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デオキシリボブレイク~神と天才の殺し合い~  作者: 熊太郎助
対抗戦編
16/70

みんなで勝とう!



よし、テストは多分大丈夫。

あれから心に空いた穴を埋めるように猛勉強した。

そのおかげか筆記テストにはかなり自信がある。


午後からクラス対抗戦もあるし、体調ちゃんと整えないと。


「久しぶりだね、ハレファス」


ハレファス? ハレハァス様、そこにいるの。

というかこの声だれ? 女の子?


「久しぶり、ミュートリナ」


ミュートリナ……爆裂。

爆裂とハレファス様ってどんな関係?

いやいや、何詮索しようとしてるの私。

ハレファス様のことは諦めたのに。


…………でも、気になるし、知ることくらいは、いいよね。


悪いと分かっていながら私は聞き耳を立てることにした。


「ミュウでいいよ」

「そっか。じゃあこれからはミュウって呼ばせてもらうね」


なによ、ニックネームですぐ呼ぶんだ。

私なんて様付け以外呼ばれたことないのに……


「ねぇミュウ、この人誰か知ってんの?」


他の女の子の声。

そこに誰が、何人いるの。

気になる。確認したい。

でも、顔を出す勇気はない。


「ん? ハレファスだけど。

それがどうかしたの?」


どうかした? じゃない!

ミュートリナさん、ちょっと世間知らずすぎじゃない。

それはそこにいた子も同意見のようだ。


「どうかした? じゃない、

彼は五体公爵家長男の、ハレファス・カシミーアス・ワイトラー様だよ! ぶふ。」


ぶふ? なんと言うか、変な子だなぁ。

んー、悪寒が。


「えぇぇぇぇ!! ハレファスってハレファス様だったの!?

え? えっ、?」


ムカつく! なによこの女。

天然キャラのつもり?

ダメよ私、精神落ち着かせなさい。

この後決闘控えてるのよ。


「ちょ、頭が追いつかないんですけど」


4人目!? 何人いるのよ! 本当に。

てか、今の言い方から新しい子もハレファス様のこと知っていたくせに何者か知らなかったの!?

信じられないんだけど……


「ミュウが大変失礼しました!

以後気をつけますのでどうか命だけは……」


何言ってるのよ。

ハレハァス様が誰かを、殺める訳ないでしょ!

本当に失礼な子達ね。


「大丈夫ですよ。

2人が僕になにか危害を加えた訳では無いですし、それ以上に気さくに話しかけてくれたことが何より嬉しかったので」

「……! ありがとうございます!」

「あ、ありがとうございます!」


うん。ちゃんとハレファス様のことを理解できたみたい。


「ミュウたちはこれから決闘だよね。

どこと対戦するんだい?」

「えっと、3組です。

ハレハァス様の暮らすは?」

「今まで通りハレファスでいいよ。

僕のクラスは5組だよ。

お互いが当たるとすれば、決勝だけだね」


そう、私たち1組と8組はお互い勝ち進めれば決勝で当たる。

私は大将で、ミュートリナさんとぶつかることになっている。

まあ、最善を尽くすだけよね。私。


「ですね。

負けませんから!」


ですよね、勝てないですよ。

あんなバケモノと戦わないといけないなんて、憂鬱だな。


「頑張ってね! 応援しているよ。」


「は?」


声が漏れた。

急いで口を塞ぐが、時すでに遅し。

しかし、運良く聞こえなかったようだ。


「自分のクラス応援しなくていいんですか?」


そ、そうですよね。

ハレファス様は私たちを応援するべきですよ!


「それも大事だけど、僕がミュウのファンだからかな。

素直に応援したいんだ。」


「……!」


それを聞いて、胸がチクリと痛む。

どうして


「なるほど。そういう事ですか。

なら、存分に応援してくだされ」


苦しい。聞きたくない。

思わず耳を塞ぐ。

しかしそんなことで完璧に音を遮断出来るわけない。


「うん。応援してるよ。」


なんで、なんでなの!?

ハレファス様、どうして!?


