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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
超加速度的変化編
28/70

迷宮



「なんだったんだ」


投げられた仏花を見つめる。

どれだけ見ても不吉なものを渡されたと思う。

渡し方も粗暴だった。蛮族と言われても信じるくらいには。

下卑た笑みを浮かべながら斧を投げる姿。

頭を振ってかき消す。


――そういえば、どうして泣いてたんだろう。


数秒前までは笑顔で話していたのに。

表情が強ばったのは、入軍を勧めた辺りからだった気がする。

もしかして、彼女は止めて欲しかったのだろうか。

そう考えると合点がいく。

しかしそれは矛盾している。

推薦を自慢してきたのだ。それも、これ以上ないくらい屈託の笑顔で。


――どうしよう。フィーラには幸せになって欲しいけど、僕達のギルドを離れて欲しくない。


少佐からすれば、自分からも勧めると言った手前、今からやっぱり離れて欲しくないので断るなど言語道断だろう。

もし自分が同じ立場なら、迷惑だと思う。

このことを、奇形児の皆は知っているのか。

エルナはその場に居たが、話す必要を感じていなさそう。

省エネがモットーのような女だ。

知っていてもフィーラから直接になるだろう。


………

……


――ああ! やっぱり離れて欲しくない。フィーラとは一緒にいたい。今日言ったことは撤回しよう。そんでもって謝ろう。

今日はもう遅いし、明日になったら。


***


「起きて、シュラハ起きて」


エルナに揺さぶられながら飛び起きる。


「なに!」


眠気は吹き飛び、直ぐに臨戦態勢に入る。

今までの自分なら出来なかったこと。

地獄のような生活を送ってきたからこその対応だ。


「フィーラが昨日から帰ってないの。一晩中」

「まじですか」

「まじ。」

「今ドバさんたちが探してる。シュラハも探すの手伝って」

「も、もちろんです」


――昨日から帰ってない。僕が原因なんじゃないのか。


急いで宿を出る。

フィーラの行きそうな場所は既に探していたそうだ。

街の人にも見つけ次第知らせてもらえるように言っている。

居ないと発覚してどれだけ時間が過ぎたのかも分からない。


「見つかったか?」

「街中探し回ったがいねぇ

外に出てるかもしれない」

「まさか、人攫(ひとさら)いじゃないかな。」

「フィーラは1級品の剣を持ってた。盗賊の人質にされてるんじゃないのか」


――この中で1番可能性の高いのは人質……

大丈夫、万が一のことがあっても僕なら逃げ切れる。逃げることは得意なんだ。


「すみません、もう少し探してきます」

「おう」


巾着袋を取り、腰につける。

まだ治りきっていない身体を奮い立たせて街を出る。

魔術印道具(マジックアイテム)の威力は確認できている。

フィーラが地竜を討伐した話からも分かる。

並の敵なら太刀打ちできない。


砂漠に出る。

まだ新しい、引きながら運ばれた跡が残っている。

ソリか、袋か。どちらも人を運べる大きさのもの。

日が登り始めたのは1時間ほど前。

十分夜に犯行できる。


跡を追ってしばらく歩くと迷宮(ダンジョン)に着いた。

街からは比較的近くにあるが、難易度の高さから攻略されていないものだ。

ここに近寄る人など居ない。

迷宮の周りには何も無いし、行くだけ無駄だからだ。


さらに跡を追うと迷宮の入口のさらに奥に1つの建物を見つけた。

蛇に悪魔のような羽が生えた生き物が描かれている旗が刺されている。

間違いない、ずっと騎士団がおっている犯罪組織。「天使の遣い」だ。


――この先にフィーラが。今すぐ街に戻ってみんなに知らせなくては。


「なんだお前。こんなとこで何やってんだ?」

「……」


声の主を確認する。蛇の被りものをした男がいた。

天使の遣いの構成メンバーであることは容易に想像出来る。

間が悪いことにシュラハはバレてしまった。


「あ、煙幕のガキじゃねぇか。」


男はシュラハのことを知っているようだった。

煙幕で逃げようとするが相手もそれを分かっているのかナイフを取り出したシュラハを取り押さえると、迷宮の中に閉じ込めた。


「くそ、迷宮の中に閉じ込められた。空いてないし……。まずい、ミイラ取りがミイラになってる。」


最初から考えられた。

何故その可能性を考慮していない。

相手が誘拐したのはフィーラだ。シュラハのことを知っていても何ら可笑しくはない。


――不幸中の幸いとして身ぐるみは剥がれてない。

暗視眼もあるから暗いとこは大丈夫。

助けが来るのを待つか?


