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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
超加速度的変化編
25/70

冒険者ギルド



「はぁはぁ」

「ここまで来たら大丈夫だろ」


恐竜亀から逃げ、走って10分。

追って来ている様子もない。

逃げきれたことに安堵する。

シュラハは辺りを見渡す。誰もはぐれていない。


「ヒーリング」

「うわっ、いつの間に。」


エルナは傷口から永遠と垂れ流しになっていた煙幕を止めるため治癒する。

みるみるうちに傷は塞がり綺麗さっぱりなくなった。


「ありがとう」

「お礼を言うのは私の方。ありがと」


それだけ言うとエルナは集団に戻って行った。


――あれは、緑、建物。街が目の前に。


「いやー、まさか兄ちゃんに助けられるとはな。

さっきは適当なこと言って悪かった。ありがとな!」

「お役に立てたなら何よりです」


それから少し休憩すると、再びヴェルムスの街へと歩みを進めるのだった。


***


ヴェルムスの街はモク族の村とは比べ物にならないほど人が居て、建物も多く何より大きかった。

モク族の村が世界の全てだった2人にとってヴェルムスの街は実に新鮮なもの。

田舎者が都会に出てきた時の反応を投写したように行っている。


建物を見上げたり、キョロキョロと辺りを意味無く見渡したり、途中はぐれそうになったり。

そうする度にエルナに首根っこを掴まれ集団に戻してもらっている。


大きな街であるためその分犯罪も多くなってくる。

オプファンが行っていた倉庫から食べ物を盗むなんて可愛いものじゃない。

シュラハやフィーラの様な、か弱な子供は簡単に攫われる。

なおかつこの街は治安があまり良くない。

自由行動はさせられないと心配になる奇形児の面々だった。


「今から宿を取りに行く。部屋は2部屋とりゃいいよな?」

「おっけ、俺はムレムカデ換金してくる。この量に依頼料が乗っかれば。今から楽しみだぜ」


テリバーとエルナとシュラハとフィーラは先に宿へ、残りは冒険者ギルドへ向かうことで話が着いた。


「あんたたちは私と宿に行くの」

「なんでよ! 冒険者ギルド見てみたい!」

「話聞いてなかったの? そんなボロボロの服で歩かれても困るのよ」



宿に着き、シュラハとフィーラは適当に買った服に着替えることにした。

商店に安値で売っていた服をテリバーが買ってきたものだ。


着替え終え、しばらく待っていると換金し終えたドバたちが宿にやってきた。

奇形児の面々で金の取り分を分けているようだ。

不思議そうに眺めていた2人にテリバーが袋を放り投げる。


「これは?」

「お礼だよ。助けてくれたな。」


申し訳ない気もしたが、断れるわけが無い。

今シュラハたちは一文無しのプー太郎状態。

当面の生活資金に充てるため使うことにした。

それになによりテリバーの好意を無駄にしたくなかった。

相手の善意を踏みにじるような真似は出来ない。


「そんじゃ明日からの行動会議をする。」


「最初に決めるのはまあ2人の処遇だよね」

「処遇って言うなよ……まあそうだな。2人に関してだが、ドバとエルナ。1週間やる。1週間で冒険者としてやって行けるレベルまで鍛え上げろ。

これはリーダー命令だ。」

「ちょっと待ってよ」


テリバーの命令に待ったをかける声、エルナだ。

彼女にとってシュラハたちはどうでもいい人間。

そんな人間のために自分の1週間を使いたくない。

いくらリーダーの命令といえど、簡単にはいそうですかと頷けるものでは無い。


「そんなの、育ててどうすんの。

私たちの役に立つの?」

「利益が第一か?」

「何? 問題ある?」

「いや、悪かねぇ。あるぜ、利益なら。」

「……いいわ。言ったみて」


「まず単純に戦力が増える。剣士でも魔術士でもなんでも2人増えるのはありがてぇ。」


小型魔獣に強く出られる剣士。大型魔獣に強く出られる魔術士。

1人増えるだけで効率は上がり、負担は減る。


「今でも十分に火力は足りてるわ。シモンハットもドバさんも近接戦ならこの街随一だし、私で魔術士枠は埋まってる。

これ以上何を求めるの? 過剰戦力よ。」

「確かにお前らは強ぇ。だがな、足りてねぇもんあるだろ。」

「タンクか。」


そう呟いたのはピエールだった。


「さっきの戦いで気づいた。シュラハ、おめぇはタンクの才能がある。その不思議な身体、ヘイト管理に1番向いてる能力だ。

それに逃げる時にも使える。実際あの時こいつが居なきゃ俺たちは皆殺しだ。」


シュラハの肩に手を回し、演技ぶってそう訴えかける。

さすがのエルナもこれ以上の反論はないようだ。


「……はあ、ドバさんがいいならいい。」

「俺は別にいいけど」

「そういうことだ。明日からお前ら死ぬ気で特訓するぞ。」



地獄の特訓が始まり早1週間が経過した。

