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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
対抗戦編
19/70

道無き道を進むため



クラス対抗戦は、8組の優勝で幕を閉じた。

だろうなって感じだけど。

1組のメンバーが勝てるわけないしね。


なるようになっただけ。

唯一想定外なのはタイトの成長。

あんなにキレのある剣士は、世界どこを探しても見つからないのではないのか?


間違いなく、僕の人生史上最強の剣士だ。

重鎮たちも、こぞって欲しがるだろう。


それとミュウ、豪雨の中でのあの火力の火魔術。

皇族並の魔力量。

それに若い。

長く使えるに越したことはないからね。

2人とも、今回の対抗戦で注目度No.1、2コンビだろう。


そんな平和な対抗戦で終わってくれれば良かったんだがね。

どうやら、そんなに甘くないらしい。

はぁ、しかし、僕は自分が怖いな。

もう少し躊躇うと思っていたが。


「ハレファス」

「父様、入ってください。」


ここからは、僕の戦いだ。


***


父、ヴィルスを席に着かせる。


「まずは、急な呼び出しに応じてくれてありがとうございます。」

「御託はいい。」

「そうですか、なら単刀直入に。

父様、何故息子である僕の命を狙ったのですか?」


父様は目を閉じたまま、何も語らない。


「黙秘は僕の命を狙ったことを肯定すると、捉えて良いですか?」


父様はやはり目をつぶり、黙ったまま。

語ることはない、そう言いたいのか。


「はぁ、黙っていても仕方ないですよ。」

「……」


父様の考えていることは分かる。

どうせ自身の息子を手にかけようとしたことを悔いていて、言い訳すらしたくない。


さっさと断罪して欲しいと、そう思っているのだろう。


ないとは思うが、何も考えていないとかはやめて欲しい。

僕の父親像が崩れ去る。


「まずはさすがですね、父様。」


そう言うと少し眉をひそませたが、一瞬のことだった。

唐突に褒められるとは、思っていなかったのだろう。

なんせ、僕が狙われていると気づけたのは本当に運が良かっただけなのだから。


「父様が疑問に思っていることを、今から一つ一つ解き明かしていきますよ」

「……」


「1つ目、何故バレたのか」

「……」


そうかそうか、気になるか。

分かりやすいな。

左拳に力が少し入ったのを、僕は見逃さなかったぞ。


「父様と会った時、きっとこんな疑問を浮かべられたでしょう

¨どうして鎧なんて着ているのか¨と。」


少し顎が引いた。

集中している証拠だ。

身を前に傾け、聴き込もうとしている。


「ナキ……という名前に聞き覚えがあるのでは無いですか?」


ここまで来るとさすがの父も、動揺を隠せないようだ。

大きく目を見開く。

チェックメイト。

今回の勝負は僕の勝ちだ。ナキ。


「その名前をどこで聞いた……」


ちゃんと食いついてきている。

全て話すのもいいが、まだ調べることがある。


「父様と同じですよ」

「……夢に……出てきたのか」


ビンゴ、やっぱりあいつは父様の夢に出てきていたのか。

見えてくる、あいつの行動パターンが。


「夢? 僕は夢なんて見ていませんが……」

「何?」


父様は混乱されている。

当然だが。

意味がわからないよな。

だがそれでいい。


「僕が見たのは領地の辺境の屋敷で会いました。

父様は違うのですか?」

「……違う、私は夢でしか会っていない。

それとハレファス、辺境の屋敷?

