体洗われて、なんなんだろって思ってた矢先に、屋敷に連れてかれて、地下に閉じ込められたんだ。」


 シュラハはアルジュニアスから技を解く。

 戦意を感じられなくなったからだ。

 少し気の毒なような気もするが。


 「適当なことばかり言うな! ガキどもがぁ!

 それにリディア、待ってろと言っただろぉ

 私をバカにしているのかあぁぁ!!??」

 「お父様、もうお終いです。」

 「リリガ、、さん、騙してたのか?」


 立ち上がることもせず、そう問う。

 あれだけ顔がボロボロでよく喋れるな。

 すごいね。


 「し、司祭様ぁぁぁ、、」

 「我々は、まだ、」


 意識の戻った村の人々を再び眠らせる。

 勝負がついた。

 2人とも戦闘不能になったわけではない。

 元々戦意がないものと、喪失したものと。

 シュラハと村人たち、アルジュニアスの戦いは終結した。

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