しかしここは難易度の高さから誰も足を踏み入れない迷宮。

生還した冒険者が1人も居ないのだから当然だ。


――街の人はここには寄りつかない。助けは期待できない。確認した訳じゃないけど、フィーラの居場所を知っているのは僕だけ。

仮に見つけるのは何時になる。フィーラが安全だって保証はない。

つまり、僕一人の力で迷宮から脱出しなくちゃならないってことか…………


フィーラを救い出すための条件に絶望する。

1度閉じられた迷宮は、外から開くか攻略するしかない。

そしてシュラハのいる迷宮は生還者ゼロの未知の迷宮。

出てくる魔獣も、仕掛けも何も分からない。

そこを自力で抜け出さなくてはいけないのだ。


――無理だ。僕は弱いんだ。ただでさえ筋肉痛で動きが鈍いってのに。迷宮(ここ)を攻略してフィーラを助け出す?

最悪だ。なんなんだよ。ついてないついてない。

死ぬのか。まだフィーラに謝ってないのに。


そこで思い出す。自分の生きる目的を。

謎の冒険者に魔術印道具を返す。フィーラに謝る。

やるべきことは山積みなんだ。

死ねない。生きて達成しなくてはいけないことがある。


腰に付けていた巾着袋から魔術印道具を取り出す。

中からはフィーラに渡したような色とりどりの球が入っていた。


――どうやって使うんだ。力を入れてみる? 念じる? 思い切ってぶつけてみる。


1つ1つ試していく。地面にコツンとノックするようにぶつけると、球は形を変え、黒に赤の模様が入った一足のブーツに変化した。

これがどんなものかは分からない。だが使わなくては生き残ることは出来ない。


他の球も同じように試しながら、使えるものと使えないものを選別していく。

大剣や魔術杖など使えたら強いものもあったが、技量と筋力のないシュラハには使えそうにない。

結局、使うのは3つのみ。


最初に見つけたブーツ。

顔を守るためのマスク。

シュラハでも使えそうな短刀。


今まで裸足だったシュラハはブーツに違和感を覚えたが、四の五のいってる余裕はない。

マスクは顔面全体を覆う様にできている。

目元は透明で、鼻口や頬の辺りに円柱に小さな穴を開けた歪なものが取り付けられているものだった。合計3つ。

短剣は生き物の解体くらいにしか使えなさそうだが、持っていないよりまし。


「ここから出ないことにはなにも始まらない。」


左手親指を短刀で切り、煙幕を出す。

明かりがないと言えど、魔獣たちも生き物。僅かな採光を全て遮断する。

暗視眼で周辺を確認しながら先に進む。

昆虫をそのまま大きくしたような生物が多い。

あんな魔獣と戦えば勝ち目はない。

見つかり次第ゾロゾロと仲間が集まってきて、強靭な顎で腹に噛みつき臓物を撒き散らされる姿が想像できる。

身震いしながら、慎重に、音を立てない様進む。


――音を立てない?


ふと疑問が浮かび上がる。

ブーツの底は蹴られれば痛いで済まされない様な硬さになっている。

それは履いた時に確認済みだ。

そんなブーツが今まで足音ひとつさせてない。


――このブーツは足音を消してくれるのか。


良い物を選んだ。今の状況にこれ程マッチしたものはない。

無駄な戦闘は避けるつもりでいたが、どうやら迷宮ヌシ以外とは戦わなくて済みそうだ。

体力も温存できるし、何より攻略確率がグンと跳ね上がる。



迷宮の構造上、下層に進むにつれ死体が増えていく。

腐敗しているものや、白骨化しているものなど様々だ。

中には高価な装備をしているものもいたが、剥ぎ取るのは倫理的に良くないと思った。

死者への冒涜の様に感じたからだ。

ここが彼らの墓場。亡骸が荒らされていては報われないだろう。


下層に進むにつれ、不思議なことも多くあった。

魔獣が死んでいるのだ。

それもいまさっき死んだようだ。

身体の新鮮さや、温かさから、いまさっきまで生命活動していたことは明白。

突然死。気味が悪い。


何もしていないのに何故か魔獣が死んでいる。しかも身体に傷は無い。

これだけたくさんの死体があるのだから、何かしらの病気で死んだのかとも思ったが、今死ぬ理由が分からない。


――なんだよこれ。さっきから会う魔獣全員死んでるんだけど。

…………考えないよう、なるべく考えないようにしてたけど煙幕って毒性なのでは。


そう考えれば合点が行く。

迷宮に入って唯一した事、煙幕を出す。

自分はマスクで顔を覆っている。防毒(ガス)マスクだったのだ。


――まて、このままいけば、迷宮ヌシも簡単に殺せるのでは?