剣も魔術も才覚を現し始めているフィーラに対し、全くと言っていいほど伸びないシュラハにドバとエルナは手を焼いていた。

1週間以内に彼らを冒険者としてやって行けるレベルまで育て上げる。

リーダーの命令を遂行できそうにないからだ。


「どうしたもんかな」

「あそこまで才能のない男を、私は見たことない。対処法なんて知らない。」


必死に2人に育ててもらいながら、成長の兆しすら見えない自分に劣等感を感じる。

同じことを同じだけ習ったのに吸収速度が段違いなのだ。

シュラハは昔のことを思い出す。

何をやっても鈍臭い自分の仕事は、誰にも迷惑かけないこと。

せっかくテリバーがくれたチャンスを無駄にする。


「よお、ガキ共の様子はどうだ?」

「フィーラは凄いよ。剣士も魔術士にもなれる。魔力量も私より多い。さすがに無詠唱は無理だけど素質だけなら私以上かな」

「問題はシュラハだ。できることはやったが、どうしようもねぇ。

最前は尽くしたって言っておくぜ。」

「なるほどなぁ。分かった。お前ら、着いてこい。冒険者ギルドに登録しに行くぞ」


テリバーに連れられ2人は宿を出る。

1週間、特訓のために外に出ることはあれど街の中心には向かわなかった。

冒険者ギルドは街の中心にある。

中心に向かうにつれ、人も建物も多くなる。

色んな魔族が住んでいて、見ていて飽きない。

似ていても全く違う部族だったりするのだから不思議だ。


冒険者ギルドは一際大きな建物だった。

緑を基調とした旗が立っていて、これはどこに行っても共通らしい。

ギルドに向かう途中、テリバーから冒険者について、詳しい話を聞いた。


冒険者の仕事内容と給料についてだ。

仕事は主に商会などの民間企業からの依頼。

稀に国からの依頼が入り、そういう時は街総出でこなすらしい。

依頼は上からA~Eまで難易度別で別れているらしい。

D~Eは主に比較的弱い魔獣の討伐。

B~Cは大型の魔獣や大量発生した魔獣の討伐。

Aまで来ると難易度は格段に跳ね上がる。

迷宮(ダンジョン)攻略による人命救助や魔術印道具(マジックアイテム)の鹵獲。

政治家や商会の護衛など一度に稼げる額も段違い。

ここを目指すのが冒険者の常なのだとか。


給料は難易度と冒険者本人のランクによって順次で変化する。

下から、E、E+、D-、D、D+、C-、C、C+、B-、B、B+、A-、Aとなっている。

誰もがランクEから始め、依頼の達成数や難易度に応じて昇格できる。

自分のランクと上下2ランク分の、計5ランク分を受けるのがオーソドックス。

Cならば上はB-、下はD+と言った具合に。

こう聞くとB+が1番お得に聞こえるが、差別化を図るためAやA-のみ受けられる特別待遇もある。


そうこうしている間に冒険者ギルドで登録を済ませた。

シュラハはタンクとして、フィーラは魔剣士として。

2人のランクはEだが、チームランクがBなため受ける依頼は高いものになる。

その辺は我慢してくれとテリバーに伝えられた。

頼まれるまでもない。もとよりそのつもりである。


参考程度に奇形児のメンバーのランク。

テリバー、C。

ドバ、B。

シモンハット、A-。

ピエール、C+。

エルナ、B-。


「登録が終わった所で悪ぃんだけどよ。」


テリバーは申し訳なさそうに、が意を決したように振り返り


「最初の依頼、Aランククラスのもんになると思っててくれ」

「へ? Aランク? 迷宮にでも行くつもりですか?」


いきなりAランクの依頼を受けるなんて自分たちに死ねと言っているようなもの。

しかしよくよく考えてみれば、奇形児のギルドランクはB。

A帯は一人。本来避けるような依頼だ。


「違う、今回のは政府からの依頼だ。

内容は地竜の討伐」

「地竜!?」

「俺たちだけじゃねぇ。街の冒険者が総出で討伐にあたる。

国からも騎士団が派兵されてる。街で見たろ? 冒険者にしちゃいい防具つけてるやつ。」


確かに、ここ1週間全身を覆える鎧や、同じ杖とローブを纏っている魔術士にあったが、正規軍だったとは。

シュラハはてっきり変な宗教団体かと思って関わらないようにしていたが、そうでは無いらしい。

今思うと、とても失礼な勘違いをしていたと思う。


「討伐任務は2日後。それまでにお前らの装備を整える。

前買った服はお前らの役職が決まってなかったから適当に選んだやつだ。

今回はちゃんと自分に合ったのを自分で選べ。

前あげた金はちゃんと持ってんだろうな?」

「も、もちろんです」


この時のためだったのか。

いや、あの時にはまだ地竜討伐なんて決まっていなかっただろう。

ただの好意だ。

シュラハはいざという時のために、貯金しておくべきだと学んだ。

それと同時にギャンブルで負けて、ひもじい生活をしているドバのようにはならないと誓った。

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