そんなものあるなんて聞いたことないぞ」


これもか。

あの女、僕を誘い出したのか。

大方、大規模な結界魔術が構築されており、内部かは通行者を選定できるのだろう。


「そうですか、父様すら聞いた事のない……

この話はまた今度にします。ナキについてですね。

父様は夢の中でナキとあったんですよね?」

「ああ」

「会っただけですか?」

「会話した」

「内容は……」


渋るような顔をしたが、最後には折れたと言わんばかりにため息をつき、一つ一つ語ってくれた。


「ナキが私の夢に現れたのは3日前。

内容は非現実的で、全く鵜呑みにできない様ものだった。」


「ナキ曰く、お前に¨デオキシリボブレイク¨を奪われてしまった。

あれは人を簡単に殺められる大変危険な兵器だと。

お前が大量殺人する前に止めて欲しいと、頼まれたのだ。」


デオキシリボブレイクのことまで話していたのか。

考えられうる最悪の状況だな。


「私も最初は抵抗した。

しかし、お前以外の家族や領地の民、皇帝陛下や皇后陛下を狙っていると聞けば、それが本当か嘘か関係なく、お前は殺さなきゃならないと思った。」

「そして、お前を殺したあと、私も死のう。

そう思っていた。」


バカ親だな。

俺は父様を思いっきりグーで殴った。


「……っ、ハレファス! 何する!」

「馬鹿野郎! 僕を殺して自分も死ぬ!?

ふざけるな! そんなことしてなんになるって言うんだ!

僕を殺すのは分かるさ。きっと同じ状況なら僕も父様を殺すだろう。

でも、自殺なんて絶対しない!

何故か分かるか?

家族が大切だからだよ!

僕が守らなきゃ誰が守るんだって思うから!

父様は思わなかったのか? だったら見損なったね。

自分だけ楽になろうとしている父様なんてかっこ悪い。

最後まで苦しめよ! ダセェことしてんじゃねぇ!」


父様は呆然と僕を眺めている。

息切れだ。

ちょっと疲れた。


「すみません父様。過ぎたことを。」

「いや、私が間違っていたのだと気付かされたよ

ありがとう、ハレファス」

「気にしないでください。誰かが道を踏み外しかけた時、そらを元に戻してあげるのが家族の役目ですから。」


「…………そうか。

よし、話を続けよう。

お前を殺すと決めたときから、私はこれしかないと思った。」

「呪詛ですね。」

「ああ」


呪詛、解毒魔術の原型である呪術の技術の1つ。

遠隔で相手を呪殺する、お手軽な呪術。


「お前と抱き合った時に呪詛を掛けた。

だが、お前は死ななかった。

私はその理由が知りたい」


やはりあれは呪詛によるものだったか。

僕は上着を脱ぎ、鎧を見せる。


「この鎧は僕が普段付け歩いているものです。

この鎧にはある程度の魔術なら弾けるように魔術印を入れています。

それが上手く作動したみたいです。

と言っても、父様の呪詛で粉々にされましたけど。」


父様の呪詛は僕の編んだ魔術印を一撃で粉砕した。

恐ろしい魔術力だ。


「なるほど、呪詛は掛かっていなかったのか」

「そうなりますね」


父様は椅子にどっとかけた。

張りつめていた緊張が、ここで一気に押し寄せたのだろう。


「なるほど、私はもう時期死ぬのか」

「安心してください、呪詛返しするつもりは毛頭ありませんので」


呪詛返し、呪詛をかけているのがバレれば相手に弾き返せるというもの。

力の無いものなり気づいた時点で必ず返してしまうが、呪術を学んでいるものなら、任意で返すか、返さないか選択できる。

もちろん呪いの規模や、本人の資質によるところも大きいが。


「まったく、どこまでも出来た息子だ。」

「父様の子ですから。」


その後、父様と少し話し、仕事があると帰る時間になった。


「それじゃあ、すまなかったな。」

「大丈夫だよ。じゃあね、父様。

本当に楽しい時間だったよ。ありがとう。」

「ああ、私も楽しかった。」


父様が僕の自室を去った。

じゃあね、父様。


***


「ハレファス様! ハレファス様!」

「誰だよ、こんな夜中に……」


おっさん……。知らないな。


「ハレファス様、たった今。ヴィルス様が盗賊に襲われ、惨殺されました。」

「ふざけるな……って、君に当たるのも筋違いだね。

すまない。少し1人にさせてくれ。」

「分かりました。失礼します」





「ふふ、ふふふはははは。

あっはははははは!!!!」


呪詛返しはしない?

訳ないだろ!

デオキシリボブレイクのことを知られた以上、生きて返す訳にはいかない。


誰かに話すかとしれないしね。

仮に話さなかったとしても、知ってることが悪なんだよ。


「どうだナキ! 今回は僕の完全勝利だ!

お前は負けたんだ! 今晩辺りにでも夢に出てこいよ!

いっぱいお話聞いてあげるからさ!」


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