表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
運命転換編
2/70

腐った国



この国は腐っている


いや、この国の皇帝や貴族たちが腐っている


どうしようもないやつしか居ない


民を重税で苦しめ、他国の人々を債務で苦しめ

自分たちは苦しめた富で極楽を謳歌している

幸せの総量を独占し、民に配る気は無い

食わず嫌いをする子供のように、辛いものは避けて食べる


そして、それが当たり前だと思う最低最悪な人間の集まり

いや、この言い方には語弊がある

最低最悪の屑の集まり


そんなどうしようもないやつが統治する国……

カシミ=エルニワトン帝国


僕はその国の公爵家長男、

名はハレファス・カシミーアス・ワイトラー


腐っている国の中枢にいる人間

将来この国を動かす人材

いずれ富を独占し、自身のために、保身のために権力を使うであろう人間


皆の昔、幼少期から十代位の歳のことを思い出して欲しい

子供の頃、みんなはどんな夢を持っていた?

どんな希望を将来に抱いていた?

世界はどんなだと思っていた?

空想世界の様な、創作物の様な笑顔と道徳心に満ちた美しい世界を想像していたんじゃないか?


生活環境に個人差はあれど、人間の思考パターンに大きな違いはないと僕は思う

きっと共感してくれると思う

きっと今みたいな、生きるために金を稼ぐ生活を夢見てたわけじゃないと思う

好きなことで、好きな人と、好きなだけ仕事して、仕事とは趣味の延長線上にあったんじゃないか?

男の子は……ヒーローとか。女の子はケーキ屋さんとか。


でも、現実は違う。

誰も子供の頃は、仕事場と家を往復する生活なんて夢見てなどいないと思う。

家庭が貧しくて、両親だけじゃ養えなくて、子供たちも働かなくちゃいけないとしても、心のどこかで夢をみていたと思う


大人になるにつれ、夢は憧れになり、嫉妬の対象になる

希望は挑戦に変わり、絶望として降り注ぐ

やっとの思いで見つけた居場所に、他の誰かが座ってる

ひとつの道を極めれば、己の無力を痛感させられ、劣化版として歩みを止める


希望、人の原動力だと僕は思う。

その原動力を失ったのはまだ8つにもなっていない頃だった、もっと早かったような気さえする。

良家に生まれた人間は、人生経験の濃さが他と違う。

皆は自分の、可愛い可愛い子供に、お先真っ暗な国の現状をそのまま伝えることができるか?

断言しよう。無理だと。何故か。常人、一般人だからだ。


これは、決してバカにしている訳では無い。

子を愛する気持ちを持つ親なら、誰だってそうするという意味がある。

もう分かると思うけど、僕の両親、特に母はそれをしなかった。

否、出来なかった。

皇帝陛下直々に命令した。

意味がわからないが、僕が祖国に絶望しているのも事実。


絶望して切る理由、夢や希望がないのだ。

本当に、ないのだ。


この国は、後100年以内には滅ぶ。見てて思った。

子供の僕が気づいているんだ。大人たちが気づいていない訳が無い。

なのに、現状は、これほどまでに変わらない。

とどのつまり、大人たちは未来世代のことなて考えてない。

少しは考えているかもしれないが、どうせ孫くらいまでだろう。

皆はどう思う?

自国の中枢が、自分のことしか考えてない自己愛者だったら

もしかしたら既にそうだよって人もいるかもしれないけど


こんな国のために精力を尽くさなくてはならないと考えると、嘔吐しそうになる

皆はどう?

吐くまで行かなくても、なんで生きてるんだろう、くらいは考えるんじゃないのか?

というか、考えていてくれ。

考えないやつは末期だ。助けたいけど、悔しいけど力不足だ。

地に根を張って自分のために、必死に今を生きている植物に生まれたかった

せめて良家でなかったら、そんな贅沢な悩みを抱えるのは行けないのか?


………ああ…憂鬱だ

なぜ憂鬱か?

理由は簡単、腐った貴族社会で生きるため、僕はあとひと月後には、帝都に向かう


帝都にある”カシミ学園”で民の苦しめ方と、他国の潰し方を学びに行くのさ

縦社会を更に縦に積み上げたような、本当に現実かもよくわかっていない歪みだらけの難破船に、問答無用で乗り込む男の気持ち


これが憂鬱でない人がいるのか

もし違っても別の負の感情だろう

希望だと思えるなら、僕は腹を斬るしかなくなる


学園は7年


僕は7年も暮らすのか

そう思うと、なんだか罪を犯した罪人のような気分になる

ひと月後に刑罰を受けるため、収容所に入れられる気分だ

僕が何したって言うんだ

………この国の、子供たちが何をしたと………


そんな僕でも、この国に精力を注ぎたいと思う理由はある

なかったら、生きる意味を失い、いちばん愚かな選択を取っていたと思う

絶望しかない退屈な毎日に嫌気が差して、そのまま一直線に…

なにか、楽しい、希望になれるような刺激が。

若い僕には欲しい。


僕は、弟、妹、領地のみんなを守りたい

できることなら国のみんなを守りたい

世界中、人族とか魔族とか関係なく、みんなが笑顔と道徳心に溢れた世界を作り、守りたい


まあ、あと二つは欲をかきすきだ。

最初のひとつ


ただ、それだけだ。


それさえあれば、僕は何年だって地獄に身を投じれる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