体力を残す理由が無くなった。

全力で階層を降っていく。

煙幕が切れれば他の指を切る。

切れれば指を切るを繰り返し、とうとう最終階入口と思われる所まで来た。


今までの階層扉とはまるで雰囲気が違う。

少し隙間を開け、煙幕を充満させる。

それと同時にヌシの姿も確認する。


――獣族? なんでこんなところに。


人型に犬の耳や尻尾がついている。

間違いなく獣族。しかしこんなところにいる理由が分からない。

生還者ゼロ人の地獄の迷宮だ。

姿から少女であることも確認できる。

迷宮ヌシと言うにはあまりにも拍子抜けだ。


――煙幕も十分だろう。


そっと扉を開け、ヌシの間に入る。

瞬間、耳に激しい痛みが襲う。


それも当然、右耳は切り裂かれなくなってしまったのだから。

ペタリと右耳が地面に落ちる音が聞こえる。


「ああああ!?」


あまりに唐突で腰が抜け、その場にへたり込む。

急いで少女の姿を探す。

シュラハの後ろに見つける。

そちらに振り返り構える。


――なんだ今のスピード。対応出来ないわけじゃないけど、速い。


「久々の人間。ここまで来れる実力、確かめさせてもらう」


そういうと少女は先程と同様のスピードで爪を立てシュラハに迫ってくる。

今度は急所を狙った一撃。

短剣を心臓部に構え避ける。

が、ギリギリで狙いを変え、足を切られる。

今度は切り傷。

そんな一方的な攻撃をひたすら防ぎ続ける。


――くそ、このままだと時期に僕の体力が尽きて死ぬ。攻撃に転じたいけど、その時が僕の最期だろう。


「凄いな。こんなに攻撃を防がれたのは初めてじゃ。視界を奪われているとはいえ、(わらわ)にトドメをささせないなんて。」

「ヌシが話しかけてきた。……どうも」

「だがおぬしもわかっておるじゃろ? このままだと時期に限界が来ると」


「おぬしは不思議に思っているようじゃな。煙のなか、妾がおぬしを捉えていることを。

妾から言わせてみれば、おぬしが妾を捉えている方が不思議なのじゃが。」


「図星…だよ。不思議に思ってる。」


会話中でも攻撃は止まない。

急所を避けなくては、一撃で殺される。

先程から短剣の射程範囲には一切入らない腕や足ばかり狙っている。

少女は堅実だった。


「死に征くおぬしに特別に教えてやろう。妾は鼻が効く。おぬしの血の匂いで何処にいるかくらい分かるのじゃ」


――そういう事だったのか。でもそんなの分かっても現状は変わらない。どうすれば。


「どんどん煙は濃くなるし、血の匂いも濃くなっておる。おぬしの死期も近そうじゃ」


――どうする。このままだとまじで死ぬぞ。何とかしてこの少女を殺さなきゃ。

殺さなきゃ自分が死ぬぞ。


「はあ…はあ、ああ」


左腕の静脈が切られる。

明らかに致命傷だ。今までの切り傷とはわけが違う。

大量出血で死ぬ前に、意識を失って殺される。


――考えろ考えろ考えろ。ギリギリまで考えてあいつを殺せ!


上着を脱ぎ、腕を止血する。

しかしそんなことで血は止まらない。


「不思議な男。面白いやつだった。そんな弱いのにここまで来れたこと。妾の攻撃を防いだこと。あの世で自慢するといい。サヨナラじゃ!」

「サヨナラはお前だ。獣…!」


少女の心臓を狙った渾身の一撃は、シュラハの上着に穴を開けるだけに終わった。

唖然とする少女の首に、容赦なく短剣を振り抜く。

跳ね飛ばした首が宙を巻い、地面に落ちて転がる。

身体も倒れ、首から血液が溢れてくる。


「はあああ、ああ」


――殺した。勝った。僕が、少女(こいつ)を殺した。


奥に光が灯る。

形は円形、ヌシを倒したことで魔法陣が作動したのだ。


――あれに……乗ればフィーラの元に。


地面を這いながら魔法陣に向かう。


――意識が…力も。目の前がくらい。暗視眼あるのにどうして……。


そこで気づく。シュラハは血を流し過ぎたのだ。

フィーラを助けるため、生還者ゼロの迷宮に挑み、攻略した。

全身に傷を負いながらも何とかヌシを退け、あと一歩、届かない。

悔しさの中、シュラハは意識を失った。


***


「ん……」


――ここは、…迷宮か。確か犬耳少女を殺して、でも僕も血を流しすぎて。

ならどうして意識があるんだ?