「それじゃあ、私たち行ってきます。」

「あ、後体調が優れなかったり魔力が枯渇してきたなって思ったら僕のところに来てくれ。

力になるからさ。」


駄目。もう聞いてられない。

いつの間にか頬に涙が伝っていた。

私は急いでハレファス様達とは逆の方に駆け出した。


***


「ハレファス」


この声。


「父様。お久しぶりです。」


現在僕は国の重鎮たちに挨拶をしていると我が父、ヴィルスに会った。

本当の再開に2人抱き合う。


「ハレファス、大きくなったな。」

「父様こそ、髭なんか生やして。

前は生やしてなかったのに。」


本当に久しぶりの親子の再開。

話したいことが沢山ある。

しかし父様も仕事中。

公私混同し過ぎないように気をつけよう。



「父様は皆様と同様我がカシミ帝国の人材視察で?」

「そうだな。仕事といえ、我が子に会えるのは嬉しいな。」

「やめてくれよ。恥ずかしいだろう。」

「はは。ハレファスはこの対抗戦には参加するのかい?」

「僕は出ませんね。実力不足ですよ。」

「そうなのか? まあハレファスの得意な治癒魔術や解毒魔術は戦闘向きでないしな。」


僕の得意な魔術の系統なんて知っていたのか。

勉強や魔術の練習を見てもらった記憶はないが。

オカベたちに聞いたのか?


「そんな、僕なんて父様には遠く及びませんよ。

でも、昔より使える魔術も増えてますし、成長した姿を披露できないのが悲しいばかりです。」


見てもらいたものも沢山ある。


「ワイトラー公、ご子息に会えて嬉しいのは分かりますがこの辺で。

後で時間を作りますので。」

「分かりました。それじゃあ私は行くよ、ハレファス。」

「お仕事頑張ってきてください。父様。」


「………」

「父様?」

「すまない、許してくれ。」


そう言い残し、父様は仕事に戻っていった。


***


「くそ!」


1組の1回戦の戦績は4-1。勝ちであることに変わりない。

負けたのは誰か?

俺、ハヴァレアだ。


「お疲れ様!」

「1回戦突破おめでとう!!」


「ッチ」


この行事でテレスシーナ様に良いとこ見せようと思ってたのに。

そのために無理言ってハレファスの野郎から出場権を奪ったのに。


なんてザマだ。

まるで恥をかくために出場してるようなものじゃないか。


「お疲れ様です。ハヴァレア様。」

「テレスシーナ様。すみません!

私さえ負けなければ5-0だったのに。」


ああああ、まずい。

テレスシーナ様だけでなく国の重鎮も見に来ていると言うのに、武家たるゴーシュラフ家が負けるなんて。

許されないぞ。


「大丈夫ですよ。

私たちは1人が負ければ1人が取り返す。

そうやって助け合い、8組を倒しましょう!」


「テレスシーナ様……」


なんてお優しいお方なんだ。

私の失敗をお許ししてくださるなんて。

やはりあなたのことが私は……


「ハヴァレア様」

「は、はい。」

「私のために、勝ってくれますか?」

「も、もちろんです!!」



よし、2回戦。

今度こそ勝つ。

勝ってテレスシーナ様に勝ちを持ち帰る。


俺は副将、前3人は勝ち2人、負け1人で俺が勝てばチームの勝ちが決まる。


絶対勝つ!


「始め!」


まずは強化魔術。


「闘いを極めし武の王よ、強きをくじき、弱きを救う力を私に与えたまえ! マッスルチャージ!!」


いくぞ、今の俺は無敵だ!


敵の詠唱、あれは水魔術。

効かねぇよ!


「我が求めるは小さき力、水の精霊よ

微力のみで構わない!

水を氷に変化させよ!

冷風(アイスウィンド)!!」


へへ、舐めてんのか?

その魔術はちょっと寒くなる程度の攻撃!

そんなんで強化された俺を倒せるか!


「痛っ! 痛い痛い痛い!!」


やつが詠唱を終えると同時に雨が雹に変わり俺に突き刺さる。


「風の精霊よ、空気の歪みを生み出し、大いなる旋風を起こせ、ウィンドスラッシュ!」


強風が俺を襲う。

途端に体温が下がるのを感じる。


ヤバい、体が震える。

歯がカチカチ鳴ってる。

が、徐々に動くことすら厳しくなってくる。

筋肉が………動かない。

血……巡ってるか?


「決闘続行不可、ハヴァレアの負け!!」


わざわざ……負けた方を……紹介すんじゃ……ねぇ……



「……あああ!!!」


「あ、目が覚めましたか。」

「ハレファスてめぇ。あ、決闘はどうなってる!」

「テレスシーナ様が勝ちましたよ。

2組と8組が今やってます。勝った方と勝負ですね。」


俺は…………負けたのか。


「ハヴァレア様」

「テレスシーナ様、申し訳ございません!

役に立つどころか足を引っ張ってしまい……」

「さっきも私は言いましたよね?

1人が負ければ、1人が取り返す。

助け合って8組に勝ちましょう!!」


俺が一方的に悪いのに。

足引っ張るだけでなんにも貢献出来ていないのに。

いるだけで士気を下げる俺に。

こんな、こんな優しい言葉をかけてくれるなんて…………。


俺は、テレスシーナ様のために勝ちたい。

役に立ちたい。

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