腕を見ると、血は止まっている。

切り傷は瘡蓋になっていて、かなりの時間が経っていることが分かる。

右耳は残っていない。上着は血だらけ。

間違いない。生き残った。


「目が覚めたか」


少女の声が聞こえる。

殺したはずの少女。慌て少女の姿を探す。

少女は魔法陣の横に座っていた。

切り落としたはずの首は繋がっている。


「な…なんで生きてる。」


生きていることに関して言えばお互い様だが、シュラハからすれば恐怖でしかない。

間違いなく殺した。確認してから意識を落とした。

なのに、そのはずなのに、少女は生きている。


「そう警戒するでない。もう妾に戦意はない」

「…信じるぞ」

「当然じゃ、なんせおぬしを助けたのは妾なんじゃから。信じてもらわねば困る」

「どういうことだ」


――殺し合いをしていた相手を助ける? でも僕が生きてるのも事実。


「簡単じゃ、妾は復活した。そして、おぬしに血を分け与えた。」


――なんだって。


あまりの気持ち悪さに、思わず吐いてしまう。

他人の血が混ざっている。

意識を失っている間に何をされた。

信じられない。信じたくない。


「おぬし、妾の血を分けたと言って吐いたな。」

「オロロロロロ、……うぷっ」


2度目のリバース。

心も身体も拒絶する。シュラハの倫理観からは、他人の体液を自分の身体の中に入れるなんて本当に考えられない。

それが珠玉のような少女でもだ。


「……うう。助けてくれたことは感謝する。

ありがとうごさいました

僕は急いでいるので」


――こうしちゃいられない。早く助けに行かなくちゃ。


「こらまて。話を聞かんか」

「助けてくれたことは本当に感謝しています。でも急いでますので。」


魔法陣の上に乗ると、眩い光を放ち出す。

視界が真っ白になる。

地から浮くような感覚になり、高速で上昇しているようだ。

しばらくすると地に足が付き、次第に視界が開ける。

目を開けるとそこは迷宮の入口。


「帰ってきた。急ごう」



――ないない。何も無い。


シュラハが迷宮から脱出し、天使の遣いのアジトに向かう。

しかし既に何も無い。

半日も経っていない。

なのに、建物すら取り潰されている。


「フィーラ……フィーラ…………」


「あああああああ!!!」


――なんでだよ。どうして、どうして僕ばかりこんな目に。全部、全部奪っていくんだよ!


シュラハの頭の中を、乗り越えてきた困難が一気に流れてくる。

ゾクドに支配され、奴隷のように働き。

逃げる途中、双頭烏にオプファンを殺され。

ムレムカデに指を奪われて、右耳を失い。

追い討ちをかけるようにフィーラまでもうばわれた。


今まで抑えていた感情が爆発し、呻吟する。


「ああああ!! ふざけんなよぉぉ。神様の馬鹿野郎ォォォ!!!

僕ばっかりこんな目に遭わせやがって!

死ね! 死ねや!! クッソがぁぁぁぁ!!

はあ、ぁぁぁぁ。」


真夜中の砂漠で1人咽び泣く。

自分でも、八つ当たりだと分かっている。

神が悪いわけじゃない。

幸も不幸も、皆平等に降り注ぐ。

それが他の人よりも酷かっただけ。

でも、それでも。あんまりだ。


「何しとるんじゃ」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁ……ああ?」


涙と鼻水でくしゃくしゃの顔で振り返る。

口調どうり、あの時の少女がいた。


――殺しに来たのか……それもいい。僕も死ねばみんなのところに………


「おぬし、何をしとるんじゃ」


――何してる…か。本当に何やってんだよ。

僕は、フィーラを助けるために来たのに。

頑張って……痛いのも辛いのも我慢して………


そんな風に考えると、目の前の少女に怒りが湧いてきた。

理不尽な八つ当たりだ。


「お前に何がわかるんだよ!! 僕はぁ、頑張ったんだよ! 弱いのに。辛いのに。頑張って頑張って、助けようって頑張って、

笑えよ! このザマを。所詮凡人以下の僕には誰かを救うことなんてできないんだよ!!

てめぇは強ぇからいいよな。僕に出来ないこと淡々とこなすんだろ!

殺せや! 誰も助けられない、こんな僕を殺せぇぇぇ!!!」


発狂にも近い八つ当たりを受けるも、少女は顔色一つ変えず、シュラハを見つめている。

そして繰り返すように、「何をしてるんじゃ」と問い掛ける。

少女の落ち着き様を見て、シュラハは脱力する。


「なんだよ…殺しに来たんじゃないのかよ…

なんか僕、かっこ悪いな………」

「確かにかっこ悪い。じゃが妾はおぬしに感謝しておるんじゃ」

「は?」

「妾はずっと、迷宮(あそこ)に閉じ込められておった。会う人全てに命を狙われ、生き残るために戦う日々。

妾は、外に出たかった」

「……」

「おぬしは妾を助けてくれた。外に出してくれた。おぬしの過去に何があったかは知らん。

じゃが、誰も助けられていない訳じゃない。

ありがとう、弱い男。妾を助けてくれて」


「なんだよ」


――甘い言葉なんて、かけないでくれよ。

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